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第112話【豪華絢爛】

俺は正式に君主ベルセルクから依頼を受けた。


そして、銀のプレートネックレスを渡される。


これがあれば、いろいろな場所がすんなりと通れると言う通行証のような物らしい。


これで町のゲートは顔パスらしいし、城の中も一部は通れるとかだ。


今回の仕事をこなしている間だけ許可されたアイテムである。


今回の仕事の期間は無制限だったが、それでは駄目だろうと考えて、とりあえず一ヶ月間の期間限定を設けた。


俺の提案に君主の爺さんも納得してくれる。


何事にも始まりと終わりは必要だからな。


まあ、一ヶ月も頑張って、ドラゴンの幽霊を見付けられなかったら、俺もその程度ってことだよ。


兎に角だ。


ベルセルクの爺さんを喜ばしてやりたいから、出来るだけ頑張るけどね。


あの爺さんの冥土の土産ってことだよ。


そんなこんなで俺はダンジョンの手入り口が在るって言う城の裏庭にやって来た。


城壁に囲まれた不自然な庭だな。


芝生の真ん中に兵士の詰所が建っている。


二階建ての古びた石作りの建屋だ。


あの詰所にダンジョンの出入り口が在るらしい。


あそこに俺も寝泊まりしろとのことだ。


俺が中に入ると兵士が二人居た。


テーブル席に向かい合い、退屈そうな顔でチェスを指していやがる。


「どうも~。今日からここを使わせて貰う冒険者でぇ~す」


俺が陽気に挨拶を飛ばしたが、兵士たちは変事を返さない。


こちらをチラリと見ただけだった。


なんだろうな。


この城の兵士にしては、マナーがなってないぞ。


他の兵士はキビキビと動いているのにさ。


まあ、無視するなら勝手に部屋でも見てくるか。


そう思いながら俺が奥に進もうとすると、ポーンの駒を摘まみながら兵士の一人が言う。


「二階の一番奥の部屋だ。そこを使え」


言い終わると駒を置いて顎を撫でる。


すると次に、もう一人の兵士がルークを摘まみ上げながら言う。


「俺の名前はピーターで、そっちがパーカーだ。今日は休みだが、もう一人スパイダーってのがいる」


「飯は俺らが三食作るから、ちゃんと食べに来いよ」


「はぁ~い」


なんだよ。


結構いい奴らじゃあねえか。


そう思った俺は二階の奥の部屋を目指した。


そして、扉を開けて愕然とする。


そこは、すげー荷物の山で一杯だったからだ。


部屋に入るどころか、扉のギリギリまで荷物が詰まれている。


俺は一階に戻って二人に言う。


「なあ、ピーターとパーカー。二階の一番奥は物置小屋だったぞ」


二人はチェス盤から視線を外さずに言った。


「そうだ。そこしか空いてない」


「他の部屋は俺たちが使っているからな」


空いてない?


