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第142話【木刀の対決】

パーカーさんがアンナに言う。


「お前、そろそろ帰ろよな……」


「いやよ、私はスパイダーさんと一緒に、今日と言う一日を過ごすのよ!」


「んっんんんんッ!!!」


パーカーさんとアンナ、それにスパイダーさんが厨房で揉めていた。


あれから一時間ぐらい過ぎているが、未だにスパイダーさんは椅子に縛られながら口は猿轡されているし、パーカーさんは全裸のままだ。


なんだかアンナは縛られているスパイダーにベタベタしながらパーカーさんと言い争っている。


「ここは女禁制の職場だぞ、デブは帰れよ!」


「嘘を言わないでよ、そんな話は聞いたことが無いわよ!」


「今日から女禁なんだよ。あとデブも禁止だ!」


「デブは関係ないでしょう!?」


「いいよ、もうスパイダーを連れてっていいからさ、帰れよ!」


「スパイダーさんはまだ勤務中なんだから帰れないの。だから今日は休みの私がスパイダーさんに付き合うのよ!」


「休みのヤツは家に帰れよ! こっちは仕事中なんだからよ!!」


全裸のパーカーとモッチリなアンナが口喧嘩を続けているとピーターさんが食器を荒いながら呟く。


「パーカーさんも今日は休みなのにね」


あー、そうなんだ。


この人は家に帰りたく無い派なのね。


俺はピーナッツに塩を振っただけの摘まみを食べながら皆の様子を眺めていた。


面白いな~、っと考えながらだ。


すると廊下からドタドタと地鳴りが響くとポラリスが怒鳴り込んで来た。


「ちょっとアスランさまはいらっしゃいますか!?」


俺はピーナッツの皿を持ってテーブルの下に隠れる。


しかし、アッサリと裏切るピーターさんが答えた。


「アスランくんならテーブルの下でピーナッツを食べてるよ」


「ここにいらっしゃいますのね!」


するとポラリスがテーブルの下に潜り込んで来る。


ポラリスは俺と一緒にテーブルの下に立て籠った。


「な、なんだよ……」


「ちょっとわたくしにもピーナッツをくださいませ」


「は、はい……」


ポラリスはスケールメイルを着込んでいる。


早朝の謁見室のように鮮やかなドレスではなかった。


俺たち二人はテーブルの下でピーナッツをポリポリと摘まんで食べた。


しばらくしてから俺が問う。


「何か用かよ?」


「あ、そうだったわ。貴方に勝負を申し込みたいのじゃ」


「なんでだよ?」


「私が勝ったら結婚してもらうからよ」


「お前は馬鹿か?」


「お父様にも同じことを言われましたわ」


「そりゃあ言われるわな……」


「もっとピーナッツは無いの?」


「ピーターさん、ピーナッツのおかわりをくださいな」


俺がテーブルの下から腕を出しておかわりを求めると、ピーターさんが無言で皿にピーナッツを入れてくれた。


俺は皿をテーブルの下に引っ込めるとポラリスに言う。


「大体俺になんの得が有るんだよ、お前と勝負してよ?」


「わたくしが貴方に勝ったら結婚して貰いますわ!」


「じゃあ、俺が勝ったら?」


「仕方ないのでわたくしが貴方と結婚してあげますわ!」


「どっちに転んでも結婚じゃあねえかよ!?」


「あら、そうね。ってことは、これは運命なのかしら?」


「お・ま・え・は・ば・か・かっ!」


俺は七回ほどポラリスの壊れた頭を指で突っついてやった。


「いいから勝負しなさい!」


「俺が勝ったら諦めるならいいぞ~」


「分かったわ!」


ムシャムシャ……。


俺とポラリスはピーナッツを食べ終わってからテーブルの下から出て裏庭に移動した。


俺たち二人に連なって他のメンバーも観戦に出て来る。


しかし未だにパーカーさんは全裸だし、スパイダーさんは椅子に縛られたまま猿轡も外されていない。


今度はアンナがピーナッツを食べていやがる。


だから太るんだよ。


俺は鼻をホジリながらポラリスに問う。


「でぇ~、ルールは?」


「木刀での一本勝負よ!」


「木刀でも人は殺せるから早めにギブアップしろよな~」


