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第十四話 神の子サウザンド

ートコナッツ王国・ガミュード諸島海域ー


百以上の小さな島々が周囲200㎞四方に点在しており、そのどれもが太古の生態系を維持する『生きた博物館』である。

また海域の南端に行けば行くほど『海獣』たちが大きく獰猛になる事から、その方面、特に危険な区域一帯は『ヘルトピア』と呼ばれ、百戦錬磨の海賊でさえ恐れをなす。



「船長!北東30㎞前方に地図に無い島があります!」


「そんな訳ねぇだろ!どうせ『大陸ガメ』か何かが背中を出してるだけじゃねえのか?」


「、、いえ。それにしては大き過ぎます!ご確認を!」


船員がそう言うと、船長のアルバート・シンプソンは懐から小さな筒のような物を出し、念入りに覗き込んだ。


「、、あれは、、島だな。城みてえなのも建ってるじゃねえか!」


「どうしましょう?接近してみますか!」


「いいや、、帰港するぞ!『ヘルトピア』に入っちまう、、それにどうも嫌な気配だ。野郎ども!取り舵いっぱーい!!」


「、、!?船長!舵が動きません!、、うあ!!」


「どうした!!、、な、、貴様は何者だ!!」


「、、ユタロウはいないか。退屈ですね」


この日、グレート・シンプソン号もとい、船員19名が消息を絶った。3日後、焦燥しきりながらも、近くの海岸に運良く流れ着いた船員1名は朦朧とした意識の中こう言った。


「あれは魔王城だった。俺たちは踏み込んでは行けない領域に踏み込んでしまった」


この事件は「アルバートの不運」と呼ばれ、これを機としたかのように、魔王の脅威は徐々に世界を蝕み始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ートコナッツ王国・アラビアム宮殿ー


『アルフ4大国』の中で、最も裕福な王国『トコナッツ王国』が誇る『富の象徴』とも言える大宮殿。煌びやかな装飾が建物全体に施されており、その総費用で『ローランド王国の半分を買えた』と言われている。


「殿下ー!サウザンド殿下ー!」


クリュム・カムジンは老体に鞭を打ち、広い宮殿内を走り回っていた。

額には大粒の汗が光る。それは『爽やか』とは言い難く、丸々太った体のせいか少し不潔感が漂っていた。


「大臣殿。そんなに慌ててどうなすった?」


庭師のハシュクが堪らず尋ねた。王宮に仕えて50年の大ベテランは、クリュムの様子を見るや、ただ事ではないと悟っていた。


「おお!ハシュク!殿下がどこにもおらんのじゃー!あれほど今日はローランド国王と会食だと言っておいたのに。。」


「そいつは困ったもんだのー。そいじゃ」


面倒ごとを嫌うハシュクは、理由を聞くとすぐに持ち場へ方向転換するが、クリュムはそれを許さない。すぐさまハシュクの腕を掴み助けを乞う。


「なあー!ワシとアンタの仲ではないか!勿論手伝ってくれるよな!」


「ええい、離さんか!お前は子供の頃からそうやって面倒を押しつける!」


「ハシュクさん!助けとくれー!」


「サウザンド殿下なら拳闘場にいると思いますよ」


ただ事では無いと近づいてきたのはハシュクの孫で庭師見習いのクルタだった。

サウザンドとは同い年と言う事もあり、いつも遊び相手になっている少年だ。


「昨日『明日は百人斬りに挑戦するぞ』って言ってたんでおそらく、、」


「「そこだー!!」」


老人二人は年甲斐も無く息もぴったりに発狂した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「きゃー!サウザンド様がまた勝ったわー!」


「「「ステキー!」」」


拳闘場は異様な盛り上がりを見せていた。


[サウザンド・ハン・アラジーン]

若干17歳にして、第89代トコナッツ国王である少年。幼き頃から『神の子』と呼ばれる程の才能に恵まれ、文武において桁外れに秀逸であった。また、その端正な顔立ちとナンパ気質な性格で女性から圧倒的な支持率を誇る。稀代の『色男』でもある。


「嘘だろ、、バケモンかよ!」


「ハハ!おいおい、、『国王』に向かってバケモンとはなっとらんねー!次だ!」


「、、俺が出よう」


「「おおー!」」


女子たちの黄色い声援を搔き消すように男たちが吼える。


「90戦目にして遂に登場だー!さぁハッタハッタ!」


ここ1番と賭博屋も声を張り上げる。


「徒手拳闘団[不滅のジャッカル]が誇る切り込み隊長!アルデミス・イブラハム!ここで極秘で入手したステータスを紹介するぞー!」


名前:アルデミス・イブラハム

年齢:28

職業:拳闘士団隊長


『ステータス』

心力:A

技力:A

体力:A

筋力:A

脚力:A

魔力:A

知力:A


『スキル』

迫撃強化:B 精神強化:B 鉄腕:A


「ぬわーんと!ステータスはオールAだー!拳闘士としての力量は勿論!打撃系スキルは申し分無し!幾度となく戦果を上げてきた最強の切り込み隊長の登場に、流石の殿下も90戦目にしてピーンチ!」


