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第263話【リザードマン戦争の結末】

俺は膝ま付いているタイタスの延髄からロングソードを引き抜いた。


すると絶命しているタイタスの巨漢が前に倒れてプレートメイルがガシャンと派手な音を鳴らす。


俺は剣を振るって血飛沫を払うとロングソードを腰の鞘に収めた。


うむ、なかなかの強敵だったぜ。


「アスランさま、お怪我は御座いませんか?」


俺の側に歩み寄って来たヒルダに問われたので「大丈夫だ」と答えた。


「それにしましても、この程度の敵に苦戦をいたしましたですね、アスランさま」


えっ、なに!?


何を言い出すかね、こいつは!?


やっぱり腹立つわ!!


すげー棘があるよね!!


俺は怒りを我慢しながら異次元宝物庫を開くとヒルダに言う。


「もうお前たちはいいから、異次元宝物庫に戻っててくれ」


「はい、畏まりました」


俺に返答をしてからヒルダは、口元に指を当てると高々に口笛を吹く。


すると村のあちらこちらからメイドたちが走って来ては異次元宝物庫内に入って行った。


最後にプロ子が異次元宝物庫の入り口手前で転んでいたが、彼女が起き上がり中に入ると一礼してヒルダも異次元宝物庫内に消えて行った。


「ふう~~」


俺はヒルダの厳しい目線から解放されると溜め息を吐いた。


あいつの冷めた眼光はプレッシャーが強いわ。


なんか非常にやりづらい……。


さて、レッドリザードマンの荷物からマジックアイテムと金目の物を漁って帰ろうかな~。


荷物を漁るのぐらいメイドたちにやってもらえば良かったのかな?


アイテム鑑定だけ自分でやってさ……。


否。


ここであいつらメイドに頼っているようだと、今後も頼ってしまうぞ。


今後はあいつらに出来るだけ頼らないって決めたんだ。


もう、あいつらはスカル姉さんのところに置いてこようと決めたのだから、頼ってなんていられないぞ。


冒険のことだけは、自分一人でやるんだ。


何せ俺はソロ冒険者なのだから。


ソロの俺が、他人に頼りきった冒険を繰り広げてどうするんだってことよ。


まあ、それが今回の反省点だな。


結局、村の中に散らばっていたレッドリザードマンの荷物を漁り終わるのに、朝まで時間が掛かってしまう。


何せ四十匹分の荷物だからな。


しゃ~ないか。


そして俺がリザードマンの村を出たのは早朝で、リザードマンたちが待っている場所に到着したのは昼前である。


「よ~、カンタタ。ただいま~」


「アスランさま!!」


俺が気軽に帰って来ると、カンタタをはじめとするリザードマン族の村人たちが驚いていた。


何せ俺はタイタスの首を持っていたからだ。


俺はタイタスの首をカンタタに差し出しながら言ってやった。


「村を占拠していたレッドリザードマン族は壊滅させた。こいつがそのボスだ」


「あのレッドリザードマン族を……」


「これでお前らも村に帰れるぞ」


「す、凄いだべさ……。本当にお一人でレッドリザードマン族を壊滅させたのですか……?」


「あ、ああ、俺一人で壊滅させたよ」


俺はカンタタから視線を逸らして答えた。


いや、一人じゃあなかったけれどね……。


まあ、それは他言である。


「では、村に戻りまして祝杯の宴を開きましょうぞ!」


「宴?」


「はい、そうです。アスランさまを客人として迎えまして祝杯だべさ!」


あー、面倒臭いな~。


どうせ俺は酒が飲めないから宴会とかは結構なんだよな。


正直なところ遠慮したい。


よし、断るか~。


「済まんな、カンタタ。俺は旅を急ぐんで、これで失礼したいんだ。何せ、今回の遅れを取り戻さないとならんからな」


嘘である。


遅れを取り戻す必要なんて無い。


「しかし、アスランさまが主役の宴たべさ!!」


「それに村の中にはレッドリザードマンの死体がわんさか放置されているから、まずはそれを埋葬してやらねばならんだろ」


「あー、そうですね……。相手は野党でも、亡骸ぐらいはちゃんと葬ってやらないとならんだべさ……」


「そんなわけで俺は宴に参加できない。お前は今後毎年この日に解放記念日として祭りを開けばいいじゃあないか」


「おお、解放記念日祭りっていいだべさね!!」


名案だと周りのリザードマンたちからも歓声が上がる。


記念日が出来て嬉しいのだろう。


いや、祭りが出来ることが嬉しいのかな?


まあ、どちらでもいいか。


「だろ~。だから俺は行くぜ!」


無理矢理にも話を纏めた俺がアキレスを召喚して股がると、カンタタが指輪を差し出しながら言う。


「アスランさま、最後にこれを」


「なんだ、それは?」


「感謝の気持ちだべさ。我がリザードマン族に伝わる家宝の指輪で御座います。どうかお受け取りくださいませ」


くすんだ銅製の汚い指輪だった。


とても一族の家宝には見えない。


てか、宝に見えないが、魔法鑑定スキルで見てみればマジックアイテムだった。


「んー、くれるって言うなら貰おうかな」


まあ、感謝の気持ちをこれ以上は粗末にできんだろ。


何せマジックアイテムだもんね。


そりゃあ頂くわ!


俺はカンタタから指輪を受け取るとアキレスを走らせ枯れ木の森から出て街道に戻る。


そして、ターナーの村に向かってひたすらにアキレスを走らせた。


その晩までにはターナーの村に到着する。


すると宿屋の手前に見覚えのある荷馬車が停まっていた。


あー、あの商人三人組の荷馬車だな。


俺が宿屋に入ると中年男性と若い二人が驚きながら声を掛けてきた。


「おお、あんた生きてたか!?」


「まーねー、いろいろあったけど、リザードマンたちの事件は片付いたぜ」


「もしかして、リザードマンをやっつけたのか?」


「リザードマン族は壊滅させたが、別のリザードマン族だ」


「はあ?」


商人たちが首を傾げる。


「まあ、いろいろ複雑な話なんで、晩飯でも食べながら話すよ。何せこっちは腹が減ってるんだ。ずっと糞不味い保存食しか食べてないからな」


俺は飯を食べながら三人にリザードマンたちのことを楽しく愉快に話した。


三人は酒を飲みながら俺の話を笑いながら聞いている。


俺の話が良い酒の摘まみになっているようだった。


それが何よりである。



【つづく】

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