第199話【伝説の連携技】
俺は杉の木に隠れながら様子を窺っていた。
隣の杉の木にはマジックトーチで輝くショートソードが突き刺さっている。
俺はその光から身を隠すように潜んでいた。
まだコカトリスの姿は確認できてないが、近くに居るはずだ。
ショートソードの光に釣られてこちらにやって来るだろう。
俺は異次元宝物庫からシルバーシールドを出して左腕に装着した。
今一度自分の装備を確認する。
手にしている武器はロングソード+2だ。
【ロングソード+2。攻撃力小向上。攻撃速度向上】
左手にはシルバーシールド+2である。
【シルバーウルフシールド+2。シルバーウルフ三体を一日一回召喚できる。防御率の向上】
兎に角である。
相手は突っついただけで石化させてしまう鶏野郎だ。
なので今回は防御を固めていきたい。
だから盾を使うのだ。
ちなみに着込んでいる防具はこちらですわん。
【レザーアーマー+2。強度向上。耐冷気向上】
【プレートメイルの左腕+3。耐火向上。魔法耐久向上。体術向上】
【ウィザードローブ+3。耐火向上。耐冷気向上。魔法耐久向上】
【ディフェンスガントレット+2。防御率の向上。防御率の向上】
【プレートブーツ+2。走る速さが向上。防御率の向上】
【メイジネックレス+2。魔法耐久向上。魔法の抵抗率向上】
【パワーブレスレット+1。所有者の腕力向上】
【ディフェンスリング+1。防御率の向上】
【レジストリング+1。魔法の抵抗率向上】
【ファイヤーボールリング+2。ファイヤーボールが一回使える。ファイヤーボールが一回使える】
今回は黄金剣は封印かな。
ヤバそうなら使うけれどね。
さて、コカトリスの野郎はどこから来ますかな。
俺が木の陰から除き見ると、数メートル先に大きな影が揺れていた。
敵は一匹だけかな?
あの大きさならコカトリスだろう。
こちらに少しずつ迫ってやがる。
ショートソードの明かりに釣られているな。
そして俺が木の陰で待ち構えているとコカトリスが近寄って来た。
隣の木に刺さったショートソードをマジマジと見回している。
相当気になるらしい。
俺はコカトリスの背後の木に隠れて居る。
よし、もう間合いだ。
相手は完全に隙だらけである。
これなら間違いなく不意打ちは成功するだろう。
俺は自信を込めて斬りかかった。
「そおぅらっ!!」
コカトリスに対して斜め後ろからの袈裟斬りがヒットする。
『コケェッ!!!』
会心の一撃であった。
コカトリスの首がボトリと地面に落ちると体がバタリと倒れた。
まずは一匹だ!
しかし、右を見たら離れた場所に、三匹のコカトリスが立っていた。
「あちゃ~、見つかったか~……」
『コケェーーー!!!』
三匹が一斉に走り出した。
俺に向かって突進して来る。
どうやら仲間を殺されて怒っちゃったかな?
俺は盾を前に翳して守りの構えを築く。
「さあ、こいや!!」
すると三匹のコカトリスが一列に並んで、そのまま走って来るのだ。
後ろの二匹が前のコカトリスに隠れて見えない。
こ、これって……。
「伝説のジェットスクリームアタックですか!?」
『コケェーーー!!!』
「マジかよ!!」
俺が先頭のコカトリスに斬りかかると、一匹目が瞬時に右に躱す。
すると、その陰から二匹目のコカトリスが嘴で突いて来た。
俺がシールドで嘴を防ぐとカンっと金属音が林に響く。
だが、コカトリスたちの連携攻撃は止まらなかった。
更に三匹目のコカトリスが二匹目の頭を飛び越えて空中から降って来る。
「ヤバ!!」
俺は左に飛んで躱すと藪の中をバリバリと音を鳴らして転がった。
「いちち……」
草木の小枝が体のあちらこちらを引っ掻いた。
俺がそんな痛みを耐えながら立ち上がると、三匹のコカトリスは背を向けて走って行った。
そしてまた一列に並ぶとUターンして来る。
「糞、舐めやがって!!」
『コケェーーー!!!』
二度も同じ手が通じるかよ!!
