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第14話【夕食】

明るく可愛く微笑みながら、彼女が地下室への階段を下りて来た。


それはまるで天使が天界の階段から下りて来たかのように美しかった。


しかし、その真実は──。


安物の衣類にスカートを靡かせ──。


灰色のエプロンには、テーブルと同じ赤茶色の染みを派手に付け──。


そして、細くてしなやかな片手には、殺伐とした鉈のような包丁を持っていた。


こえーーーよ!!


めっちゃ、こえーーーーーよ!!


何よりも、動けない、逃げれない、叫びも出来ない。


この状況が、めちゃくちゃ、こえーーーーーーーよ!!!


「さて、私も晩御飯の準備をしましょうかね♡」


怖いこと言った!


今さ、この子、笑顔でサラリと怖いこと言ったよ!


しかも、語尾にハートマークを付けていやがるぞ!


この子も糞女神と同じDQNだよ、絶対!!


とりあえず騒ごう!


無駄なのは分かってるけど騒ごう!


てか、騒ぎたいわ!!


我慢できんわ!!


「んー! んんー!! んんんーー!!」


「うるさいわよ、あなた♡」


こっち来たーー!!


笑顔で近寄ってくーるーー!!


「あなた、あんまり五月蝿いと、痛くするわよ。死んでも痛いぐらいに、残酷に痛め付けるわよ──」


とか、脅しながら包丁で俺の頬をペシペシと叩いています!


しかも、笑顔でさーー!


こえーー!!


チビリそうです!!


ヤンデレを越えてますよ!


完全にサイコパスだよ、こいつ!


だとするとサイコデレですか!?


もうちょっと訳してサイデレですか!?


新ジャンルのヒロインかよ!!


「静かにしてないと、耳と鼻を削ぎますわよ♡」


はい、黙ります……。


とりあえず黙ります……。


信用できないけど、信用して黙ります。


だから痛くしないでね!


そんな具体的に説明しないでね!


「さてさて、食事の準備をしましょうかしら♡」


彼女は踵を返して棚のほうに向かって行く。


そして、木箱の一つから何か黒い物を取り出した。


大きさは頭ぐらいかな。


さらさらの毛が生えている。


それと何か角のような物が二本生えていた。


「ふぅふぅふぅふ~ん♡」


鼻歌混じりで振り返る彼女は、両手で黒山羊の頭を抱えていた。


よかった~……。


人の頭じゃあなくて……。


良かった~。


この物語は、残酷描写、暴力描写、性描写の項目にチェックが入ってないもんね。


だからそんな残酷暴力性なことはおきませんよね!


じゃあ、何するの、この子!?


その黒山羊の頭を何するの?


それがもしかしたら食事の材料なのか?


食べるのか?


「よいしょっと──」


被ったーー!!


黒山羊の頭を被ったーーー!!!


頭に頭をかぶっちゃったよーーーー!!


「さてさて、儀式を始めますか♡」


うーそーー!!


怖い台詞の後にハートマーク付けるのを、兎に角やめてーー!!


「じっとしててね。動かなければ、痛くないから♡」


こっち歩いて来るーー!!


黒山羊仮面ガールがこっち来るーー!!


包丁を翳してこっち来るよーーー!!!


その時であった。


どんどんどん、っと誰かが上の階の扉をけたたましく叩きだした。


ブラックシープマスクは俺の首筋に包丁を当てて凄む。


「騒いだら、殺さない代わりに手足を四本とも切断するわよ!」


今度は生き地獄の警告ですか!?


怖い脅しかたばかりするなよ、かわいこちゃんが!


彼女は黒山羊の仮面を外すと上に向かって大きな声で言う。


「どうかしましたか?」


「早く逃げるんだ! コボルトの大群が襲って来たんだ! ぐぁぁあああ!!」


悲鳴の後に、家の中に何人かが雪崩れ込んでくる慌ただしい足音が続いた。


報告してくれた人を殺して、コボルトたちが家の中に入って来たのかも知れない。


「ちっ……」


彼女が舌打ちを溢す。


その表情は、可愛くも何ともない悪党その物だった。


彼女は気配を殺しながら俺の耳元で囁く。


「騒いだら、殺すわよ。もしも気付かれたらあんたも殺されるんだからね」


俺は黙ったまま数回連続で頷いた。


しばらくすると、足音は家を出て行くが、外の悲鳴などが微かに地下室まで届いていた。


「ちっ、この村も潮時かしらね──」


犯罪者丸出しの台詞を語る彼女と目が合った。


「私は逃げるけど、最低限の荷物を纏めたいの。その間、騒がずに静かにしていてくれるなら、殺さないで上げるわ。儀式の生け贄に捧げないなら、無駄に殺す必要もないしね。私は食べ物を粗末にしない主義なの」


その心がけは素晴らしいです。


でも、生け贄に捧げた後に食べるのは良くないと思います……。


兎に角、俺は必死に頷いた。


「交渉成立だね♡」


可愛く言っても、もう怖いだけだわ!!


もう引きまくりですよ!


すると彼女は上の階に上がって行った。


え?


このまま放置ですか?


うっそ~~~~ん!


マジでぇ~~~~!


と、思ってたらバックパックを背負った彼女が下りて来た。


ちょっぴり安堵する。


テーブルの前まで来ると、目を閉じながら手を伸ばす。


「インプ召喚!」


するとテーブルの上に、モワッと煙が上がった。


煙の中からは小さな悪魔が現れる。


俺は召喚魔法も有ることを知った。


てか、こいつ魔法使いなのかよ!?


いいや、魔女だわ!


魔女っ子だわ!


「いい、小悪魔ちゃん、百数えたら、その人の拘束を解いて上げてね♡」


「ラジャー、ブラジャー、OK、ご主人様。だから報酬にパンティーをくれ!」


「マジックプレス!」


グチャっとインプが潰れた。


テーブルの上に肉片と鮮血が飛び散った。


だから残酷描写とか暴力描写は無しでしょう!


モザイクを掛けておいてくださいね!


「インプ召喚!」


やり直すのかよ!


そして二匹目のインプが煙の中から出て来る。


召喚されたばかりのインプは自分の周りの血黙りを確認すると弱気な態度を見せた。


「いい、小悪魔ちゃん。三回目は無いからね。百数えたら、その人の拘束を解いて上げてね♡」


インプは何度も頷いていた。


てか、一度目から無かったじゃんか……。


「あなたもいいかしら。私のことは、黙っていなさい。無駄に喋っても、何の特も無いからさ♡」


彼女はウィンクを飛ばすと階段を掛け上って行った。


それっきり戻って来ない。


俺とインプが、血生臭い地下室に残された。



【つづく】

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