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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

呪いの代償

作者: 潮浜優
掲載日:2019/08/09

タカコはイジメられていた

その中心人物であるミズエを恨んでいた

「呪いころしてやる」

そう口にするようになってから、イジメはさらに激しくなっていた

そんなさなか

事件が起こった…

呪いの代償




ミズエは暗い部屋の中、布団を頭までかぶり、ふるえていた

昨日からおでこに出来たふきでもの


徐々に大きくなり、夜になるとジンジンと痛みだしてきた


「痛い痛い痛い痛い……」


それはあまりにも目立つため、昨日から高校を休んで布団にくるまったままだ


「何で何で何で何で……」


そっとおでこをさわると、ありえないくらい腫れている

そして、血流にあわせてうごめいているようだ…


「はぁ!」


ガマン出来なくなったミズエはベッドから飛び出し、電気も付けずに洗面台へ向かう


薄暗い鏡に映る自分の顔に愕然とした


「な、なにこれ…」


真っ赤に腫れたそれは、もはやふきでものとは言えず、おでこをおおい尽くしている

それだけではなく、血流とは明らかに違う何かが、皮膚の下でうごめいていた…




『あなたがいけないのよ…』


「は!」


暗い鏡の奥、その暗闇に浮かぶさらに黒い人影


長い黒髪をまっすぐ垂らし、ミズエの左斜め後ろに立っている

それはクラスメイトのタカコだった


「タ、タカコ!」


恐怖で振り向けない…


「なに!なんなの!」


それでも強気に鏡越しに叫ぶと…


鏡越しにタカコはニヤリと笑った


「はぅ!」

痛みが強烈に襲ってきた


「痛い痛い痛い痛い痛い!」


すると腫れの中心から何かが出てくる


モゾモゾと出てきたのは…


ウジ虫だった!


「ギャーー!」


次から次へと出てくるウジ虫

ポタポタと足元に落ちていく


「う、うわぁぁぁ!」


ミズエは狂乱し、家を飛び出し

15階のマンション廊下から転落した…



挿絵(By みてみん)




