表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械少女は笑わない  作者: 鳶すけ
カーテンコール
1/5

プロローグ 夢か過去か

 これは恐らく、遠い気過去の記憶。


 あの時は確か、

「おねえちゃん、って人間じゃないの?」

 と、たずねた。

 すると女性は応えた。

「はい、UNI-00。アンドロイドです。マスターからはユノと呼ばれています。」

 無機質

 そう、ひどく無機質に見えた。

 漆黒の長い髪に白い肌。

 僕の中を見通せるかのような、澄んだ蒼い瞳。

 童話に出てくる糸繰り人形(マリオネット)のような、そんな雰囲気を持つ女性だった。


「アンドロイド?僕の知っているアンドロイドはもっと笑ってたよ?」

 僕がそう聞くと、彼女は答える。

「私には笑う、を含めた感情や心がラーニングされていません。」

「ラーニング?」

「はい、ラーニングです」

 そう言って彼女は首をかしげながら無表情で僕を見ながら、話を続けた

「ラーニングとは私のデータベースに無いものを外からインプットさせることです。学習、勉強と言えば貴方にわかりやすいかと。」

 彼女はその無表情のまま答えた。それに僕は思ったことを話した

「わかんないや。」

「そうですか。でしたらもっとわかりやすい説明を」

 そう言って律義に説明を続けようとする彼女を制して僕は言った。

「でも、おねえちゃんも僕と同じなんだね。」

「同じ、とは?」

 興味深げに顔を覗き込んだ。その顔は無表情であるが、先ほどと打って変わって感情があるように見えた。

「僕もおねえちゃんも、まだまだ()()()()()()()()()ってことかな。」

 と、僕は言った。それに対して、ユノの表情が変わっていた。感情が無いはずの彼女が驚いたような顔をしていた。

「そうでしたか…()()()()()()()()()ですか…」


 彼女の驚きながらも笑みを浮かべている仕草は、僕が今まで見てきたアンドロイドよりも、より人間らしかった。

「おねえちゃん気づいてる?今驚いてる顔をしているよ。」

「そんなはずはありません。私には感情がラーニングされていないので」

 いつの間にか、無表情に戻り答える彼女。しかし何故か無表情でも感情が動いているように見えた。

「うっそだー。絶対驚いてたね」

「私には驚けるようにラーニングされていません」

「じゃあ勝手に学習でもしたんじゃない?」

「その可能性は否定できませんが…」

 そんな問答をずっと繰り返していたが、いつの間にか彼女の顔が笑っていた。


 楽しい時間は早く過ぎるようで、話し込んでいたら夕方になっていた。

「もうずぐ夜が来ます。貴方はもう帰るべきでは?」

「あっ、もうこんな時間か…おねえちゃんも帰るんだよね。」

 それに彼女は少し上を向くような動作をしてから答えた。

「はい。帰って報告書を書かねばいけませんので」

 そう言って僕を見つめる彼女に僕は手を出した。それに彼女は首をかしげる。

「その手は?」

「よろしくの握手。僕、敦也って名前なんだよろしくね!今日は楽しかったよ!」

 彼女は僕の手を興味深そうに見てから、僕と同じように右手で握り返した。

「こちらこそ、有意義な時間を過ごせました。」

 そう言って手を放して僕から離れた。無表情だからか、すぐにでも消えてしまいそうな感じがした。

「また会える?」

 不安に駆られて僕は咄嗟にそう聞く。彼女は足を止めて振り返ると、無表情だが優しい声でこう答えた。

「また会えますよ。きっと」

 僕はその言葉を聞いて安心した。そして


 僕の世界は暗転した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