江戸の大親分からの招待メール
ずっと黙っていたソフィーが由香利に声をかけた。
「由香利さん、つまり?」
ただ、由香利に声をかけながら、ソフィーは少し笑っている。
由香利も、少し恥ずかしそうな顔。
「はい、その筋の稼業なので」
すると突然、華奈が反応。
「え・・・その筋って・・・もしかして」
その大きな目をパチクリとしている。
ソフィーは、そんな華奈が面白い。
「つまりさ、見ただけでわかる、江戸の大親分って感じのお方」
「何しろ、貫禄たっぷり、頼りがいがあるお方」
「でもね、犯罪行為は、何一つ無し」
「公安への協力も多いし、私たちも任せていることも多い」
春奈は、面白そうな顔になった。
「そうかあ、光君とはぜんぜん違うタイプかあ・・・」
「その大親分に光君を仕込んでもらってもいいかなあ」
由紀も春奈の意見に同感のようだ。
「その通り、もう少し体力と気力をつけないと、少くとも授業中のお昼寝は恥ずかしい、その訓練も」
とまで言うけれど、他の巫女の視線がおかしい。
ルシェールに少し突かれた。
「下手をすると、光君が大親分絡みで、由香利さんに拉致される」
華奈も真顔になった。
「うん、光さんは由香利さんにメチャ弱い、料理と舟遊びだけにしようよ」
キャサリン、サラ、春麗も同じ意見のようだ。
結局、春奈も「それ以上」は言えなかった。
そして感じたことは、「巫女たちは競い合うように、本当に光君をガッチリガードしている、これじゃあ光君も窮屈かな」
そう思って光を見ると、光は少し顔に疲れが見えている。
光は、由香利に声をかけた。
「じゃあ、だいたい、みんなの意見もまとまったので、後は具体的な日程とかを教えてください」
光にしては、まともな言い方になった。
さすがに「あこがれの由香利さん」、神経を使うようだ。
由香利も、その場で父親でもある「江戸の大親分」にメールを打っている。
返信もすぐに来た。
そして、読み上げようとするけれど、顔が赤い。
それでも、由香利は顔を赤らめて、メールを読みはじめた。
「本日は、築地市場の混乱と危険を、始末していただき誠に感謝申し上げます」
「本来であるならば、この築地、日本橋一帯に責任を持つ我が一家が、始末するべき所でありましたが、誠に危険極まりない相手、あのまま戦闘が始まったならば、カタギの皆様に多大なご迷惑をかけてしまいます、また築地の市場とて、決して無事には済みません」
「そのような折、光様と巫女様から、大変なご理解とご尽力を賜り、誠に持って無事何もなく、悪漢どもの退治をしていただきました」
「本当に感謝してもしきれるものではございません」
「さて、本当に些細なことになると思いますが、この築地市場をあげて、光様たちに、御礼を申し上げる場を設けさせていただきたいのです」
「具体的な日時などは、光様たちの御都合で結構でございます」
「それから、何分、交通事情等、心配もございますので、全て当方で、お迎えとお送りをさせていただきます」
「それでは、是非、光様からの、ご都合の良い日時のご連絡をお待ちしております」
ようやく読み上げた由香利は、「ふう・・・昔気質で、文が長いし、メチャ固い」
とため息をつく。
また、ずっと聞いていた巫女たちも、「はぁ・・・」と、肩こりの雰囲気を醸し出す。
ただ、光は、ウンウンと頷いて
「ああ、こういう文って好きだよ、無骨だけど丁寧、僕も大旦那にすごくお逢いしたくなった、楽しみです」
「それから予定は、来週の日曜日とお願いします」
由香利は、それを、さっそくメールを打ち、またすぐに「了解しました」のメールが来たので、それを光に見せている。