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第十九話 そしてこの一振りに辿り着く。

「はぁ、、はぁ、、」


サウザンドの息が上がり始める。

勾玉が出現して以降、ことごとく攻撃が『ソレ』によって弾かれていた。


「、、っく!炎舞!火速陣!!」


ギン!ギン!ギギギギギン!


まさに『絶対防御』。サウザンドが放つ超高速の連撃ですらあと一歩届かない。


「行きます!」


ギュン!シュパン!


「っぐあ、、」


逆にタケルの動きは徐々に冴え出す。

先程までの防戦一方が嘘の様に軽やかに闘技場内を舞う。

逆にサウザンドの動きは明らかに鈍くなっていた。


「あんなに攻撃を受けてたはずなのに、、あいつは不死身なの?!」


リーンを始め会場の誰もが驚くのは、タケルの『絶対防御』と『超回復』だった。


「おそらくどこかのタイミングで[五芒星の加護]も発動させていますわ。なるほど、、意図が読めましたわ!ホホ!」


「意図?教えなさいよ!」


「昨夜私はタケルに勝つ事は『命令』だと伝えました。要はこれは『任務』ですのよ。任務を遂行するという事は作戦通りに事を進めるという事が至上命令ですわ!」


「この展開が作戦通りって事?」


リーンはまだ納得するだけの材料を持ち合わせていなかった。エリスはそれを察すると順序立てて説明を始めた。


「まず最初の迫撃戦。いくら向こうの猛攻があったと言えどタケルの手数の少なさは

実力的に見ても不自然なほど。あえて攻撃を受けてたと考えるのが妥当ですわ」


「なんでそんな事するのよ!結果的に『炎帝』のスキル出されちゃって死にかけたじゃない!」


リーンの言う通り、押せ押せのサウザンドは一気にカタを付けようと『切り札』を発動。タケルをあと一撃で倒せる所までお追い込んだ。


「それこそが狙いだったんですわ。『スキルの持続時間』って言うのは一般的に強力であるとほど短くなるもの。ましてや全出力で勝ちにかかったサウザンド王は普段よりも消耗が激しかったはず、、後はご覧の通りですわ」


「、、なるほどね」


ようやく思考が追いついたリーンは椅子の深い位置に腰掛け直し、手摺を利用し頰杖をついた。


「どちらも強力なスキルを持っている場合、先手は決め切る事が必須。その機を逃したら後出しの方が断然有利って事ね、、なによ、簡単な話じゃない」


「タケルの相手を見切る力があってこそですわね。これまで『炎帝の化身』を破られたことの無いサウザンド王の慢心を突く少々冷酷な作戦でもありますわ、、」


闘技場に目を戻すと、目にも止まらぬ剣技で圧倒するタケルの姿があった。


「っくそが!、、ハァ、、」


いつのまにか纏っていた炎が解かれていた。サウザンドは何とか立ってはいるものの、もはや敗北は時間の問題と言える。


「、、ハハ、、ハンパないね君、、初めてだよ、、こんな『圧倒的に負ける』なんて、、」


「私も十分死にかけてます。次やったらわかりませんよ。それに、、」


タケルは視線をリーンに向ける。

仏頂面の彼女は「早く決めなさい!」と今にも大声で叫んで来そうだった。


「なーんだ、、リーンに惚れてるのかい?」


「私にはあのような核弾頭みたいな女性は扱えませんよ、、(というか扱いたく無いですし、、)」


「、、ん?なんかイラッとしたわ!聞こえないけど!」


リーンは自分の悪口を言われている事を察して、貴賓席から禍々しいオーラを発していた。

サウザンドとタケルはそのゾクゾクする視線を感じ取る。


「、、なんかすまん。」


「いえ、、リーン王女を扱えるとしたらこの世でただ1人。私の親友である『ユタロウ』しかいないでしょう。彼もそれを望んでるはずです。だから私はどうしても負ける訳にはいけなかったのです」


「リーンが気にしていた『第3席の男』か、、新世代を確実に担う君やリーンがここまで気にかけるなんて相当な『色男』なのかい?」


冗談交じりのサウザンドとは対照的に一転、真面目な顔をするタケル。


「いえ。単純な話です。」


「単純?」


「ただ彼が私たちより『強い』だけです」



サウザンドはユタロウを考察する。

リーンは実力的には自分より『弱い』と言っていた。

タケルは自分たちより『強い』と言い切っている。

ほんの数秒で至った結論が口から滑り落ちた。


「面白い!!この戦いが終わったら俺は『ユタロウ』に会いに行くぞ!ハハ!」


「承知しました。ならば終わらせましょうか」


「ああ、、」



数秒後、互いにこの日最高の一振りを放ち試合は決した。

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