真言立川流とダキニ天、阿修羅の戦略
ソフィーは、真言立川流の文献調査に入った。
「観音力」で把握しようとも思ったけれど、まずは「自力」にてと思った。
その真言立川流は、中世の日本、現在の東京都立川市近郊で発生した密教の信仰に属するもの。
加持祈祷を中心とした「密教」の実践と、陰陽二元論を中心とした「陰陽道」の教えが合体。
さらに、インドやチベットなどから持ち込まれたタントラ、空海も関係する思考が、既存の山岳宗教の修験道とも合体したもの。
要約して言えば、「中世に発生した性的要素の強い 仏教の一派」という事になる。
そのため、その儀式や理論に性的な要素が強い。
その、真言立川流は、邪神とされるダキニ天を拝し、本来仏教では不邪淫戒で禁止されているはずの性交を奨励し、人間の髑髏を本尊とする。
そのため、「邪祠邪教」と評されている。
ダキニ天は、元はインドの女神。
元々は農業神であったけれど、後に性や愛欲を司る神とされ、さらには人肉、もしくは生きた人間の心臓を食らう夜叉神。
そこまでの文献を調べ、ソフィーはため息をつく。
「これは・・・かなり危ないなあ」
「少なくとも、光君のイメージとは、全く違う」
「男女の愛とか、髑髏とか、死体ってイメージは全くないもの」
そして、考えた。
「とにかく危ない術を使う術者が、光君に近づいている」
「コンサートに合わせて、その術を使う」
「裸の若い美女軍団を増殖させ、その美女軍団に接した男性から生殖機能を失わせる」
「その美女が、光君に接した場合・・・光君の生殖機能もなくなる」
「当然、阿修羅の後継者も生まれてこない」
「阿修羅は、それを危険しして、戦闘系の巫女を光君の警護として配置した」
「それが、キャサリン、サラ、春麗」
「そこを読むと、立川流の呪術者も、もしかすると戦闘力、格闘力を持っている可能性がある」
ソフィーの脳裏に、ひらめくものがあった。
「くのいち・・・ってあったなあ」
「女忍者で、房中術も使いこなす」
「今の時代でも・・・そういうのが・・・いるのかな」
「若くて美しい女ってのが気に入らない」
「それが、夜、光君のベッドにもぐりこむ?」
「そして、光君の身体を奪う?」
ソフィーは焦ってきた。
「マジで気に入らない」
「結界を強化しないとなあ」
そのソフィーの頭に、何故か、楓の声が響いて来た。
「ソフィー!だから、私の嫌いなものを探して、光君が苦労して春日山に入ったの」
「ねえ、わかるでしょ?」
「あれ!ブラジリアン柔術との戦いの時、天井にはりついていた気色の悪いもの」
「ソフィーの部屋にもいたでしょ?」
ソフィーは、「うっ」とうなった。
そして、すぐに理解した。
「あ!そうか!それで蜘蛛?」
「そい言えば、変な呪文が書いてあった」
「梵字かあ・・・ダキニ天はインド、だから梵字か」
「蜘蛛の巣を張って、結界を張るんだ」
「さすが、阿修羅だ」
そのソフィーに、楓がもう一言。
「女術者を探して!大至急!」
楓の声が、かなり緊張している。