阿修羅からの連絡?拍手喝采を受ける光と由紀
光は、大笑いをされながら、由紀にしっかり腕を組まれたまま、ようやく「三年生の自分の教室」にたどりついた。
そして、席に座った途端、由紀から「お叱り」を受ける。
由紀
「全く、恥ずかしい、どうして自覚がないの?」
光は、例によって、ウロタエ顔。
「ごめん、ボンヤリしていて・・・」
事実がそうなので、それ以上の言葉が出ない。
ただ、由紀としては、その「ボンヤリ」の理由を聞こうと思った。
何より、あまりにもボケすぎていると思ったのである。
由紀は、真顔で聞いてみた。
「何か、力とか使うことがあったの?」
すると光はとんでもないことを、突然言い出した。
「えーっと・・・電車の中でね、阿修羅君の声が聞こえてきてさ」
「でね、僕が阿修羅君に『何?』って聞き返したら、阿修羅君が『今から光君の頭の中にちょっと』って言うからさ」
と、阿修羅のことを言い出した。
由紀は、その光の発言で、姿勢を正した。
「やはり、強力な何かがあったんだね、そうでなければ、あれほどのアホはしない」
光は言葉を続けた。
「何か、化学式とか数学の公式みたいなのが見えてさ、その後はズーッと頭の中がグルグルしていてさ」
「・・・それでね・・・」
光の表情が少し、赤くなった。
「で、由紀さんに腕を組まれている間に、ようやく普通に・・・なんだろう、ダウンロードとインストールみたいな感じ?」
光は、そこまで言って、口を閉ざした。
由紀も、話をやめた。
・・・教室の扉が開いて、担任が入ってきたのである。
担任は教壇にあがり、話を始めた。
「はい、皆様、三年生への進学、おめでとうございます」
「今年度も、このクラスでということになりますが、今日は始業式だけとなります」
「さて、始業式にこれから向かうのですが、このクラスの皆様には、連絡をしておくことがあります」
「それは、一部気づいている人もあるかも知れませんが、このクラスに三人の外国からの転入生が入ります」
「まず、アメリカからキャサリン」
「ギリシャからサラ」
「中国から春麗」
「彼女たちは、始業式にて、全学園の生徒に紹介された後に、ここの教室に来ます」
「とにかく、初めての日本ということで、不慣れなこともあると思いますので、いろいろと仲良く教えてあげてください」
担任がそこまで話すと、やはり教室内はザワザワとする。
「へえ・・・多国籍かあ・・・」
「名前からして、女の子だよね」
「さっきチラっと見かけたけれど、三人とも目がキラキラしていて、超美少女だった」
「ほー・・・それはそれは、目の保養になるねえ・・・」
・・・・
いろいろとザワザワするのを、見ていた担任は次に、
「それでね、光君と由紀さんは、始業式の前に校長室に出向いて欲しいの」
と、光と由紀に声をかける。
光と由紀が「え?」という顔をしていると、担任は
「ああ、あのね、光君と由紀さんは、去年は音楽関係の学園行事で素晴らしい実績を出したから、その表彰をするの、その打ち合わせです」
と、説明をする。
そして、言葉を続けた。
「じゃあ、光君と由紀さん、ちょっとここで立ってくれる?」
光と由紀が、またしても「え?」といった顔で立ち上がると、担任は
「じゃあ、全学園の生徒の前に、わがクラスで拍手!」
その言葉と同時に、光と由紀は、クラス全員からの大きな拍手に包まれた。
光と由紀は、本当にうれしかった。
顔を赤らめて、担任はもとより、周囲の生徒全員に頭を下げている。