あれは空いているとは言えないだろう。


荷物で満杯じゃあないか。


「なるほど~。じゃあ部屋の荷物はどうしろと?」


「知るか、俺らの荷物じゃあないからな」


「昔の番人の物だ。好きにしろ」


「分かった」


俺は二階に戻ると、荷物の山で踏み入れられない部屋の前に立った。


異次元宝物庫の窓を開けると中に問う。


「これ、全部入れられるかい?」


異次元宝物庫の窓から亡者が頷いているのが見えたので、あとは任せた。


すると黒い窓が部屋の中に移動して、床に広がり一気に荷物を落とし入れた。


一瞬で部屋の中が空になる。


綺麗さっぱりの部屋の完成だ。


「ん~、困ったな。ベットが無いな。しゃあない、買いに行くか」


俺は建物を出ると、建屋の横に、異次元宝物庫内に吸い込んだ荷物を全部ださせた。


ズシンと重々しい音を立てて部屋の中にあった荷物が降って来る。


かなりの地鳴りが起きたので、チェスを指していた兵士二人が慌てて見に来た。


そして、唖然とした表情で述べる。


「な、なんだ、これは……?」


「部屋の中の荷物だ。邪魔だったから出して置いたぞ」


「だ、出したって、どうやって……?」


「冒険者には、いろいろな術が有るんだよ。じゃあ俺はちょっと買い物に行って来るからさ。またね~」


なんかちょっぴりいい気分だったぜ。


そう言い残して俺は町に出る。


そして、君主ベルセルクから預かった銀のプレートネックレスは絶大だった。


本当にゲートは顔パスだったのだ。


あの生意気な役人も、俺が城から戻って来たら、こんな物を持っていたからビックリしていやがった。


なんか偉くなった気分がして、悪くないって感じだったぜ。


そんな感じで俺は、もう一度ワイズマンの店を目指す。


とりあえずベットぐらいは部屋に欲しいので、ワイズマンの店で買おうと思う。


でも、売ってるかな?


そもそも、ワイズマンの店って、何屋さんなのだろう?


まあ、いいや。


兎に角この町で知っている人物はワイズマンぐらいだから、彼に頼るしかない。


俺が銀のプレートネックレスを下げて店に入ると店員の態度がぜんぜん違っていた。


このプレートは、そこまでの力が有るのかと実感する。


なので、今度はワイズマンの居場所を聞き出せそうだ。


そして俺がワイズマンの居場所を定員に訊こうとした刹那だった。後方から声を掛けられる。


「やあ、アスランくんじゃないですか」


「え?」


俺が振り返って見ると、そこにはマヌカハニーさんが立って居た。


あー、もう一人この町に知人が居たか。


巨乳の会計士さんの登場である。


いつ見ても、見事なスイカップさんだなぁぁあだだたたっだただた!!!


畜生、呪いがぁぁああ!!!


耐えてやる!!


負けるもんか!!


ぜぇはー、ぜぇはー。


直ぐに落ちついたぞ、こん畜生めが!


「ど、どうも、マヌカハニーさん……」


「どうしたの。何か辛そうだけど……?」


「いえ、なんでも有りませんから。ニコリ!」


なんか俺の顔に笑顔が勝手に浮かび上がる。


なんか安堵してるわ、俺。


マヌカハニーさんは、スイカップをユッサユッサと凶器的に揺らしながら近寄って来る。


それは俺に取ってご褒美な光景だが、再び心臓が傷んだ。


しゃあないから視線を反らす。


そして、マヌカハニーさんに問われた。


「どうしたんですか。いつこの町に?」


「今日来たばかりですよ。お城の仕事でね」


俺はマヌカハニーさんに銀のプレートネックレスを見せた。


するとマヌカハニーさんは驚きながら言う。


「それは貴族の札ですよ。なんでアスランさんが?」


へぇー、これは貴族を現す証なのか。


通りで商人たちがペコペコするわけだ。


「これも仕事でね。そうだマヌカハニーさん」


「なにかしら?」


「ワイズマンと会いたいんだが、連絡は取れないかい?」


「あ~、それなら私もこれから会う用事が有るから一緒に行きますか?」


「おお、いいのかい?」


「勿論ですとも」


マヌカハニーさんは笑顔で答えてくれた。


弟のマヌカビーが行方不明だったころは、深刻に沈んでいたが、今はめっきり元気になって良かったって感じである。


この人は明るい表情のほうが美人に見えるのだ。


うんうん、善きかな善きかなだ。


それから俺は、マヌカハニーさんが用意した豪華な黒々とした馬車で町を出た。


俺たち二人は城壁を出て直ぐの屋敷まで馬車を走らせる。


「ここに居るのか、あのスケベなモッチリオヤジは……」


なんか幾つも部屋がある豪華で巨大な屋敷だった。


「ええ、ワイズマン様の御屋敷ですわ」


この屋敷のサイズを見て俺は思う。


本当にあのモッチリオヤジが金持ちなんだと分かった気分だった。


馬車が玄関前に到着して止まる。


「さあ、こちらに」


「ああ」


俺はマヌカハニーさんの後ろに続いて屋敷に入った。


なんとも豪華絢爛なロビーである。


甲冑の置物や、大きな肖像画が飾られていた。


ロビー内の財力だけで圧倒されてしまう。



【つづく】

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