ベートーヴェンが圧倒、刺客香苗の完落ち
さて、「本部からの刺客」香苗は、第一楽章の冒頭から、どうにもならないほどの快感に身体が包まれていた。
「マジ?どうして?クラシックなんて、ベートーヴェンなんて嫌いだったのに」
「この運命・・・私の身体の奥を、グングン突いてくる」
「やばい・・・これ・・・」
「光って子に、抱かれて・・・思い通りに、揺さぶられているみたい」
「快感で、快楽で息もできない」
「・・・こんなの初めて・・・やばい・・・」
「飛んじゃいそう・・・」
「・・・エクスタシー・・・ってこれ?」
第二楽章では、ゆったりとしたテーマで、ほぼ恍惚状態。
「はぁ・・・」
「トロトロ・・・」
「ゆったり・・・やわやわ・・・」
「そしてまた強く・・・快感・・・」
「神?神の力が身体に?」
「もう・・・任せるしかない」
「こんなんじゃ、刺客は無理」
緊張感あふれる第三楽章では、呼吸も困難。
「う・・・弾けそう・・・」
「マジ・・・息が苦しいよ」
「時々なめらかに、私を揺さぶる」
「もう・・・完落ち・・・」
輝きにあふれる第四楽章の冒頭を迎えた。
香苗は、もはや完落ちから、どうにもならない。
「こんなんで、どうやって光って子を落とすって言うの?」
「私、落ちちゃったもの」
「もう・・・どうでもいい」
香苗は、この時点で、「刺客続行」を断念した。
第四楽章の高らかなフィナーレを迎えた。
光が指揮棒を降ろし、聴衆に向き直ると、地鳴りのような大拍手と「ブラボー」の嵐。
それも、聴衆のほぼ全員が立ち上がってのスタンディングオベーションとなっている。
ただ、香苗は立ち上がるのは無理だった。
そもそも、第一楽章の途中で、快感で腰が抜けていた。
光が舞台裏に戻ると、ルシェールと由香利がお出迎え。
ルシェールは泣いている。
「すごかった!こんな運命ははじめて!」
由香利も、グジュグジュになっている。
「光君、マジ、すごい・・・超感動した」
大指揮者の小沢氏も舞台裏に来て、光の肩をポンと叩く。
「凄まじいベートーヴェンだ」
「冒頭からフィナーレまで、ベートーヴェンの気迫が、ホール全体を圧倒した」
「これぞ、至高の音楽」
光は、恥ずかしそうな顔。
「はい、第九の冒頭を意識して、第四楽章は特に鳴らしまくりました」
少し遅れて春奈が光の前に、飲み物を持ってきた。
春奈
「光君、お疲れ様、すごかった」
光もすぐに反応。
「ありがとう、春奈さんのカフェオレ大好き」
ゴクゴクと飲んでいる。
ソフィーは客席を歩いてから、舞台裏に戻ってきた。
「美少女集団は、大人しいまま、運命に圧倒されたね」
「全員、感動して、また座っちゃった」
そして、もう一言、春奈に耳打ち。
「春奈さんが気にしていた超美少女は、心配ないよ」
「すでに、身体の中の邪霊を光君の音楽が退治しちゃったみたい」
「・・・というか、当分立ち上がれそうにない」
春奈は、フフッと笑っている。