クラスでは朝からミズエの話題でもちきりだった

「自宅のマンションから?」

「事故?」

「自殺?」

「あのミズエが自殺?」


報道では事故と自殺の両面から捜査しているそうだ


「タカコだ…タカコが呪い殺したんだ…」

ミズエと仲が良かったアキがつぶやく


「呪いだなんて、そんな…」


ミズエは活発で明るい性格だったが、狡猾なところもあり、陰でタカコをいじめていた


からかい、無視、嫌がらせ…


見かねたあたしは、カズ君に相談していた

カズ君は学級委員長で正義感も強く、みんなからの信頼もあつい


そして、あたしの彼氏だ


男子は女子のいざこざにうといのか、最初はイジメの事実に驚いていたが


「俺が何とかする、マリはこの件にはかかわるな」


「カズ君、ありがとう…」


あたしが女子のいざこざに巻き込まれるのを心配してくれて、カズ君が収束に手を尽くしてくれていた






1度、ミズエ達がタカコをいじめている現場を目撃したことがある


体育館の裏でミズエ達に囲まれているタカコ

タカコは体育座りだ


「マリはここにいろ」

一緒にいたカズ君がその現場になに食わぬ顔で近づくと、ミズエ達はそそくさと去っていった



ミズエ達がいなくなってもタカコは体育座りのまま動かない

カズ君が近づき、タカコの正面にしゃがんで何か話している


カズ君から目の合図

あたしもタカコのもとへ行ってみると


「カズ君、タカコ大丈夫?」

「いや、ちょっとヤバい」


タカコを見ると、何かぶつぶつ言っている

「タカコ大丈夫?タカコ!」


「呪い殺してやる、呪い殺してやる…」

タカコは一心不乱にそう口にしていた


顔はうつむき、頭を抱えながら

でもその表情は


少し笑っているように見えた……




それからタカコは、ことあるたびに口にした

「あんた達なんか、呪い殺してやる!」


「はぁ?何言ってんのコイツ、そんな事であたしらがビビるとでも思ってるの?」


ミズエ達はタカコの言葉をただの脅しだと決めつけ、ひるむどころかさらにイジメが悪化していた


そんなさなかの今回の事件


ミズエが不審な死に方をした


アキは明らかにおびえていた



「ねぇ、カズ君、本当にタカコが呪い殺したと思う?」


「さぁ、確かにタイミングも死に方もそれっぽいけど、さすがになぁー」


「そ、そうだよね…」

呪いで人を殺せるなんて思えない…




当のタカコはなに食わぬ顔で登校している


そんなタカコを見て、アキが突っかかってきた


「あ、あんたが殺したんだ!タカコが呪い殺したんだ!」


恐怖で青ざめるアキ


「じゃあ、殺人で訴える?」


「うっ!」


「根拠のないことで人を中傷しないほうがいいわよ」


「くっ……」



タカコは勝ち誇ったようにせせら笑っていた




タカコへのイジメはそれ以来無くなった

正確には、誰もタカコに近寄らなくなった


そして三日後


タカコも学校を休んだ




「マリ、プリントをタカコの家に届けるんだけど、一緒に行くか?」


学級委員長のカズ君は、プリントを届けに行くらしい

いや、本当はそんなに急ぎのプリントじゃないはずだ


カズ君も気になっているんだ…


「うん、行く」


放課後、2人でタカコの家に向かった




タカコの家は高校から近い閑静な住宅地にある

似たような家が建ち並ぶ分譲住宅のひとつ


南側にある小さな庭には芝生が敷きつめられている

夕陽をあびるその家は、ごく普通の一軒家だった


ピンポーン


インターホンを鳴らしてしばらくすると、小学校5、6年生くらいの女の子が出てきた


「はい…」


ドアにチェーンをかけたまま、うつろな目であたし達を見る


「あ、こんにちわ、あたし達はタカコ…お姉ちゃんのクラスメイトで、その…」


するとその女の子は1度ドアを閉め、チェーンをはずして開けた


「お姉ちゃんなら、2階の部屋にいます…」


表情を変えずにそう言う女の子

少し冷たい目は、タカコに似ている


「あ、ありがとう、じゃあ、おじゃましますね」

「おじゃまします」


2人して玄関を上がった



玄関の先に伸びる廊下は夕方で薄暗く、奥まではよく見えないけど、廊下はきれいで整然としている


廊下の途中にある右側のドアは、おそらくリビングの入口

その手前の左側に2階に上がる階段がある


カズ君が先頭で階段を登る


「奥の部屋です…」


