光の憔悴と、春奈の決心
ソフィーの言葉の直後、光は意識を失ってしまった。
そして、ソフィーの確保した大型タクシーに、巫女たちに抱えられながら、やっと乗り込んだ。
春奈も真っ青な顔。
「突然、とんでもない力を使うからこうなる」
「阿修羅もやらせすぎ・・・あれしか方法がなかったこともあるけれど」
そう言いながら、光の額に手をあて、脈を見る。
その後、自分の鞄から血圧計を取り出して、血圧を計る。
春奈は首を横に振って難しい顔。
「ほんと・・・息しているのが、やっとぐらい」
「体温も低下している」
「脈も弱い、血圧は上が78、下が30」
華奈は、涙一杯、本当は光にしがみついて泣きたいけれど、一目みて、とてもそんな状態ではないとわかったらしい。
とにかく見つめているだけの状態。
由紀も厳しい顔。
「時間が立てば回復はするのだろうけれど、それにしても、全精力を使い果たしたって感じ」
そして、大型タクシーの窓から外を見る。
「街をゆく人々にとっては、航空機が墜落しそうになっていたけれど、どういうわけか、持ち直して羽田まで飛んだ、それくらいしかないんだよね」
「といって、説明してもわかることはありえない」
キャサリンも涙を流している。
「とにかく、ありえないほどのすごさ、さすが阿修羅様と思ったけれど、その後の後遺症が、かなり厳しい」
サラも、涙が止まらない。
「私のチェロの癒やしなどとは、次元が異なる話、大聖堂の前の戦いとか、富士山麓での戦いとも匹敵する戦いを、突然行ってしまったのだから」
春麗は、光の手を握った。
そして、難しい顔で、首を横に振る。
「効果が出るには時間がかかるけれど、精気回復に使う手のツボを少しずつ押すよ」
「それにしても・・・本当に脈そのものが弱い」
ずっと光の様子を見ていたソフィーは、本当に厳しい顔。
「今回は、いきなりの攻撃で、阿修羅は超巨大変化して、航空機を掴んで止めるしかなかった」
「そこまではいいけれど、その後は、こんな状態」
「もう一機飛んできていたら、どうなっていたのか」
「それこそ、大災害は避けられず、光君の命も危ない」
「それに、また違う攻撃を仕掛けてくるかもしれない」
そのソフィーの考えを、他の巫女も感じ取っていたのか、一様に厳しい顔になっている。
由紀
「もう一度、強い結界を貼り直さないと、それでも厳しい」
華奈
「段違いすぎて、どうにもならない」
キャサリン
「私は、今回のような咄嗟な攻撃には光君に頼ってしまった、反省しています」
サラ
「やはり全然あなどれない相手、人の心のスキをついてくる」
春麗
「全方位から、細かな攻撃が来る戦いと思っていたけれど、今回のように、ものすごい一撃が来る、これでは全く気が抜けない」
そんな沈み込む巫女に春奈が声をかける。
「とにかく、光君の回復が先決・・・そのために」
とまで言って、春奈の顔は厳しくなった。
「薬師如来の秘法を光君に施します、全員協力願います」
その春奈の言葉で、全ての巫女が頷いている。