華奈の苦しみ、駅前の異変?
光は、大泣きになってしまった華奈の手をずっと、握っている。
そんな二人を見て、春奈は、いろいろ考える。
「光君、やはりやさしいよね」
「こんなたくさんの人の前で、大泣きになってしまった華奈ちゃんも子供って思うけれど、仕方ないかなあ」
「華奈ちゃんの心もわかる、確かに他の候補者巫女が、すごすぎて格差しかない、華奈ちゃんだって、光君のことを好きで好きで仕方なくて必死だけど」
「いつも空回りしてるいるし、意気ごみだけだしなあ、実力がなあ・・・」
ただ、そう考えても、春奈としては華奈を「応援する」ことはできない。
何よりも、華奈がもっと努力して、「光の心を獲得するならともかく」なのである。
それでも、年長のソフィーが光と華奈に声をかけた。
「じゃあ、帰ろうか、そろそろね」
そして華奈にささやく。
「大丈夫、華奈ちゃん、光君はずっと華奈ちゃんのことを忘れていない」
「むしろ、すっごく心配している」
光も、その言葉を聞きとったのか、笑っている。
さて、そんなハプニングが少しあったものの、光と巫女の一行は、帰宅の途についた。
その帰宅の途にあたっては、光の周囲は例にならって、由紀、キャサリン、サラ、春麗が固める状態。
春奈と華奈、ソフィーは一緒に固まって、周囲を見回しながら歩く。
華奈が春奈とソフィーに頭を下げた。
「何か、自分が情けなくて泣いちゃった、恥ずかしい」
春奈は、
「仕方ないさ、でも、光君が大丈夫って言ってくれたんでしょ?自信持っていいさ、落ち込んだ華奈ちゃんのほうが、光君はつらいと思うよ」
「それと、もっと努力して、華奈ちゃん自身が、自分を高める以外に道はないよ」
ソフィーも華奈に
「さっきも言ったけれど、光君は華奈ちゃんの気持ちもわかっている」
「でも、それと努力は別だよ、自分を高める努力とはね」
華奈も、それには頷くけれど、自信がない様子は変わらない。
「ほんとに努力しても努力しても・・・いつになったら・・・」
光に手を握ってもらっても、春奈とソフィーに背中を押されても、なかなか華奈の気持ちが上を向かない。
「実力か・・・見せかけじゃダメなんだよね・・・」
結局、華奈の顔はまた暗い。
そんな華奈を見て、春奈はまた考える。
「光君の候補者で、奈良の血が強く入っているのは、私と華奈ちゃんしかいない」
「私も候補者は譲れないけれど・・・歳がなあ・・・」
「せめて、二つか三つ上なら、有無を言わせずゲットしているんだけど」
ソフィーは、そんな春奈の心を読んだらしい。
「春奈さんも、そんなんでどうするの?」
「去年の夏からずっと光君の面倒を見てきたんでしょ?」
「それは私だって、候補者を降りる気持ちはないけれどね」
「こういうことは、一番大切なのは光君の気持ちだよ」
「だから・・・」
ソフィーの言葉は、突然、そこで止まった。
そして、光の声が巫女全員に響いた。
「ねえ、それは後回し!」
「そんなことより、駅前がすごいことになっている!」
「急ぐよ!」
光は、いきなり、猛スピードで走り出してしまった。
キャサリン、サラ、春麗も同じように猛スピード、由紀も必死に後を追う。
ソフィーが空を見上げると、天神アポロ、天使長ミカエルと天使軍団も出現、駅の方に向かっている。