巫女たちのカリフォルニア料理とルシェールの不安
誰が見ても、光の疲れ顔は、ひどかった。
「これは寝かせるしかない、どうにもならない」
ということで、とりあえず起きるまで、腕を組んでいるルシェールが見守ることになった。
華奈が、少し文句顔を見せたけれど、キャサリンから、さわやかな笑顔で
「華奈ちゃんも、料理手伝ってくれる?チーズを切って欲しいの」
と言われたので、なかなか反発も出来ないようす、結局キャサリンの指示通りに、動いている。
さて、そのキャサリンがメインで作るカリフォルニアスタイルの料理は
「ホワイトアスパラガスとアボガド、スモークサーモンのサラダ」
「マグロと温野菜の盛り合わせ」
「仔羊肉のラケ アリッサとクミンのクスクス添え」
「カマンベールチーズ、チェダーチーズなどチーズの盛り合わせ」
「チキンコンソメ スターアニス風味」
キャサリンが、一応説明する。
「ホワイトアスパラガスとアボガド、スモークサーモンのサラダは、大皿にお願いします、ソースはフレンチソースでもオニオンソースでも食べる人が選べるように」
「マグロと温野菜の盛り合わせも、これも大皿で、ソースはわさびソースとしましょう」
「仔羊のラケは、つまり付け焼きです。これは銘々皿でお願いします。尚、アリッサは北アフリカチュニジア発祥の調味料です、わかりやすく説明しますと、北アフリカの豆板醤のようなもの、クスクスにはクミンとともに定番です」
「チーズの盛り合わせについては、説明はいらないと思いますが、これは大皿で、カマンベール、チェダー、スモーク、パルミジャーノレッジャーノを盛り付けてください」
「スープについては定番ですが、スターアニスでアクセントを加えます」
まさにキャサリンらしく「キチンとした物言い」。
光を見守るルシェール以外が、全員調理に参加、キビキビと動き出す。
春奈も意外そうな顔。
「カリフォルニア料理って特別知らなかったけれど、案外素材を活かすんだ」
由香利も、面白そうな顔。
「へえ、フレンチとイタリアンの技法もあるしね、それと北アフリカ・・・面白い」
由紀も感心した。
「そうか、わさびソースも使うんだ、美味しいものは何でも取り入れるんだね」
ソフィーは目を丸くした。
「ふむ、ここでクスクスかあ・・・アリッサもピリ辛で美味しい」
華奈も、懸命にチーズを切る。
「つまみ食いしたいけれど、出来る雰囲気でもない、でもチーズ切り係で良かった、あまり調理そのものには関係ない」
サラも、フンフンとうなずきながら調理に参加。
「仔羊の焼き方とか、クスクスとかは任せて、地中海にもあるから」
どうやら肉の焼き方とクスクスには自信があるらしい。
春麗は、キャサリンの配慮に感心した。
「そうかあ、一応出身のアメリカを示しながら、日本人に馴染みがあるわさびソースを使い、サラにも配慮して仔羊料理、クスクスとアリッサか・・・」
「ルシェールにも配慮して、フレンチソースとか、チーズ盛り合わせ」
「スターアニスはつまり八角、中華でも相当使う、これは私にも配慮か」
そんな状態で、料理参加の巫女たちは、結局和気あいあいと料理を仕上げてしまった。
さて、ルシェールも途中から、様々な香辛料の香りが漂っていたので、実は料理に参加したかったようだ。
しかし、自分の目の前で、眠る光は、なかなか起きる気配もない。
「全く・・・私も何か作りたかったのに・・・しょうがないなあ」
「イマイチ、体力不足は否定できない」
「少しでも阿修羅になると、その後、こうなってしまう」
「こんな状態で、混沌系の悪神に対抗できるのかなあ」
ルシェールは、不安が強くなってきている。