戦闘場所は築地本願寺?
その異変には、店主も気がついた。
「・・・こんな音楽など、この築地では流したことがない」
「宮中の音楽?いや・・・どこかの神社とか・・・神楽か?」
すると、更なる異変が発生した。
店員の目が丸くなった。
「店主!男たちが、突然、歩き出しました!」
「もう、この店の肉には見向きもしません」
店主も驚いた。
「ああ、ナイフは胸にしまったようだ、拳銃もだ」
「それより、どこに向かう?」
「そもそも外国人が、神楽みたいなのを聞いて、何故歩き出す?」
しかし、店員と店主がそのように驚いても、筋骨隆々系の男たちの動きは止まらない。
そして全員が一列に、一定方向に進んでいく。
ようやく通路が歩けるようになったので、店員と店主は店を出て、通路に出た。
筋骨隆々系の男たちの様子が気になっていたのか、他の店からも店員や店主たちが、飛び出してきた。
口々に、いろいろなことを言っている。
「何だ?あいつらは・・・肉屋の前で、変な目付きで」
「ナイフやら拳銃とか持ち出していたな」
「やたらに膨らんでいたジャケットを着ていた男もいたぞ、今はもう春なのに」
「聞き慣れない音楽?ああ、神楽みたいなのが流れたら、突然歩き出した」
呆れてみている肉屋の店主に、築地市場の一番外側の店から連絡が入った。
「今、あいつらは、市場を出ていった」
「一斉に歩いて・・・あの方向は・・・築地本願寺かな」
「あ!先頭の男が本願寺に入った!」
「続いて、残りの連中もゾロゾロ入っていく」
肉屋の店主は、そこでまた唸った。
「いったい・・・何が目的だったのか・・・それでも、この肉屋と築地の市場は無事・・・となると・・・あの神楽が?」
その疑問は、肉屋の店主だけではない、不安に感じていた店や大勢の買い物客も、同じように首を傾げている。
築地市場のその動きは、光たちの乗ったソフィーの車のモニターに、即時映されていた。
ソフィー
「ああ、築地市場の防犯カメラの動画を、ここで見られるようにした」
阿修羅に変化した光が頷くと、由香利から連絡が入った。
由香利
「退魔の神楽を流した、悪意、悪念を持った輩を一定の方角に退去させる呪法神楽だよ」
阿修羅は由香利に答えた。
「さすが、伊勢の大神の古来の呪法」
「あれが流れれば抵抗は、悪神とて無理」
「動かざるおえない、止まった時点で身体も霊も破却される」
キャサリンが目を輝かせて、由香利に話しかける。
「さすがです、これで、思いっきり戦えます」
サラの目が光った。
「とにかく全員が築地本願寺に入った時点で戦闘開始です」
春麗も、その目を輝かせる。
「うふ・・・ウズウズする!コテンパンにしたい!」
ただ、阿修羅だけは、まだ慎重。
ソフィーに声をかけた。
「ソフィー、爆弾発見ということで、周囲の住民避難を頼めないか」
「万が一ということもある」
ソフィーも真顔。
さっそく、公安庁に連絡を取っている。