俺は魔法を放つ。
「ライトニングボルト!!」
『ゴゲッ!!!!』
一匹目のコカトリスが俺の魔法で動きを緩めた。
モロに感電してやがるが死んではいない。
「次は!!」
おそらく二匹目が一匹目の背を飛び越えて来るだろう。
俺は先を読んで飛んでいた。
一匹目を踏み台にジャンプする。
「そらっ!」
『コケコケコゲェ!!(俺を踏み台にしやがった!!)』
ビンゴだ。
やはり二匹目が一匹目の頭を越えて来た。
俺と二匹目のコカトリスが空中戦を競い合う。
だが、俺のほうが僅かに速い。
激突!!
「遅いぞ!!」
俺はコカトリスの首元にロングソードをズブリと突き刺した。
『ゴッゲっ!!』
俺と二匹目は、そのまま三匹目の頭を越えて地面に着地する。
俺は二匹目の上にのし掛かりながらロングソードに体重を乗せた。
ズブズブと刀身が突き刺さるとコカトリスの首を貫通して地面に届く。
俺が絶命したコカトリスに股がりながら振り返ると、残った二匹のコカトリスが並んでUターンして来るところだった。
俺は走って来るコカトリスたちに魔法を撃ち込む。
「ファイアーボール! ファイアーボール!!」
火球の二連発だ。
爆炎がドンドンと激音を鳴らして爆破する。
しかし、これでは死んでないだろう。
「やっぱりな~」
焦げたコカトリスたちが煙りの中から姿を表した。
まだ戦えそうだな。
「いでよ、シルバーウルフ!!」
俺が叫ぶと盾の表面から三匹の狼たちが次々と飛び出して来る。
そして三匹の狼が焦げた臭いを放つコカトリスに飛び掛かった。
前方のコカトリスに集中攻撃をする三匹の狼たちが唸って噛み付く。
「ガルルルルルル!!!」
狼たちがコカトリスの羽に噛み付き動きを封じる中で、俺がロングソードを振りかざして斬り掛かった。
「斬っ!!」
ロングソードが逆水平に煌めくと、コカトリスの首が宙を舞う。
切断されたコカトリスの首が転がり藪を揺らすと、三匹目は背を向けて逃げだしていた。
「逃がさん!」
俺は異次元宝物庫からシルバークラウン+2を取り出して頭に被った。
「初登場の試し撃ちだぜ!」
魔法の王冠がキラリと輝く。
「食らえ、マジックイレイザー!!」
魔法を唱えた俺の口から光の砲撃が放たれた。
光の波動砲光線が逃げるコカトリスの全身を包んで焦がす。
林の奥まで光が走り辺りを照らし出していた。
光線が止むと、林には木々が燃えて一本道が出来ている。
「どうだ、決まったかな?」
丸焦げのコカトリスは動かない。
【おめでとうございます。レベル23に成りました!】
よし、勝利だ!!
レベルアップもしたぞ。
最後のコカトリスは丸焼けのチキン見たいになっていた。
すべての羽が燃えて無くなっているのだ。
林の中に、なんだか旨そうな匂いが漂っている。
「よし、今回は楽勝だったぜ」
俺はシルバークラウンとシルバーシールドを異次元宝物庫に仕舞うと、代わりに塩の入った壺を取り出した。
「今晩の夕飯は、この丸焼けのコカトリスにしようかな。味付けは塩だけで十分だろう」
俺は丸焼けになったコカトリスを剣でバラした。
しかし中はまだ生だったので、火を入れ直して狼たちと食べる。
「うん、味は鶏と変わらないな。ウマウマだぜ」
「ガウガウ~」
俺と三匹の狼たちでは、四匹分のコカトリスを食べきれなかったので、全部細かくバラして異次元宝物庫に保存した。
スカル姉さんたちに、お土産として持って帰ろうかな。
うん、今回は大量の収穫だったぜ。
石化した冒険者から頂いた装備品も有るし、大量の鶏肉もゲットできた。
そうだ、石化した冒険者の服をオアイドスにあげようかな。
あいつ、ずっと全裸のままだったしな。
よし、今日はここで寝るか。
林の中だけど、狼たちも居るから寂しくないもんね。
「がるる~」
ああ、よしよし、可愛いヤツらだな~。撫で撫で~。
明日に成ったら狼たちに臭いを辿らせて山を出よう。
これで遭難しないで済むぞ。
【つづく】