女の子が階段の下からそう言うと、リビングの扉へ吸い込まれるように行ってしまった



階段を上がりきると、右手に廊下が伸びている

まだ日が暮れる時間じゃないのに薄暗い


「行こうか…」

「う、うん…」


2人して薄暗い廊下を進む


ギシ、ギシ


シンとした廊下に足音だけ聞こえる

なんだか暗闇に飲み込まれそうだ…



コンコン



言われたとおり、1番奥の部屋をノックすると、部屋の中からタカコの声が聞こえた


「だれ!」


「あ、マリです、カズ君とプリントを届けに来て…」


「そう…」

部屋の中からタカコの声


「タカコ、少し話せる?入ってもいい?」



少し間をあけて、タカコが答えた


「どうぞ…」


カズ君と目を合わせ、お互いうなずいた


ドアノブに手をかけ、ドアを開けると…

「うっ…」


中から変なにおいがしてきた

動物の死臭のようなにおいが…


部屋に入ると、タカコは部屋の奥、窓際にあるベッドにいた

ベッドの上で上体をおこし、腰まで布団をかけている

前にボタンがある、薄い灰色のパジャマ


窓が奥のため、あたし達からはちょうど逆光


「いらっしゃい…」


タカコは座りながら左を向きそう言った

逆光のため顔が影になっているが

冷たい目のままうっすらと笑ったように見えた


でも驚いたのは床にあったモノだった


枯れたバラが数本、直径1メートルくらいの円状に置いてあり、その中には画用紙を繋げて描かれたあやしげな魔法陣


そしてその中心には、ネズミと思われる死骸が置いてあった…


「うっ!」


思わず両手で鼻と口をふさぎ、目をそむけた

明らかに何かの「儀式」のようだった



「2人して来るなんて、めずらしいわね、プリントならその辺に置いて、帰っていいわよ」


「タカコ!こ、これは…」

一瞬見ただけで目をそむけたが、ネズミのような死骸が脳裏にこびりついて離れない…


「あぁ、これは呪いの儀式、大丈夫、あなた達にはかけてないわ」


「の、のろい…」


「お、お前こんなことして!」

カズ君が思わず叫ぶ


「こんなこと?これがどうしたって言うのよ」


「ミズエさんが亡くなったんだぞ!」


「あら、まるであたしが呪い殺した、みたいな言い草ね」


「違うと言うのか!こんなまがまがしいことして!お前、自分が何をしたか分かっているのか!」


「じゃあ、警察でも呼べば?」


タカコはニヤリと笑う


「あたしが呪い殺したって、そう通報すればいいじゃない」


「クッ…」


カズ君は両こぶしを握りしめたが、言い返すことができない


「ほら、プリント置いて帰りなさいよ、変な言いがかりするなら、アンタ達も呪うわよ」


「おい、マリ見ろ…」

カズ君が小声で言いながら視線を向ける


カズ君の視線の先には本棚がある

よく見ると、その本棚には呪術や呪いの本で埋めつくされていた…


「分かった、俺たちは帰るよ、だがもうこんなことはやめろ!」


「そうね、教室に悪魔がいなくなったらやめるわ」



「マリ、行こう…」

「う、うん…」


帰り際、タカコを見ると、首にやけに大きなふきでものが出来てるのが目に入った…




夕焼けの住宅地

後味が悪く、2人して黙って歩く


沈黙をやぶったのはカズ君だった


「あれは間違いなく呪いの儀式だ」

「う、うん…」


「タカコのヤツ、本当に呪っていやがった」

「でも、呪いなんかで、本当に人を…」


「信じられないが、死に方もタイミングも良すぎる」


確かにそうだけど…


「ちょっと、調べてみるよ」





「はぁ、はぁ…」

夜中、タカコは布団の中で激痛に耐えていた


「痛い痛い痛い痛い…」

徐々に痛みだした首の左にできたふきでもの


そっと触ると、ありえないくらい腫れていた

しかも皮膚の下で何かうごめいている


「はぁ、はぁ、」

息づかいがあらくなり、鼓動がはやくなる


すると「プチッ」と音がして、腫れの中心から何かが出てきた


手で触り、

ゆっくり見てみる


その手には小さく黒い蜘蛛がおおい尽くしていた


「うわああああぁぁぁ!!」


半狂乱になるタカコ

腰が抜けてうまく動けないが、ベッドから出て、必死にはいつくばる


その間も、首からはポタポタと黒い蜘蛛が落ち続く


「はあああああぁぁぁ!!」


なんとか階段まで来たが、うまく降りれない

ガタンバタン!ガガガゴロゴロ!


