表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

178/602

第178話【魔王城への旅立ち】

その晩の話である。


俺はバイマン&ゴリとの三人で狭苦しいテントで寝ることにした。


右から俺、バイマン、ゴリの順で並んでいる。


そもそも一人か二人用のテントなのだ。3人では狭くて当然である。


「おい、カイマン。もうちょっと詰めてくんないか?」


「バイマンです。それにゴリさんが大き過ぎて狭いんですよ」


「俺がデカイのは生まれつきだ。仕方ないだろ。それより毛布を引っ張るなよ」


「毛布だって一枚しかないんだ、仕方ないだろ。明日になったらテントと毛布を、人数分だけ新しく買ってくるから、今晩だけ我慢しやがれ」


「ああ、分かったよ」


「ちょっとゴリさん、お尻を撫でないでくださいな!」


「俺は撫でてないぞ!」


「すまん、撫でたの俺だわ」


「「なんで!!」」


「もー、五月蝿いな。文句あるヤツは、スカル姉さんのテントで寝ろよな」


「「ありませーん」」


隣のテントから「なんで!!」と声が聞こえたが、男三人は綺麗に無視した。


「てか、カイマンって家が在るだろ?」


「バイマンです。それに、あの家は風通しが良すぎて寒いんですよ」


「そのぐらい我慢せいや」


「何より、寂しくて……」


「「なるほどね……」」


「じゃあ、寝るぞ」


「「はーーい!」」


俺たち三人は、仲良く添い寝した。


そして朝が来る。


俺は旅の準備を終えるとスカル姉さんに50000Gを預けた。


「とりあえずの建築代と、しばらくの生活費に使ってくれ。それと二人の面倒を見てやってくれないか」


「ああ、分かった。建築代には全然たらんが、このお金は大切に使わせて貰う。間違っても博打で倍に増やしてやるぜ、ひゃっはー。な~んて考えないから安心してくれ」


「マジで、それはやめてくれないか……」


「冗談だ。マジでやるわけないだろ。私を信用しろ」


「とりあえず、旅の期間は一ヶ月から二ヶ月ぐらいだと思う。でも転送絨毯を使ってちょくちょく帰って来るからさ」


「ああ、転送絨毯はそのまま広げて置くから心配するな」


そして、ゴリとバイマンが訊いて来る。


「お前が魔王城まで旅をしている間、俺たちは何をしてたらいいんだ。なんなら戦士として俺も付いて行こうか?」


「いや、パーティーは要らないわ。ソロのほうが俺としては動きやすいからな」


「お前は強いな……」


「まあ、お前たち二人の出番は、俺が魔王城に到着してからだから、それまで他人に迷惑が掛からないように生きてろや」


「分かったぜ。俺も人足の仕事が貰える日は、ちゃんと働くからよ。心配すんな」


「おう」


俺はゴリの分厚い胸を拳で叩いてからバイマンに言う。


「カイマン。お前は火を付けるなよ!」


「そ、それは我慢します……。それとバイマンです」


我慢かよ……。


まあ、いいか。


「じゃあ、行ってくるぜ!」


「「「いってらっしゃあ~い」」」


俺は三人と狼三匹に見送られながら空き地を出た。


ソドムタウンを離れる前に、ギルガメッシュにも話さなければならないだろう。


そんなわけで俺は、冒険者ギルドに向かった。


俺が冒険者ギルドに到着すると、一階の酒場でクラウドが酒を煽っていた。


今日は一人である。


朝から酒とは優雅なヤツだな。


俺はアマデウスが居ないからクラウドに歩み寄り、フレンドリーに話しかけた。


「よう、クラウド。朝から酒とは呑気だな」


クラウドはボケーとした眼で俺を見上げた。


「やあ、アスランか……」


「なんだ、元気が無いな?」


「今、朝稽古から帰ってきたところなんだ……」


「疲れてるのか?」


「ちょっとな……」


俺はクラウドの向かえに座った。


「アマデウスのところは辛いのか?」


「あ、ああ、ちょっとな」


「お前もゴリみたいにクビになるなよ」


「知ってたのか……」


「本人から聞いたぜ」


「そうか……。実は俺もヤバイかも……」


「なんでだよ?」


「アマデウスさんは、完璧を求めすぎるんだ。だから厳しい。自分の配下として、使えなければ放り投げるんだ……」


「あー、完璧主義者ってやつだな」


「でも、その分だけ、仲間なら稼ぎも半端ないんだよ……」


「お前は稼ぎの量で、冒険を続けているのか?」


「…………」


クラウドは俯いて答えない。黙ってしまう。


暗いな、まったくよ。


「まあ、いいけどさ」


俺は椅子から立ち上がると踵を返した。


背中を向けながら手を振るう。


「じゃあ、俺は急ぎの仕事が有るから、またな~」


そう言うと俺は二階に上がった。


受付に居る六つ子のお兄さんにギルマスとの面会を求めると、すんなり奥に通して貰えた。


ギルマスの部屋に入るとソファーセットでギルガメッシュが朝食を食べていた。


隣にはコックの衣装を纏ったパンダが立っている。


もしかして、この料理はパンダゴーレムが作ったのかな?


「よう、アスラン。おはよう」


「ああ、おはよう」


俺はギルガメッシュの向かえに座った。


「なあ、ギルガメッシュさん。この料理はパンダが作ったのか?」


「まさか~。そもそもゴーレムは、何かを運んだりぐらいは出きるが、料理なんて作れるわけがなかろう」


「じゃあなんでコックの格好をしてるんだ?」


「気分の問題だ」


「そうですかー……」


「やっぱりメイド服のほうが良かったかな?」


「うん、どちらかと言ったらメイド服かな~」


「じゃあ次はメイド服を買っておくか」


まあ、いいや。


このおっさんが、納得できるなら問題無いだろう。


「それで、朝から何の用事だ。仕事の注文か?」


「いや、さっそく魔王城に旅立とうと思う」


「決断が早いな」


「スカル姉さんも了解してくれたからな」


「なるほど」


「そこでギルマスに頼みたいことがあるんだ」


「魔王城の権利を得たいと?」


「ああ、そうだ」


流石はギルマスだ。


話が早くていいやね。


「魔王城となると、こっちも骨が折れるぞ。政治的にも関係するやも知れないからな」


「だから、ギルマスに頼んでんだよ」


「まあ、金が掛かるぞ。人だって動かさなければならないからな」


「幾らかかる?」


「前金で30000Gだ。あとはかかっただけ経費を請求して、残りは30000Gってところかな」


かなり金が掛かるな。


でも、仕方無いか。


「すまん。今20000Gしか持ち合わせが無い。残りは後払いにしてもらえないか?」


「前金20000Gで、後払いが40000G。その他経費代だな?」


「それで頼む」


「ああ、良かろう」


「ありがとう、助かります!」


「あと、それとだ。冒険者ギルドへの貢献も忘れるなよ」


「分かってるってばさ!」


俺はソファーから立ち上がると、ギルマスの部屋をあとにした。


残りのお金は、旅の道中で冒険をしながら稼ぐしか無いだろう。


ハクスラスキルが有れば、マジックアイテムがガンガンと手に入る。


それを捌けば、お金なんて直ぐに作れるだろうさ。


最悪でも、黄金剣を売れば……。


それは、本当に最悪の事態だな……。


まあ、ネガティブよりポジティブだ。


兎に角、前向きに進もうじゃあないか。


基本は楽しく明るくだぜ!


こうして俺の魔王城への旅が始まったのである。



【魔王城編スタート】


【つづく】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