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大聖堂の中で 聖母マリアから綾子へのお言葉

光は大聖堂の門の前に立ち、阿修羅の合掌の姿を取った。

すると、頑丈な重々しい鉄扉がゆっくりと開く。

その瞬間、目もくらむばかりの眩い輝きが、光たちの一行を包み込んだ。


「大丈夫」

光は、柏木綾子の手を引いて、その輝きの中を進む。

「はい」

控えめな小さな声で、柏木綾子が答え、少しすると、どうやら大聖堂の中に入ったようだ。

後方で、再び、重々しいガタンという鉄扉の閉まる音が聞こえてきた。


「目をあけてごらん」

再び、光のやさしい声。

「はい」

柏木綾子が小さく答え、目をあけた。

そしてまた小さく


「え?」

という驚いた声。


まばゆい輝きが消えた大聖堂の中央には、白亜の立派な祭壇。

その中央には、純白の衣に身を包んだ人が二人。

一人は女性のようで、頭からベールをかぶっている。

もう一人は、長身で長髪の男性、柔らかな微笑みを浮かべ、綾子を見つめている。


光の声が聞こえてきた。

「聖母マリア様と、その御子のイエス」

「綾子ちゃんも、耳にしたことはあるはず」


綾子の身体が、その言葉と同時に、硬直。

「え・・・あ・・・」

「本当・・・ですか・・・」

「こんなことが・・・」

光が手を握っていなければ、崩れ落ちそうなくらいに、硬直から震えだしている。


「綾子ちゃん」

「聖母マリア」から、お声がかかった。


「はい」

綾子は、不思議なことに自然に足が前に出た。

そのまま、歩き、聖母マリアの前で、ひざまずく。


「たいへんな辛い思いを」

「自分自身への不安、禍々しい儀式への怖れ」

「そして、あなたを思い、あなたが思うご両親への不安」

聖母マリアのお声が、綾子にかけられた。


「はい・・・」

柏木綾子は、また、泣き出した。

涙があふれて止まらない。


再び聖母マリアのお声が聞こえた。

「全て、人の世を混乱させ、苦しませようとする悪霊の仕業なのです」

聖母マリアは、一呼吸置いた。

「綾子ちゃん」

声がやさしく、強い。


「はい」

綾子は、聖母マリアのお顔を見上げた。


聖母マリアの目が、輝いた。

「神は怖れるべき」


綾子「はい」


聖母マリアの目が、綾子をしっかりと見つめた。

「しかし、悪霊を怖れてはなりません」

「神を信じ、心を強くして、悪霊に従ってはなりません」


聖母マリアの言葉が、続く。

そして、その言葉がかけられるごとに、綾子の身体が輝いていく。


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