年増巫女のライバル巫女の分析 光の大説教の密談
光が校長室を出ると、その瞬間に、由紀、キャサリン、サラ、春麗に周囲を固められてしまった。
ソフィーは
「むむ・・・絶対立ち聞きしていたな、こいつら」
と思うけれど、すでに光と「護衛集団」は、音楽室に歩きはじめてしまっている。
そして、またしても、出遅れた華奈が、その後ろを文句タラタラ顔で下を向いて歩いていく「いつもの風景」となっている。
そんな落胆ソフィーの肩を、春奈がポンと叩く。
「まあ、可哀そうねえ、光君も少しずつ強くなってきたのかなあ」
「いつもお利口さんのソフィーを手玉に取るなんてねえ」
「ふふ・・・そうやって段々とね・・・」
ソフィーは、そんな春奈にムッとした。
「春奈さん、その段々とって、その次の言葉は何?」
「いいですか?少なくとも、春奈さんよりは私の方が若いんですから」
「そうやって、年増グループに引っ張り込もうとしないでください」
ただ、春奈もさるもの、ソフィーの反発にはまるで動じない。
「そう?女はね、年増がいい場合もあるの」
「特に光君みたいな、ボンヤリ無神経タイプを、しっかりやさしく包み込むような安定感」
「それにさ、そういうキャラを持っているとわかるのは、私とルシェールくらい」
ソフィーも、それには同意した。
そして、各候補者巫女の分析を始めた。
「うーん、由紀ちゃんは、しっかりタイプだけど、同い年、包み込むって感じはないね、あくまでも協力者タイプ」
「キャサリンは、キレキレの完璧タイプ」
「サラは、どっしり系だけど、まだ個性を隠している」
「春麗は、あくまでも超優秀な美少女、自分の魅力で光君をゲットするタイプ」
「由香利ちゃんは、どちらかというとお姉さまタイプ、光君はいつも委縮するから、包み込むって感じとは異なる」
と、分析をして、春奈の顔を見た。
「で、華奈ちゃんは?」
春奈は、そこでプッと笑う。
「・・・可愛いけどさ」
ソフィーも、笑ってしまった。
「そうだねえ、可愛いんだけどねえ・・・」
春奈
「足手まといにならなければいいけど」
ソフィー
「うーん、春麗は買っているみたいだけど、何故かなあ」
春奈
「まあ、いいや、もう少し様子を見よう」
ソフィー
「それはそうなんだけどねえ・・・」
実に可哀そうな分析をされる華奈であるけれど、そこでライバル巫女の分析は終わった。
ところで、ソフィーは、少し思い出したことがあったらしい。
そして、春奈の顔を見て真面目顔になった。
「ねえ、春奈さん、今日の夜、光君に大説教したいんだけど、ちょっと貸して」
春奈は、途端に嫌そうな顔。
「えーーー?マジ?本当にやるの?」
「いいじゃない、今夜じゃなくても」
「今夜は、どうせ第九を振って疲れたって、すぐに寝ちゃうよ、あの子」
「それに、夕飯は春麗の中華でしょ、食べるのが精いっぱい、きっとすぐに眠そうな顔する、それを起こしておくのが超面倒」
ただ、ソフィーは引かない。
「だめです、これは日本政府の光君警護のための大説教です」
「今日の高村みたいなアホ官僚を呼び込まないように、キツクキツク説教しなければならないんです」
春奈は、ため息をついた。
「わかった、それじゃあ、貸してあげる」
しかし、条件をつけた。
「私の部屋で、私も同席する」
そしてニヤリと笑う。
「だって私は学園の教師としてね、付き添いの義務があるんだもん」
ソフィーは「はぁ・・・このお姉さんも・・・絶対光君を離そうとしない」と、またため息をつくことになった。
ただ、後になって、「春奈の部屋での付き添い説教」は大きな問題に発展することになる。