中華粥と、光のマトモなお米の値段の話
翌朝になった。
光の家のキッチンでは、今日は春麗が主役、中華粥の朝食を作っている。
日本のお粥はお湯で炊くため薄味が一般的となるけれど、中華粥では、鶏ガラでごはんを煮詰めていくので、お粥自体にちゃんと味とコクがついているのが特徴。
今日も他の巫女たちも協力して、興味深そうに料理に加わり、食べている。
春奈
「すっごい本格的だなあ、出汁からして、深みが違う」
ソフィー
「生姜を入れるから、体の芯から温めるね、寒い時期とか、夏バテの時期にもいいね」
ルシェール
「付け合わせもいろいろ、煮卵、ザーサイ、高菜の炒め物、中華のパン、塩タラ」
由香利
「中華のパンがいいなあ、この油と塩味が絶妙」
由紀
「塩タラも、中華粥に入れると、またゴマ油で風味が違う」
キャサリン
「そもそも、お米の味がやさしいし、口に入りやすい」
サラ
「さすが世界三大料理ですねえ、食べ飽きない味」
華奈も真面目に朝から春麗を手伝い、中華粥を食べている。
「昨日のキャサリンといい、今日の春麗といい、教えられることばかり、今までは春奈さんの作ってくれた朝ごはんを食べるだけだったけれど、この方が勉強になるなあ」
と、珍しく殊勝な顔になっている。
さて光も、いつものようにボンヤリ顔ではあるけれど中華粥を口に運んでいる。
「すごくドッシリとした中華粥だね、でも、消化にはいいのかなあ」
と普通の感想。
そんな光に、今日の料理の主役、春麗が声をかけた。
「光君、喜んでくれてありがとう!」
「昨日の光君、戦闘の後で疲れていたみたいだから、そうしたの」
光も、春麗に素直にお礼。
「ありがとう、春麗、すごく食べやすい、食べるごとに身体が温かくなってくる」
そしてまた、中華粥を食べている。
春奈は、その光の姿を見て、様々思うことがある。
「夏頃、私が中華粥を作った時も、光君は食が進んだ」
「お父さんとお母さんと、横浜中華街で食べた思い出も話してくれた」
「もちろん、今日の中華粥は、中国人の春麗が作ったのだから、味のレベルが違うのは認める、出汁も私の時は即席だったからなあ・・・」
少々、仕方ないけれど、悔しい気持ちもある。
光は、中華粥を食べながら、また話をする。
「こういう中華粥も好き、お米を煮て食べるのは、もともと好き」
「昔の日本人は、こういう食べ方のほうが多かったって話も聞いたことがあるよ、炊いたご飯をそのままではなくて、リゾットみたいにして食べる」
「歴史の本で読んだことがあるけれど、その食べかたをするから、新米よりは古米のほうが値段が高かったって」
光が、そこまで言って、また中華粥を食べだすけれど、他の巫女は意味が分からない様子。
つまり「何故、古米のほうが、新米よりも値段が高いのか」で、首を傾げている。
春奈が代表して、光に尋ねた。
「ねえ、その古米のほうが新米より高いって意味がわからないんだけど」
他の巫女も、真顔で光を見ている。
光は、「え?」という顔になったけれど、
「ああ、古米のほうが水分が抜けているでしょ?だから同じ重さでも、古米のほうが米の量が多い、リゾットにする食べ方なら、そのほうが経済的、2割から3割違ったらしい、重さと値段もね」
光にしては、珍しくマトモな話をしているようだ。