リハーサル終了、光の秘術
演奏会前日のリハーサルは終了、光が奏者全員に声をかけた。
「ありがとうございます、明日は気合をいれて、運命、そして大きな第九をやりましょう」
光の言葉で、奏者全員が、気合が再び入った感じ。
中には小さくガッツポーズをしたり、周囲の奏者と拳を合わせたりする者もいる。
客席で見ている大指揮者の小沢は、微笑んだ。
「人の心を引きつける力が強いなあ」
「奏者の呼吸が合っているから、音楽にキレがあるし、なめらか」
「その上、光君自身の音楽性・・・まるで神を感じる時がある」
「もっともっと振らしたいなあ、日本だけでなく、海外の本場のオーケストラ」
「音大に入学したら、そのまま連れ出そうか」
「ニューヨーク、ウィーン、ベルリン・・・」
小沢には、具体的な計画まで、出来つつある。
光が、ステージから降り、小沢の前に来た。
そして頭を下げ
「ありがとうございます。先生が来られているので、安心して振ることが出来ます」
小沢は、首を横に振る。
「いやいや、力強い指揮、そのままCDにしたいくらいだった」
「成長したね、光君」
「以前は繊細な感じがあったけれど、こんなに強くて雄大なベートーヴェンの世界を振れるようになった」
「どこに出しても恥ずかしくないどころか、どんどん世に出したい」
「入学したら、早速、海外に行こう」
恥ずかしそうな顔で聞いている光の前に、楓が歩いてきた。
そして小沢に一礼。
ただ、少々文句。
「小沢先生、すごく光栄なお話なんですが、難しいと思うんです」
「光君は、食べなれないものを食べると、お腹を壊すんです」
「見慣れない景色を見ると、風邪を引くんです」
笑い出してしまった小沢に、楓はもう少しある。
「ですから、海外に出かける時は、この楓も同行します」
「光君の健康管理責任者として、大切な責務なんです」
そんなやり取りの中、春奈が歩いて来た。
春奈は、楓にムッとしている。
「楓ちゃん、何?その言い方」
「光君の健康管理責任者は、しっかりとした知識と資格を持った私なの」
「それを何?私をナイガシロにして、その態度」
ソフィーもムッとした顔で歩いて来た。
「結局、楓ちゃんも、光君にご相伴して、海外旅行したいだけなんでしょ?」
「美味しいものを食べたいだけなんでしょ?」
「マジで呆れる・・・」
楓は、年増巫女の追及に「うっ」となるけれど、すぐに光の手を取った。
楓
「ねえ、光君、持ってきたけれどさ」
光
「うん、ありがとう、さすが楓ちゃん」
楓は、ニンマリ。
「それはそうさ、光君の頼みだもの」
光はホールの天井を見上げた。
「それでね、あそこに楓ちゃんには悪いけれど、蜘蛛をセットしたの」
「ブラジリアン柔術の時と同じ仕掛けだけど、それより相当強烈な、悪霊と毒素吸い取り能力を付け加えた」
「悪霊と毒素大好きのクバンダ神の唾液を混ぜて、それに楓ちゃん特製の清浄化転換薬をさらにブレンド」
光は、そこまで話をして、手に持っていた指揮棒を天井に向けた。
「あ!」
楓、春奈、ソフィーが同時に叫んだ。
光の手の指揮棒から、不思議な光線が天井に照射され、見たことも無いような化学式と文字列が、天井に浮かび上がっている。