春奈の不安と涙
全員が揃っての朝食が終わり、登校することになった。
そして、昨日の始業式以来の「定番」となってしまったようで、光が玄関を出ると、キャサリン、サラ、春麗、そして由紀が、光の周囲をガチッと固める。
どうしても入り込めない華奈は、落胆しきり。
「無理、すっごい実力差がある」
登校する場所が違う、既に大学生の由香利は
「卒業したのが残念」と言いながら、光にサッと「お弁当」を渡している。
おそらく、自分の部屋で作ったのだろうか。
それを見た、同じく大学生のルシェールは、焦った。
「やばい・・・私、またオットリとして考えもしなかった」
焦りついでに、由香利に「明日は私が作ります」などと、申し入れまでしている。
ソフィーは
「まあ、お弁当争いもあるんだ、これはこれは・・・」
と呆れる。
ただ、春奈は、それ以外のことで、落胆していた。
「まあね、お弁当は、光君に群がる女子高生たちが、どうしても作るって言ったから任せていたけどさ」
「でも何?光君が、朝ごはん二杯ってどういうこと?」
「確かにキャサリンの朝ごはんは美味しかったよ」
「でもさ、それじゃあ、今まで作ってきた私の立場って何?」
「日本人が和食で、アメリカ人に負けるってこと?」
「それにさ、光君に文句を言いたくてもさ、戦闘系の巫女と由紀ちゃんに囲まれちゃって、手も足も出ないって・・・」
「ああ・・・悔しいよ・・・なんか哀しくなってきた」
そんなことを思って、春奈が下を向き、トボトボと歩いていると、春奈の耳にキャサリンの声、おそらくテレパシーが飛び込んできた。
「春奈さん、そんなガッカリしないでください」
「今までの春奈さんの料理は、おそらく関西系、奈良の味付け」
「私が作ったのは、関東系、江戸の味付けです」
「参考にしたのは、光君のお母さんのレシピです」
春奈は、ここでもキャサリンに驚いた。
「本当に、完璧に読んでいる・・・容姿、料理に加えて気遣いもいいなあ」
そして、いろいろ考える。
「そうだね、光君は、奈良料理よりも、江戸前料理で育ってきたんだ」
「私も、朝忙しくて、つい関西風に作っちゃったな」
「昔、母さんに言われたけど、それを活かしていなかった」
「光君も、そうなると私の朝ごはんに満足していなかったのかな」
「朝ごはん二回の華奈ちゃんだって、江戸風の味付けだったら、違ったかもしれない」
また、不安も芽生えてきた。
「もしキャサリンだけじゃなくて、サラとか春麗も料理名人だったら、どうしよう」
「由紀さんも、由香利さんも、上手なはず」
「ソフィーだって、鎌倉魚料理の達人ニケの娘」
「華奈ちゃんはともかく・・・」
「光君に、春奈さんは、お役御免なんて言われたら・・・どうしよう」
そこまで考えて、春奈は涙ぐんでいる。