キャサリンの絶品料理技術
春奈は、顔を真っ赤にして機嫌が悪そうな華奈を分析。
「ふむ、つまり今日の築地行きを仲間外れにされたうえに、朝一番の光君ゲットもキャサリンに取られてしまった、これでは気に入らないだろうな」
「そのうえ、光君の様子が、キチンとして、さわやかそのもの」
「気に入らないに加えて、焦っている」
「ふふ・・・まあ、今さらながら自らの実力不足を感じたのに違いない」
「ある意味、いい気味だけど・・・でも、少し可哀想な気もする」
やはり、春奈は心がやさしい。
「いい気味だ」と思いながらも、華奈を心配している。
春奈は、華奈に声をかけた。
「ねえ、華奈ちゃん、キャサリンが朝ごはんの準備を手伝ってくれているんだけど」
つまり、春奈としても、華奈にも朝ごはんの準備を手伝わせ、「失地回復」のチャンスを与えようと思った。
何しろ、今までの華奈は、自分の家で母美紀の朝ごはんを食べ、光の家に来て二回目の朝ごはんを食べるのが恒例だった。
「料理を食べるだけ娘」からの成長も期待したのである。
華奈は、真っ赤な顔で、少し反応する。
「うん、やってみる、さっきお母さんから、あなたも少しは手伝いなさいって」
「私も、お母さんの言葉は正しいと思う、私にも努力が必要と思う」
「やはり巫女も増えたことだし、年増の春奈さんばかりに負担をかけるべきではない」
華奈は、結局、「春奈には余計なこと」を言いながら、キッチンに入ってきた。
春奈は、「この無神経娘」と思ったけれど、特に口に出して反論はしない。
そんなことよりは、「料理食べるだけ娘」からの脱却、成長を期待する。
・・・が・・・その春奈の期待と、華奈の久々の努力する気持は、無に帰してしまった。
春奈と華奈の目が、キャサリンの包丁さばきや、料理の動きに、吸い寄せられてしまった。
春奈
「うわ!あの包丁の軽やかで正確なこと!見るだけで芸術!」
華奈
「玉子焼きの香ばしいこと、そもそも焼くまでの動きが、流れるように美しい」
「まるで、一流のシェフみたい・・・」
そんな「驚くばかり」の春奈と華奈を振り返ってキャサリンが一言
「はい、そろそろ人数分出来ますので、春奈さん、全員を食卓に」
「あ、華奈ちゃんは、配膳を手伝ってね」
有無を言わせないほどの、キチンとした、さわやかな笑顔。
これには春奈
「あ・・・わかりました、さっそく」
キッチンにある各部屋への内線で、連絡を取っている。
そして華奈でさえ
「はい、お手伝いさせていただきます」
キビキビと動き出してしまった。
さて、途中からキャサリンが主体となった和風朝食は、かなりの美味だった。
春奈
「ふむ・・・味噌汁の出汁が完璧、焼き魚もちょうどいい、玉子焼きもいいなあ」
華奈
「お母さんよりも春奈さんよりも美味しい・・・ってそんなことを言っている場合じゃないくらいに美味しい、とても・・・かなわない」
由香利
「一流料亭の味だ、これは日本橋か築地でも一流だよ」
由紀
「う・・・これに対抗するには練習が必要・・・やばいなあ・・・日本人のほうが和食で負けるなんて」
ルシェール
「和食ではかなわないかも、ここまでの技術はないなあ」
ソフィー
「さすがだなあ・・・うーん・・・まさかここまでとは」
サラ
「ここまで和食が美味しいとは・・・うーん・・・地中海料理で挽回しないと」
春麗
「確かに美味の極み。そうなると私としては、中華で勝負するしかない」
そして、珍しいことが発生した。
何と、光がペロリと一杯、そして二杯目が食べたそうな顔になっている。