冷静な春奈と、やはり華奈は・・・
春奈が、光の部屋に入ってきた。
光がルシェールに抱きかかえられる様子を見て、少し表情が変わったけれど、それでも、ルシェールと光の会話を聞き取っていたらしい。
ルシェールにまず、声をかけた。
「ルシェール、ありがとう、どう?光君の身体、まだ冷たい?」
ルシェールも涙ながらに春奈に応えた。
「うん、かなり冷たかった、春奈さんも呼ぼうと思ったけれど、そんな余裕がなかった、抜け駆けという意味じゃないよ」
春奈も、それは理解したようだ。
「うん、まだ真っ青だね、光君も無理をするからっていうか、阿修羅に無理をさせられたんだ」
ルシェールは、光の背中をトントンと叩いた。
光も、ゆっくりとルシェールから身体を離す。
光は、春奈の顔も見えて、どうしていいのか、わからない状態。
そんな光に春奈が声をかける。
「いいよ、光君、気にしないでいい」
「とにかく、辛かった光君が、その時点で、ルシェールを選んだの」
「私も、ルシェールだったら、安心できるもの」
「それは少しは悔しいけれど」と言いかけて春奈は黙った。
やはり、春奈としても26歳、今年18歳になる光とは、「厳然たる年齢差」を否定できない。
それにルシェールは、「癒し」の能力については、さすがに聖母マリアの巫女、相当に高いランクの能力を持つ。
クリスマスの時に瀕死の光を救ったのも、ルシェールの「愛の妙薬」。
それが失敗していれば、光の現在もなく、世界だってどうなったのか、わからない。
「まあ、残念だけど・・・」
春奈は、ここで話題を変えた。
そして光に
「そろそろキャサリンのカリフォルニア料理ができるよ」
「食べられるだけでいいからさ、せっかくみんなが協力して作ったから」
と、食事をするように促した。
光は、素直に頷いた。
「そうだね、人の期待には、答えようと思う」
「食べられるだけ、食べるよ」
少し、よろけながら、立ち上がった。
それを春奈がサッと支える。
ルシェールは、そこで苦笑。
春奈に声をかける。
「ねえ、春奈さん、癒し系の私たちが、二人がかりだね、光君のお世話って」
春奈も、そこで笑ってしまった。
「そうだよね、ほんと、世話が焼ける」
「こんなのがずっと続くのかも知れない」
さて、そんな状態で階段を三人で降りはじめると、華奈が血相を変えて階段の下に来た。
そして、いつもの大声三連発。
「こらーーー!光さんって弱すぎ!」
「ルシェールも春奈さんも甘やかしすぎ!抱きしめればいいってものじゃないの!」
「ただ眠かっただけでしょ!この寝ぼけ光さん!」
これで、春奈は
「この子、全くわかっていない、お嫁さんなんて絶対無理」
ルシェール
「お母さんに連絡して引取りに来てもらおう」
他の巫女たちも、ほぼ同様。
まさに「呆れしかない顔」で、華奈を見つめている。