光を突然訪問した官僚
光は、一人で校長室に向かった。
とにかく呼ばれているのは自分だけ、一人で向かうしかない。
ただ、不安は何も感じない。
何しろ、この学園の校長は、世界でも有数のエクソシスト。
そう簡単には、悪意を抱いた人間などが、学園内に入ることは難しい。
そんな思いで、光は校長室のドアをノック、すると校長が自らドアを開けてくれた。
そして、校長室に入った光が目にした「お客様」は、見たことのない紳士。
年齢から言えば、三十代から四十代だろうか、やせ型で身長が高い。
何より、目付きが鋭いものがある。
光が、その紳士に「光です」と、頭を下げると、その紳士も「高村と申します」と、名刺を差し出しながら、頭を下げてきた。
光が差し出された名刺を読むと、「内閣情報調査室」とある。
校長に促されて、光と、その「内閣情報調査室の高村」がソファに座ると、まず校長が経緯を話し始めた。
「ああ、光君、突然のことですまない」
「今から20分くらい前に、この高村さんから、連絡があってね、どうしても光君と面会をしたいということだったので」
校長が、そこまで話すと、その高村は、また光に頭を下げた。
ただ、光としては、話があまりにも突然、少し首を傾げている。
すると、高村も光の表情を読んだのか、話し始めた。
「確かに光君の感じる通り、突然のことと、この私でも思う」
「ただ、この私としても、緊急に光君に面談する必要があった、それを理解してほしい」
かなり厳しめの口調、少々高圧的な態度も感じる。
光も口を開いた。
「突然とか、緊急面談の必要は、あなた方の都合ですね」
「それと、もう少し具体的な内容を教えていただかないと、どうにもならないので」
そう言いながら、光は目を輝かせている。
そして、光の口調と表情が少しずつ厳しくなる。
高村は、その光に、また厳しめの口調。
「公安のソフィー調査官に対して、光君が何か指示をしたようだけど、それは事実なのかね」
「確かに君が、首相直属の命を受けた特別調査官であり、過去にも様々な功績があることは、我々も把握している」
「しかし、君が指示したのは、セキュリティ対策の強化とか、警戒指示、交通機関とか病院とか、生活に直結するシステム、物流系、各マスコミ対策」
「それを受けて、ソフィー調査官が動いているようだ」
「しかし、こちらでも、日々そんな仕事をしているのだから、改めて動かれると、かなり混乱が発生してしまうんだ」
「君は、首相直属の調査官とはいえ、我々のような政府機関の職員と相談もせずに、頭越しにそんなことを言って、無礼極まるのではないか?」
「君は学生の身分、その本分を忘れているのではないか?」
とにかく高村の口調は厳しく、まるで光を責めているような内容。
光の表情は、ますます厳しくなった。
また、その目を恐ろしいほどに光らせる。
そして、その「内閣情報調査室の高村」の名刺を手に取り、
「そうですか、僕が越権行為と言うならば、それについては申し訳ありません」
「感じたことを言っただけなので、子供の戯れ言とお受け取りください」
「ただ、ソフィー調査官も、僕の言葉を良しとして動いているのです」
光は、そこで一旦、間を置いた。
そして、高村の目を見つめ、とんでもないことを、言い始めた。
「ところで、高村さんは、本当に政府の人なんですか?」
「僕には、どうも信じられなくてね」
光は、そこまで言って、首を捻っている。
校長も、光から「内閣情報調査室の高村」の名刺を受け取った。
そして、校長も、その首を傾げ
「私も、どうにも、信じがたくなってきましたねえ」
「あなたの突然の連絡と訪問、光君への態度、話の内容」
校長は、厳しく高村の目を見据えている。