演奏会ホール 豊村と麻紀に異変
演奏会開始30分前になった。
ホールが開場となるので、チケットを持った多くの人たちが、ホールに向けて歩きだした。
もちろん、アイドル並の美少女集団500人も歩きだす。
豊村と麻紀は、その後ろを含み笑いをしながら歩く。
豊村
「さあ、お楽しみだ」
麻紀
「こんな演奏会、メチャクチャにしてやる」
「クラシックなんて大嫌い」
豊村
「は!お固いベートーヴェンの音楽の中、淫乱な男女の裸の営みか、それは絵になるなあ」
麻紀
「豊村さん、私を忘れないでね、若い子ばかりを見ないで」
豊村
「は?妬いてる?」
麻紀
「そんなことしたら、私が若い男の子に色目を使うよ」
アイドル並の美少女集団は、演奏会ホールのドアを開けて入っていく。
そして、豊村と麻紀も、そのドアに近づく。
豊村の表情が一変、ドアの前で、厳しいものになった。
「おい・・・何かおかしい」
麻紀も怪訝な顔。
「うん・・・・この扉の付近、力が抜ける?吸い取られる?」
豊村の額に、脂汗がにじんだ。
「いいから、入ろう、入らないと計画も何もない」
「組織の指示は守らないと」
麻紀も必死に足を前に出そうとするけれど、かなり重く感じる。
「足に力が入らない」
「どうして?」
豊村と麻紀は、それでも必死に演奏会ホールの扉を押し開け、客席とステージを見る。
豊村
「何もおかしいことはない」
「普通のお固いクラシックのステージ」
麻紀も頷く。
「あの子たちもちゃんと座っている」
「まだ騒ぎは起こしていない」
その豊村と麻紀に数人の男が、近づいて来た。
ただ、近づいて来ただけで、何もしない。
しかし、豊村は、一瞬で、その男たちの「力」を見抜いた。
豊村の顔は、ますます厳しい。
「こいつら・・・格闘慣れしてる」
「警察関係?」
「諏訪の監禁がバレたか?」
「・・・完璧に囲まれている」
「一筋縄じゃいかない」
麻紀は、不安な表情。
「ねえ・・・豊村さんが動けないと何もできないでしょ?」
「格闘が強くて、呪力が強くて、女に強いのが、豊村さんのウリでしょ?」
「ねえ・・・しっかりしてよ・・・」
「豊村さんが使い物にならなかったら、他の男に乗り換えるわよ」
豊村は、そんな叱咤をされても、何も言葉を返すことができない。
それどころか、囲んだ男たちを時折横目で見て、その身体を震わせはじめた。
「こいつら・・・人か?」
「人の鼓動を感じない」
「何もしないのに、刃物で内臓を切り刻まれているような・・・」
「痛い・・・どんどん、食い込んで来る」
豊村の額に脂汗どころではない。
その目は、真っ赤に充血、目から血が流れ始めている。