2階から階段を転げ落ち、それでもはいつくばりながら、リビングへ向う


タカコが目指していたのはキッチン

引き出しから包丁を取り出した


叫び声と階段から落ちる音で、母親が起きてきた


「タカコ、こんな夜中に…」


娘のただならぬ様子に言葉を失う


「タ、タカコ!何をしているの!」


タカコは血走った目を見開き、両手で持った包丁を首の左に突き立てていた


「タ、タカコ!タカコ!」


「うわああああぁぁぁ!!」


タカコは首の腫れモノを包丁で切った

血しぶきがキッチン中に飛び散る


しかし、腫れモノを切ったはずだが

いくら切っても首から黒い蜘蛛は出続けた


タカコが最後に見たのは、自分の首から滝のように流れる赤黒い血と、うごめく無数の蜘蛛だった……




しかし、翌日の警察の現場検証では、黒い蜘蛛も首の腫れも見つからなかった






【女子高生、首切り自殺!】

【イジメを苦にした結果か?】


たて続けの不審死にマスコミはセンセーショナルな見出しを付けた

混乱をさけるため、しばらく休校…



クラスメイトが2人も亡くなり、あたしは軽いショック状態で、部屋から出れなくなってしまった…


心配して、カズ君がお見舞いにやって来た



「いろいろ調べたんだ、呪いのこと」


「う、うん…」


「人を呪わば穴二つって聞いたことあるだろ」


「うん…」


「タカコは、もしかしたら自分の呪いの反動だったかもしれない」


「反動…?」


「人をおとしめるような呪術や呪いは、自分に返ってくるそうだ」


「そう…なんだ…」


「でも、きっとこれで終わり」


「そう…なの?」

終わり、という言葉に少し安堵する


「あの日、タカコが別の呪いをかけたとは思えない」


「そっか…」


「だから、もうこんな事は起こらないよ」

優しいカズ君は、笑ってそう言ってくれた


あたしを安心させるために…




でもその後、カズ君が言うとおり何も起こらなかった

あたしは徐々にもとに戻り、学校が再開され通えるようになると、まわりも日常を取り戻していた


あたし達もいつしか受験勉強に忙しくなって、呪いやタカコの話題は無くなっていた…




あたしとカズ君は東京の大学に行くことになった

東京に出て一人暮らし


カズ君と近い場所に部屋を借りたけど、半年もすると一緒に住むことになった


少し古いけど、2DKの良い部屋が見つかったとカズ君から連絡が来た


2人して部屋を見に行くと、外観も部屋も綺麗にリフォームしてあって、都内なのに日当たりもよく、あたしもすぐに気に入った


さっそく契約して、あたしはもとの部屋を解約


カズ君のほうが手続きが早くて、先に入居している


あたしの部屋の引越し屋さんはまだ三日後だけど、とりあえず身の回りのモノだけ鞄に入れて、2人の部屋に向かった


まだカギをもらってないから、インターホンを押す


すぐにカズ君が玄関を開けて顔を出した

「やぁ、いらっしゃい、じゃなくて、これからはおかえりなさい、だな!」


「そうね、ただいま!なんだか恥ずかしい…」


これから始まる2人の生活に胸を踊らせて部屋に入る


でも…


すぐに違和感に気づく…


鼻を突く変なにおい…

まるで動物の死骸のような…


ダイニングの奥にふすまが2つ

片方の部屋から異臭がする…



恐る恐るふすまを開けると…


いろんな花が直径1メートルの所に敷きつめられ、その中には魔法陣


そして、その中心には、おそらくカラスと思われる死骸が置いてあった!


「こ、これ……」


「中心の動物が重要なんだ」


は!


いつの間にか後ろに立つカズ君が話しかけてきた


「花の種類と魔法陣が効力を決めるけど、発動させるには贄が必要なんだ」


「に、にえ……」


「これで安心だよ」


「な、なにを…なにを言っているの……」


「あれからいろいろ調べたんだ」


「な、なにを調べたの…」


「ほら、あれさ」


カズ君が指さした本棚には、タカコの部屋にあった本と同じモノが並んでいた


「これで安心だから」


「カ、カズ君……」


「こうしておけば、誰かに呪われても大丈夫なんだ」


カズ君を見ると、頬にふきでものができている


「これで俺たちの生活は誰にもジャマされないよ」


ニヤリと笑うカズ君…


でも、そのふきでものは


あの日のタカコのそれと同じだった……




おわり


このお話しはフィクションです

登場する人物、団体、設定は創作したものです


ですが…


呪いの儀式はやめましょう…

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― 新着の感想 ―
[良い点] おー。タカコが死んで終わりじゃないのですね。 後日談まで楽しめました。 絵も大変雰囲気に合って良いです。 多才ですね。
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