校長の分析
外国人巫女三人と日本育ち巫女4人の険悪な雰囲気はともかく、始業式の時間は迫っている。
校長が口を開いた。
「そろそろ、始業式の時間なのですが」
やはり、校長の言葉も、この雰囲気では慎重になるしかないようだ。
その校長の言葉に光が反応した。
「わかりました、それでは、ホールに出向きます」
亀の光にしては珍しく、スッと立ち上がる。
逆にいつもは「光亀芋虫論」を主張する日本育ち巫女は、うなだれているせいか、少々立ち上がるのが遅れた。
すると、そんな日本育ち巫女を見やりながら、キャサリン、サラ、春麗がスッと立ち上がり、早速光を取り囲む。
キャサリン
「何があるかわかりません、しっかり警護いたします」
サラ
「余分な神経は使わず、全てお任せください」
春麗
「とにかく、ホール直前までは私たちが警護いたします」
光は「え?」という顔になるけれど、とても抜け出せないような囲まれ方になっている。
そして、やはり光らしい。
抜け出すことも、簡単に諦めた。
「じゃあ、途中まで一緒だね、時間も迫っているから、行こう」
何とも間延びした声を出して、歩きだしてしまう。
先手を取られてうなだれるだけの日本育ち巫女に、校長が声をかけた。
「つまりね、彼女たちは、光君の警護のために来ているのです」
「それが第一目的です」
「ですから、そこまでは納得してください」
それを言われた日本育ちの巫女は、ようやく顔を上にあげた。
そして、ブツブツ言い始める。
春奈「とにかく強すぎ、三人ともパワー満点、つけ入るスキがない」
由紀「私たちは呪力による警護だけど、彼女たちは呪力も最強、戦闘力も最強クラス・・・とても・・・」
華奈「私今の段階では全て格下だ、天照様の巫女って言っても、呪文間違えてばかりだし、戦闘なんて無理だもの」
ソフィーも頭を抱えた。
「いきなり、こうも実力差を見せつけられるとねえ・・・剣道日本一くらいじゃ、通用しない相手さ」
そんな、うなだれる日本育ち巫女に、校長が再び声をかけた。
「それとね、第二の目的と言いましょうか」
校長の目の光が強くなる。
その強くなった校長の目を見る日本育ち巫女たちに、校長は言葉を続けた。
「つまりね、彼女たちも、光君のお相手の有力候補です」
「その目的もあって来ているのですから」
一層、表情が変わった日本育ち巫女に、校長は解説した。
「彼女たち、つまり、あるお方の依頼に基づいて、彼女たちを送り出した霊界の各グループも、強い跡継ぎが欲しいんです」
「キャサリンはケルト神のグループ」
「サラはギリシャ、地中海の神々のグループ」
「春麗は、中国の神々のグループ」
「その彼らのグループにとって、跡継ぎの血の中に、阿修羅の力を使える光君の遺伝子が加わるとなれば、ますます、そのグループの力は強大なものとなる」
「逆に、別のグループに取られてしまうならば、相対的に自分たちのグループの力は低下する」
校長は、ここで一息をついた。
「ですから、ここで、あなた方日本育ちの巫女様たちに、強い言葉を放ったのも、自分たちに有利に光君獲得レースを運びたいがため」
ソフィーが口を開いた。
「ほぼ、校長先生のおっしゃる通り・・・でも・・・ねえ・・・」
ソフィーはそこまで言って春奈の顔を見る。
春奈は「うん」と頷いた。
ソフィーの言いたいことがわかったようだ。