「分かったわ!」


そう元気に返事をしたポラリスが手を叩くと、何処からともなくメイドが二本の木刀を持って来る。


一本は長く、一本は短い。


「俺は小刀でいいぞ。お前は大刀を使えよ」


「有り難う」


俺は短い木刀をメイドから受け取ると、軽く何度か振るった。


まあ、ポラリスぐらいなら小刀で十分だろう。


いざとなったら魔法でも何でも使って勝ってやるぞ。


だって魔法は禁止されていないもんね~だ。


卑怯とでも何とでも言いやがれってんだ。


くっくっくっ~。


俺が心中で嘲笑っていると、長い木刀を持ったメイドが走り去って行く。


あれ、なんでポラリスに木刀を渡さないんだ?


俺が疑問に思っていると、2メートルの丸太を四人のメイドたちがワッセワッセと運んで来た。


その丸太をポラリスに手渡す。


「えっ……?」


ポラリスは受け取った丸太を軽々と片手で振るう。


「よし、なかなかのサイズじゃの!」


「あのぉ~、ポラリスの武器は、それなの?」


「ええ、木刀で勝負だからのぉ」


「おいおいおい、それはもう木刀ちゃいますがな、丸太ですがな!!」


「えっ、それが?」


小首を傾げながら可愛らしく惚けるポラリスがムカついた。


しかし、短い木刀対丸太の勝負だ。


間合いも破壊力も天地の差だろう。


有り得ないわ。


「マジで、それでやるの。俺を殺す気か!?」


「大丈夫じゃぞ。死なない程度に手加減は出来るかも知れないからのぉ!」


「元気に不透明なことを抜かすなよ!!」


「なに、怖じけづいたのかえ?」


「い、いや~……」


「なんならわたくしの不戦勝でも構わぬぞぉ」


「抜かせよ、この馬鹿プリンセスが!」


こうなったら剣技で戦ってなんてやらんぞ。


今日は冒険に出ないと決めているんだ。


奮発しまくりで魔法を乱射してやるぞ。


それで難なく決着だぜ。


「分かったよ。じゃあピーターさん、開始の合図を頼むわ」


「ああ、分かったよ、アスランくん」


俺とポラリスが向かい合う。


まだポラリスの丸太が届かない距離だ。


あの丸太が届くには五歩か六歩は進まなければならない。


それだけの時間が有れば魔法で決着がつけられるはずだ。


ピーターさんがゆっくりと手を上げた。


あれを振り下ろせば始まりだ。


「始め!!」


ピーターさんが腕を振り下ろした。


俺は即座に魔法を放つ。


「マジックアロー!!」


「クスッ」


えっ!?


ポラリスが笑うと魔法の矢が大きく外れた。


狙いを外すだと!?


レジストされたのか!?


いや、違うな!?


マジックアイテムか!?


魔法の効果で魔法攻撃を無効かされたのか!?


微笑みながらポラリスが述べた。


「わたくしは税金泥棒ですの。これも財力の力ですわ」


「マジックアイテムかぁ……」


「ご・め・い・と・うッ!」


丸太の横振り攻撃が飛んで来た。


俺はしゃがんで躱す。


俺の頭上を猛スピードで丸太が過ぎた。


こーえーー!!


「ふぅ!!」


直ぐ様にポラリスが丸太を切り返した。


俺は戻って来た丸太を今度はジャンプで躱す。


しかし、三度目の素早い切り返し。


三往復目の丸太は、まだ俺がジャンプから着地する前に戻って来た。


俺は着地と同時に丸太を頭に食らってしまう。


「げふっ!!!」


凄まじい衝撃に俺の体がグルリと回った。


俺は着地したばかりの大地に頭から激突してしまう。


丸太で強打された直後の衝撃に、俺の意識が振っとんで行く。


「やったー!!」


動かなくなった俺を見てポラリスがガッツポーズを取ってはしゃいでいやがった。


この野郎が!!


俺を気絶まで追い込んで何を喜んでいやがる!!


俺は意識を失ってるんだぞ!!


えっ……?


なんで気を失っている俺が気を失っている俺を見ているんだ?


どういうこと?


なにこれ?



【つづく】

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