元官僚の後始末と対策 光の金銭感覚?
光と校長に、相当の侮辱と恫喝を繰り返した元官僚の高村は、ソフィーが連れてきた警察官により連行されていった。
ソフィーは難しい顔。
「とにかく余罪も多そうだし、彼との内通者とか黒幕も探らなければならない」
校長も、同じく難しい顔。
「国内最高学府を卒業し、難関の国家試験に合格したことを鼻にかけ、普通の国民をゴミとしか考えていない」
「しかし、それにしても、この学園にまで押しかけてくるとは」
ただ、光はそれほど難しい顔ではない。
「一人でも、そういう輩を捕まえれば、後は芋づる式に調べ上げればいい」
「あの程度の頭デッカチだけの人間、大した犯行能力はないし、単独犯は難しい、かならず協力者がいるはず」
ソフィーは、そんな光の顔をじっと見た。
「ねえ、光君、実はおびき寄せたの?」
すると校長も、含み笑い。
「ああ、そうかもしれないね、そうでなければ、なかなか学園にも入ってこれない、何しろこの学園の結界は強化してある」
光も、少し笑った。
「はい、彼にも内通者がいるだろうし、僕にも内通者がいるんです」
「つまり彼の官僚の現役時代から、見張っている人が教えてくれたんです」
その光の言葉は、そこで止まった。
ソフィーは光の予想外の言葉にムッとしているけれど、その光は何か動きたそうな雰囲気になっている。
ソフィーが光に声をかけた。
「ねえ、光君、もしかして練習?」
光も素直に答える。
「うん、第九の初見練習で、通しでやりたいから」
今までの深刻な分析とは、全く異なった話題へと変化した。
校長は、そこでニッコリ。
「じゃあ、私も聞きに行くとしよう」
光は、その校長の言葉で、スンナリと立ち上がる。
ただ、ソフィーが少し不満顔。
ついつい、光に文句を言う。
「全く、ひどいなあ、私はこれから政府に戻って、あの高村の尋問とか調査とかするんだよ、それと光君の内通者もしっかり私にも教えなさい、実は秘密主義?」
「それと、そんな状態なのに光君が若い女の子に囲まれて第九の練習?」
「ほんと、腹が立つ、光君の言動は許しがたい・・・」
ブツブツ言い続けるソフィーであるけれど、光の次の言葉が、またひどかった。
光は、いつものハンナリ顔に戻っている。
「だって、ソフィーはさ、仕事でしょ?国からお給料をもらっているっていうかさ、国民の税金で生活しているんでしょ?」
「僕の内通者ぐらいは、見当がつかないの?言わないとわからない?」
「観音力のソフィーなんだよ?何を怠けているの?」
「それに、僕はここの学園の指揮者だしさ、指揮者が練習するのも当たり前なの」
「それに若い女の子って言ったってさ、高校生だもの、ソフィーより若いのは当たり前に決まっているじゃない」
この光の言葉には、校長も頭を抱えた。
「まず、間違ったことは言っていないけれど」
「デリカシーが、全くない」
「まだまだ、光君のお嫁さん候補をあきらめていないソフィーに対して、無慈悲な言葉を連発している」
ソフィーは、ますますムッとした顔。
「そういうこと言うんだったら、家に帰ってから、たっぷりお説教する」
「いい?しょうがないから、オーケストラの指揮だけは認めてあげる」
「でもね、光君だって、首相から任命された特別調査官なの、だから手当も振り込まれている、実は特別公務員なんだよ」
「それをわかって、そういうことを言うの?」
「だいたい、口座残高とか取引って見たことないの?」
つまり、ソフィーは光だって、国から手当てをもらっている、それを自覚しなさいと言う。
すると光は、またしてもソフィーに反論。
「えーーー?そんな説明覚えてないし、そんな口座とか、作った時は銀行に行ったけれど見ることなんてないって、銀行のカードも通帳も金庫にしまいっぱなし」「それでも、お父さんが僕の口座に振り込んでくるから、生活費をカードで出金しているだけ、そもそも僕の口座は子供のころに作った郵便貯金だよ」
校長は、プッと笑い出し、ソフィーはあきらめ顔になっている。