由紀VS華奈
さて、担任の指示もあるので、光と由紀は、校長室に出向くことになった。
そして、二人して廊下を歩いていると、後ろからパタパタ走ってくる音がする。
光も由紀も、振り向かないでもわかる。
光
「おそらく華奈ちゃんだ、あの足音のリズム」
由紀
「高校2年生になっても、廊下を走ってはいけないということを理解していない」
光
「でも、そういうところが、華奈ちゃんの可愛いところさ」
光がそんなことをいうので、由紀は焦った。
「何、どうして華奈ちゃんの肩を持つの?マジ、気に入らない」
ただ、光の次の言葉には、由紀も納得した。
「華奈ちゃんが、すごくお嬢さんみたいになった時があるけれど、違和感があった、華奈ちゃんは天真爛漫がいい」
由紀も、
「そうだね、お嬢様って感じはないね、お嬢様キャラは・・・ルシェールだよね、ちょっと悔しいけど、思い出しちゃった」
ついつい、超強敵ルシェールを思い出し、悔しい思いも思い出してしまった。
そんな光と由紀に、華奈はついに追いついた。
そして、いつもの通りの「いきなり文句」
「何ですか?光さん!可愛いと言ってみたり、お嬢さんが似合わないとか!」
「由紀さんもヒドイです!私だって・・・いつかはルシェールみたいに・・・」
と言いかけるけれど、由紀にすぐに切り返される。
「華奈ちゃん、どうしてここにいるの?」
「華奈ちゃんも、表彰式に出るの?」
「華奈ちゃんって、音楽コンクールで賞を取ったとか、何か実績あるの?」
・・・華奈にとっては、まさにグウの音も出ない切り返しのはずである。
由紀としては「勝った!」と思ったけれど、そのわりには華奈の表情が変わらない。
華奈は
「あのね、光さんも由紀さんも、表彰式の話で、校長室に呼ばれているんでしょ?」
「私もそうなの、担任に聞いたら、私が記念品を渡す係なんだって」
とまで言って、フフンと胸を張る。
光は
「へえ・・・」
といった感じで、全く無関心だけど、由紀は「え?」と言う顔になった。
「それマジ?そうなると賞状みたいなのは、おそらく光君だよね」
「そうなると、記念品は私?」
「えーーーーー?マジ?私、華奈ちゃんから記念品をもらうの?」
と、由紀も文句顔に変化した。
由紀のその言葉を聞いて、華奈はハッとした顔になった。
「えーーー?それって考えてなかった・・・」
「そうかーーーそうなるよね、光さんって体力ないから、軽い賞状になるんだ」
「あらーーー、やっぱり教室戻りたくなった、私が由紀さんに記念品渡してもしょうがないって、やはり妻から夫じゃないとさーーー」
そして、やはり出てくる言葉は「華奈の心の中限りの妻」になる。
ただ、そんな由紀と華奈の「記念品渡しバトル」もそこまでだった。
光は、由紀と華奈をさておき、スタスタと廊下を歩いていってしまうし、その先に見える校長室の前には、ソフィーと春奈が、ムッとした顔で見ているのである。
おまけに、ソフィーと春奈の声が、耳に突然、飛び込んできた。
ソフィー
「ほら、さっさと時間が迫っているの!」
春奈
「あのさ、表彰式の話だけじゃないって!どうして気づかないの?」
ソフィー
「もうね、三人の転入生外国人巫女が、あなたたちの会話を全部読み取って、大笑いしているんだって!」
春奈
「ほんと、同じ日本人巫女として恥ずかしい」
かなり、厳し目のお言葉、これには由紀と華奈も、何も言い返すことが出来なかった。