華奈の大逆転?
華奈の呪文は、まるで神官の祝詞のような響き。
汗を流しながら唱え続ける。
華奈に手を握られたままの光は、時折苦しそうな顔をしたり、また、おさまったりを繰り返す。
春奈は、かつて光の叔母にして、日本巫女界のトップの圭子に聞いた話を思い出した。
「そういえば、華奈ちゃんの一族は、お伊勢様の巫女の流れ」
「都内には由香利さんもいるけれど」
「鏡の浄化の秘法を持っている」
「つまり、邪霊を吸い取り、滅することができる秘法」
「しかし、お伊勢様の巫女の一族とて、誰しもできるわけではない」
「できるとすれば、伊勢の中でも、かなりな血脈の巫女で、能力を持った巫女」
そこまで思い出して、華奈をじっと見る。
「でも、あの華奈ちゃんが実は?」
「どちらかと言えば、足手まといだったのに、実はいつの間にか?」
「これは偶然?」
様々、違和感に包まれるけれど、光の表情は少しずつ楽になっているような感じがある。
ソフィーもじっと華奈と光の様子を見ていた。
「ふむ、意外性の華奈ちゃんだなあ」
「確かに鏡の浄化の秘法が、功を奏している」
「清冽にして光り輝くお伊勢様、天照大神の秘法」
「これに対抗できる邪霊はない」
「しかし、まさか、華奈ちゃんが、これを出来るとは」
由紀も驚いた。
「華奈ちゃんの必死さかなあ、いつの間にか、成長している」
「ある意味、安全パイだったけれど、これは気を抜けない」
「でも、とにかく今は光君の回復が第一、問題が解決したわけではない」
キャサリンも、いろいろ考える。
「やはり、阿修羅様、力のある巫女を周囲に揃える、それも適宜、教育を施しながら」
サラは、華奈の身体の中を透視する。
「光君に感染した邪霊が、華奈ちゃんの中の鏡に、どんどん吸収されて浄化されていく、それとリンクして光君の表情が楽になっていく、それにしても見たことのない秘法だ」
春麗は、華奈をうれしそうに見る。
「そうなんだ、あまり滅多に見られない秘法なので、阿修羅は今回、これを使ったんだ、華奈ちゃんの中の浄化鏡の成長も把握していてね」
「華奈ちゃん」
横たわったままの光の声が、はっきりしてきた。
華奈は、やさしい顔。
「なあに、光さん」
その声もやさしい。
光の心を読んだのか、ゆっくりと光を抱き起こす。
「ありがとう、すごく楽になった」
光の目が、ようやく開いた。
まだトロンとしているけれど、少なくとも苦しそうではない。
そのまま、華奈の肩に顔を預けた。
華奈は、真っ赤になった。
そしてまた涙顔。
「うれしい、はじめて、光さんから・・・」
「こんな私だったのに」
そこまで言って、光を抱きしめた。
そして、涙が止まらなくなった。
春奈はうなった。
「マジ?形成大逆転?」
他の巫女も、あ然として、華奈と光を見つめている。