危険集団の築地テロ計画
さて、築地本願寺に結果的に「誘導」されてしまった、筋骨隆々系の男たちには、やはり、そのリーダー格の男がいるようだ。
そしてしきりに首を傾げる。
「何故・・・ここに来た・・・」
「築地の市場内で騒乱を発生、その後日本政府に資金提供を求める警告を行う手はずだった」
「諸外国の空港では入れない我々を簡単に通過させた成田空港」
「そして少々の改造車両では検問がない日本の警察では、簡単に築地市場の駐車場でも車を置くことができた」
「本当に手ぬるい日本のテロ警備、ここまでは全く順調だった」
「後は、毒付きナイフの男を数人暴れさせて、その後は拳銃と化学兵器攻撃を仕掛けるだけだったのに」
そのしきりに首を傾げるリーダー格の男に、おそらく直属の子分らしい男が話しかける。
「リーダー!いったい、何だってこうなったんですか!」
「妙なアジア音楽が流れたら、全く足が操られ、違う動きが出来ない」
「少しでも立ち止まろうとすると、足が切られるように痛い」
「だから、足が動く方向に歩くしかなかった」
ただ、子分から、そんなことを聞かれたリーダー格の男も、全く理由がわからない。
そして、懸命に次の作戦を考える。
「ああ、俺にもわからん、ただ、こうなったら、この場所で何か騒動を起こすしか方法はない」
「よく見れば、ここの場所も、何か大きな寺院のようだ」
「日本国内であるから、おそらくは仏教寺院、まあ、おれたちには関係がないけれど」
と、築地本願寺の建物を見る。
子分が、再びリーダーに相談。
「しかし、リーダー、騒動と言っても、ここでどうやって?」
「ここにいるのは、俺たちの仲間だけだ」
「仲間たちで切り合いも打ち合いも出来ないでしょう」
「ましてや、化学兵器など使ったら、全滅、まさに自滅となります」
さすがに元グリーンベレー系なのか、子分としても、冷静な分析をする。
その子分の分析を受けて、リーダー格の男は、再び周囲を分析、そして次の指令を出した。
「まずは、この寺院に時限の化学爆弾を設置する」
「爆発すれば、半径5キロ範囲は、死滅する」
「設置終了後、全員、この寺院から退去する」
「何しろ、戦闘行為がここで不可能な以上、この方法がもっとも効果が高い」
「いいか!即時だ!」
リーダー格の男の指令に基づき、即時に、数人の「爆弾班」らしき男が寺院建物に向かって走っていく。
「化学爆弾」の設置は、数分で終了した。
そしてリーダー格の男が、今度は駐車場内の全員に大声で指令。
「ここから、退去する」
「残念ながら、築地市場でのテロは失敗となった」
「理由は不明」
「しかし、次善の策として、ここの寺院に化学爆弾をしかけた」
「この爆弾設置の動画を官邸に送付する」
「それだけでも、築地市場テロにも負けない効果が発生する」
リーダー格の男は、やっとここで自信を取り戻した。
その顔は、首を傾げていた時のような、混乱は消えている。
リーダー格の男が大きく息を吸った。
「それでは、全員退却!」
と、言いかけた時である。
通りを見ていた子分の男がリーダー格の男に、ニヤッと笑いながら報告。
「リーダー!ガキみたいな男子高校生と女子高校生が三人、門から入ってきます・・・これは、好都合ではないですか?」
リーダー格の男も、子分の笑いの意味がわかった。
「そうか・・・人質か・・・これは面白い」
リーダー格の男は、含み笑いをしている。