フラフラの光、その中身を読んだ楓も震えだした。
光と強引に腕を組んでしまった華奈の口調は、かなり厳しい。
そもそも、まだ怒っている。
「疲れたら疲れたって言ってください!」
「膝枕して欲しかったら、私の膝にしてください」
「すっごく寂しかったんですから!」
怒りの原因は、単に「綾子への嫉妬とやっかみ」ではあるけれど、華奈にとっては重要な問題。
光は、また少し焦った。
「え・・・華奈ちゃん・・・ごめん」
「あまり、覚えていない」
「とにかく、すごく眠くてさ」
そして、その目もまだ、トロンとなっている。
そのうえ、足元もふらついている。
華奈が支えていなければ、そのままアスファルトの地面に、額から激突しそうな状態。
その光が心配になったのか、「候補者巫女たち」が、さっと駆け寄る。
春奈は、かなり厳しい顔。
「うっ・・・マジで危ない・・・クリスマスの大聖堂の決戦の時か、富士山ろく決戦に匹敵するフラフラ状態かな」
由香利も、光の表情を凝視。
「うん・・・PCでいえば、バックグラウンドで超重たい処理をしているみたいなのかな、それがPC本体の動きに過重な負担をかけている・・・それ以上かな」
由紀は、光の手を握る。
「すごく熱くなっているから、光君の中で、何かが動いている」
そして冷静に分析。
「・・・となると、阿修羅?」
ソフィーは、その目を輝かせて、光の内部を探る。
そして「ふぅ・・・」と、ため息をつく。
「これは、無理、華奈ちゃんと由紀ちゃん、そのまま光君を引きずって歩いて」
「どうにもならない、ほぼ本人の意識はない、阿修羅が光君の意識の深層で動き回っている」
キャサリン、サラ、春麗も懸命に光を透視するけれど、やはり難しいようだ。
キャサリン
「・・・化学式と方程式の乱列、それも、破壊的な量」
サラ
「まるで。大コンピュータの中身の計算を、そのまま見ているだけって感じ」
春麗
「これは、やはり阿修羅の作業。光君自身の命には影響ない。だからその内部作業が終わるまで、待つしかない」
など、外国人巫女にも、お手上げの様子。
なお、諏訪大神の巫女、柏木綾子は、光の様子の変化と周囲の巫女たちの分析などには、まったくついていけない。
それでも、光から目を離すことはない。
さて、候補者巫女たちは、そんな感じになっているけれど、いとこの楓は現段階では何も動じていない。
そして、全ての巫女に説明をする。
「つまりね、光君は、由香利さんが分析した通りでね」
「PCで言えば、バージョンアップ作業中」
「今までの戦いに向けたバージョンを削除、あるいはバージョンアップをしているの」
「いろんな戦いがあったと思うけれど、それに使った化学式、公式を書き替えているの、ただ、それだけと思う」
「でも、ただ、それだけでも、これほど時間がかかるというのは・・・光君の体力が演奏会の後で落ちているのか」
楓は、少し歩いて、光の正面に立つ。
そして今度は楓が光を凝視する。
「う・・・」
しばらく、光の顔を凝視していた楓の表情が、一度真っ赤になり、次に真っ青に変化した。
「やばいよ・・・これ・・・それだけ・・・じゃない・・・」
楓は、ひどく震えだしている。