由香利の一家?華奈への不安
そのソフィーから言うまでもなく、由香利は素直に
「まあ、私の一族というか、もっと言えば一家かなあ」
とまで言って、少し笑う。
春奈は、そこで気がついた。
「つまり、由香利さんのお家は日本橋で、築地にも影響力が強いということは」
由紀も気づいた。
「あ!わかった!江戸の大親分の一家?」
由香利は、そこで笑った。
「あはは、大親分って時代劇じゃないんだから」
「巫女の系統としては、伊勢だけどさ」
「江戸の時に一族が分化、こっちでは、その稼業さ」
「稼業と言っても、チンピラじゃないよ」
ソフィーが由香利の言葉を補足する。
「そうだね、一般人には手を出さない」
「あくまでも、その業界内部での抗争はあるけれど、法を犯すようなブザマなことをしないで、それでいて最強の力を持つ不思議な一家さ」
「それだから、公安も黙認というか、逆に信頼している、情報収集能力とか、諍いを丸く収める力とかね」
そんな話を聞いてキャサリンは不思議な顔をする。
「マフィアでもなくて、地域の裏社会に影響力?」
サラも首を傾げる。
「うーん・・・想像もつきません」
春麗は、ニコニコと笑う。
「ほーー、もしかすると、その実態が見られるのかな、これは面白い」
ずっと黙っていた光が口を開いた。
「じゃあ、そうなると、ソフィーも見に来るの?」
「まあ、春奈さんとか華奈ちゃん、由紀さんは、危ないからこっちに残っていて欲しい」
光は、珍しく真顔になっている。
春奈は、光の真顔が不安になった。
「ねえ、光君、さっきから言っていることが怖いんだけど」
「それはね、私達みたいな戦闘系じゃない巫女が行くと、足手まといかもしれないけどさ」
「もうちょっと、中身が知りたいなあ」
「それは、教師としてなんだけどさ」
由紀も春奈に続いた。
「うん、それは私も春奈先生と同じ、同級生として」
光は、そこで考え込んだ。
珍しく、少し迷っている様子。
そしてポツリ。
「言い方が難しい、春奈さんと由紀さんだけなら大丈夫なんだけど」
その光の次の言葉については、巫女全員が聞かないでもわかる。
ソフィーは頭を抱えた。
「そうかあ・・・華奈ちゃんか・・・何をしでかすかわからないし」
由紀も、困った顔。
「築地で大騒ぎして、お寿司食べたいとか、言い出しそう」
春奈は、去年の夏のことを思い出した。
「そういえば、ボクシング部の連中に不用意に簡単に呼び出されて、公園の木に縛り付けられて、顔殴られたっけ」
光は春奈の言葉に続いた。
「ボクシング部なんてもんじゃなくて」
「拳銃とか刀を持った連中だからさ、連れていけない」
ソフィーは、光の言葉で、早速、華奈の母美紀に連絡を取った。
「とにかく、明日は学園休ませてもいいから、縛り付けておいてください」
美紀も、ソフィーの意図をすぐに察したらしい。
「そうだね、足手まといの最たるものだね・・・それがいいんだけどさ」
美紀は、そこで少し声を低くした。
「華奈は、さっきから、大むくれなの、仲間はずれだの何だのってさ」
美紀の声には、華奈への呆れが混じっている。