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第275話【蠍男爵婦人グレーテ】

俺が百足女郎のアイラに解毒剤を飲ましている最中に森の中から現れた蠍男爵婦人のグレーテは、木の下でぐったりとしている娘のバーバラを見て動揺していた。


グレーテは巨体な体を素早く移動させてバーバラに近付く。


「バーバラちゃん、大丈夫ザマスか!?」


グレーテは両手の鋏でバーバラの両肩を掴むとユサユサと揺らした。


しかしバーバラはぐったりしたまま目を覚まさなかった。


えっ、グレーテって、ザマス系のママさんなの?


「よくも私の娘を殺してくれたザマスね!!!」


背を向けたまま唸るグレーテの肩から黒いオーラが燃え上がっていた。


うわ、怒ってるよ……。


しかも娘が死んだと思ってますがな。


「いや、お母さん……。娘さんは死んでませんよ……」


「嘘をおっしゃい!!」


信じないかー……。


憤怒に燃えるグレーテは振り返ると同時に走り出していた。


この巨大サソリは速いな。


ピンク色で重そうな甲冑を全身に纏っているけど俊敏だぞ。


てか、娘と全然似て無いじゃんか!


もう見てくれは、ただの巨大サソリじゃんかよ!!


人語は話せるけれど全然人型じゃあねえしよ。


まんまサソリじゃん。


だが、そんなことを考えている場合じゃあねえな。


俺は腰からロングソードとショートソードを抜いて天地二極に構えた。


「娘の仇め! 殺してやるザマス!!」


「人の話を聞かねえママさんだな!!」


駆け寄ったグレーテが両手の鋏を伸ばして俺に迫る。


しかし俺は、ロングソードを下から上に振り上げ、ショートソードを上から下に振り下ろして二つの鋏を弾いて止めた。


「やるザマスね!!」


「しゃべってる場合じゃあねえぞ!!」


俺はすぐさま前蹴りを繰り出してグレーテの顔面を蹴り飛ばした。


「はぐっ!」


更に──。


「うらっ!!」


俺はロングソードをグレーテの頭部に振り下ろした。


「なぬっ!?」


だがロングソードの刀身は、グレーテの硬い甲冑を切り裂くことが出来ずに止まってしまう。


「なんでこの森のボス級の昆虫たちは硬いんだよ。強度だけはスゲーな、マジでさ!!」


「私は硬さだけが自慢じゃあないザマスよ!!」


今度はグレーテの反撃だった。


お尻の毒針を伸ばして俺の顔面を狙って来る。


「危ねえ!」


太くて鋭利な毒針が俺の眼前を過ぎた。


その直後に両足首をグレーテの鋏に挟まれる。


「ヤバイ!!」


両足を拘束された。


動かせない。


「串刺しにしてあげるザマスよ」


「ちょ、ちょっと待って……。マジでやめて……」


俺が懇願したが無視される。


グレーテは問答無用で毒針を突き立てて来た。


両足を拘束されているから逃げれない、回避も出来ない。


「死ぬザマス!」


グレーテが毒針で突いて来た。


俺は身を屈めて毒針をやり過ごす。


俺の頭上を毒針が過ぎた。


「か、回避できたわ~……」


「でも、次は無いザマスよ!!」


グレーテがしゃがんでいる俺の体を狙って毒針を振り下ろした。


「マジ、やーーべ!!」


俺は咄嗟にバックラーを装着してある左腕を頭の上に翳した。


直後、ガンっと激しい音が響く。


「えっ?」


防げたかな?


俺が頭上を見上げれば、俺の左腕から何かが突き出ていた。


「何これ……?」


毒針かな?


毒針がバックラーとプレートメイルの左腕を貫いて、貫通しているのかな?


そう俺が自覚した刹那だった。


信じられないほどの激痛が走る。


「いったあああああいいい!!!」


俺の左手からショートソードが落ちた。


「はっはっはっはっ!!」


グレーテが笑いながら俺の足を解放してくれた。


だが、それどころじゃあない。


凄い痛いのだ。


超痛いのだ。


俺の左腕から激痛が走っていた。


その激痛が全身を駆け巡ると、俺は背筋を伸ばして叫んでいたのだ。


「ぐぅぁぁああああ!!!!!


俺はロングソードを放り投げて左腕からバックラーを外した。


更に必死にガントレットも外す。


すると紫色に腫れ上がる左腕が出て来た。


「痛い痛い痛い!!」


その肌色は腐敗した死体のような紫色で、ゴム手袋を膨らませたかのようにパンパンに腫れていた。


あまりに腫れすぎていて貫通した傷口すら塞がって出血が止まっている。


「まずい、まずいぞ!!」


毒に犯されている。


俺は腰のベルトを外すと、それで肩の下辺りを強く縛った。


毒を止めなくては!?


これで止まったかな!?


止まったよね!?


やべ……。


ちょっと目眩がする……。


毒が止まってないか、糞……。


俺がフラフラしながら立っていると、余裕のグレーテが毒針の尻尾をユサユサと振りながら言う。


「時期に全身に毒が回るザマス。幾ら止めたつもりでも時間の問題ザマスよ。苦しみたくなければ、一気に胸を突いて殺して上げましょうか?」


俺は目眩に頭が眩み、両膝をついてしまう。


うぇ……、吐きそう……。


「いや、諦めないぞ……。俺にはまだまだやりたいことが沢山有るんだからよ……」


「私の毒は、そんなに甘くないザマスよ」


あー……、マジで目が回りだしたわ……。


この毒……、効くわ~……。


こりゃあ、駄目かも……。


俺が諦め掛けたその時である。


「お母様、おやめになって!!」


「バーバラ!!」


眩む俺の視界にバーバラのお尻があった。


ビキニアーマーの割れ目からサソリの尻尾が生えている。


へー……、こうなってるんだ……。


でも、バーバラが俺を助けてくれるのかな……?


助けてくれるよね?


そんで、もって、さい……ごは、交尾し……て、くれっ……て……かぁ……懇願……さ……れ……。


きゅーばたん……。


そこで俺の意識は途切れてしまった。


次に目を覚ました時には藁のベッドの上で寝ていたのである。


「ここは……?」


明かりは有る。


見上げている天井は、岩のようだった。


ここは、洞窟かな?



【つづく】

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