「アルデミスに1000グルトだ!」


「俺は隊長に1200グルト賭けるぜ!」


賭場はこの日一番の盛り上がりを見せる。

いくらサウザンドと言えども、拳闘団の猛者を相手にもう89戦も戦っている。そこにアルデミスの参戦と来れば、男たちはこの『色男』の負ける姿をどうしても拝みたいのだ。


「野蛮な連中ねぇ!」


「サウザンド様ー!そんな岩男やっつけちゃえ!」


「やれやれ、、レイディーの頼みなら断れないなー」


会場はサウザンドVSアルデミスと言うよりは『男VS女』の様な雰囲気を呈している。


賭博屋兼レフェリーの男が、準備の整った両者を広場中央へ誘う。


「それではおっぱじめるぜー!準備は済んでるな!、、、、」


会場が静まり返る。

十分すぎる間をとったレフェリーが上げていた右手を大きく振り下ろした。


「はじめぇえ!!!」


「迫撃強化!精神強化!鉄腕!スキル全開だぁー!!」


アルデミスはサウザンドが様子を見ると踏んで、その隙にスキルを一気に解放した。

ビリビリと痺れる様な空気が観客を包む。


「ひゅー!飛ばすねー!」


ドン!


次の瞬間アルデミスは地面を砕きながらノーモーションでサウザンドのパーソナルスペースまで移動。右手を小さく後ろへ引き打撃の溜めを作る。時間にしてここまで1秒も掛かっていない。


スパン!!


後ろへ引いた拳は放たれる事無く地面に着く。

一瞬の出来事に思考が追いつかない。

確かに数秒前まで攻撃の体勢を取っていたはずだった。


「ハハッ!さあ、立ちなよ。続き続き!」


「なんだってんだ!クソがあああ!」


スパン!!


スパン!!


徒手拳闘団[不滅のジャッカル]。

王国内外に轟くその戦果や功績は疑いようのない強者の証しだ。

そこの切り込み隊長が手も足も出ない相手が居ようとは誰が想像しただろうか。


サウザンドはまだ『左の拳打』しか使っていない。


「あ、、う、、ああ」


「あらら、、もう終わらせよう。」



スパン!!!


、、、バタ。



左手一閃。

結局、相手はサウザンドに触れる事も出来ずに地に頬をつけている。


「、、強すぎる、、」


観客たちは歓声をあげるのも忘れ、その強さに畏怖の念さえ抱くのであった。


「殿くぅあー!!見つけましたぞ!!」


「あ!クリュムだ」


ようやくサウザンドを見つけた安堵感からか、先ほどまでの青ざめた表情が元に戻るかと思うと徐々に赤くなっていく。


「『あ!クリュムだ』じゃありませんよ!!今日はローランド国王が来られる日とあれほど念を押したと言うのに!忘れたとは言わせませんぞ!」


「も、、、もちろん覚えていたさ!ハハ!」


(この人絶対忘れてるー!!)


「後10戦残ってたんだけどなー。。まあいいや、またやりに来るとしよう!」


(いや、もう来んなー!!!)


サウザンドとクリュムは王宮内部へ向かい歩き出した。

楽しそうに笑顔で話すサウザンドとは対照的に不満を爆発させるクリュム。

2人の歩く姿は仲の良い親子の様にも見えた。


「、、、であるからして!」


「なあクリュム。いい言葉思いついたよ!ハハ!」


「何ですか急に!、、まあ一応聞いてあげましょう、、」


サウザンドは立ち止まって左拳を天に突き上げる。


「『左手を制する者は世界を制す』、、どうかな!名言っぽくないか!」


「、、さ、歩いた歩いた」


クリュムがさらり受け流したこの言葉は、のちに格言化されトコナッツ王国徒手拳闘団を更なる高みに引き上げる事になろうとはまだ誰も知る由もなかった。


サウザンドは『適当』に言っただけという真実が時代に揉み消される事も。


「さあローランド国王とご対面だ!ハハ!」




のだです。


一応この話から新章に入ります!


稀代の色男、『神の子サウザンド』の登場回となりましたが、いかがでしたでしょうか!


はじめに言っておくと、この男めっちゃ強いです!笑


この男が、この先『物語』を引っ掻き回してくれたらなんて思っています。



引き続き「聖剣抜いたのが僕でごめんなさい!」をお楽しみください!

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