術者の正体、人類は滅亡?
光は、少し声を落として、話しはじめた。
「あのね、怒らないでね」
ソフィーは、
「うん、絶対怒らないから、言って、何なの?」
光
「お風呂屋さんのね・・・」
ソフィーは焦れた。
「さっさと言いなさい、モタモタしない、お風呂屋さんの何なの?」
光
「女湯で、若い女性ばかりがね、ものすごくたくさんなの」
ソフィーは、ますます意味が不明。
しかし、腹が立った。
「つまり、素っ裸のお姉さんたちが、大勢なの?」
「光君の目に、そんなものが映るの?」
「・・・マジで張り倒したくなった」
光は、冷静。
「うん、張り倒すのは後にして」
「そういうお姉さんたちが、変なことをするの」
ソフィーは、また首を傾げた。
「変なことって何?」
光
「男の人に抱き付いたり」
「コンサートに来た女の人が、全てそんな状態」
「不思議なのは、お年寄りの女の人も、若返って」
「変な呪文を唱えて・・・」
光の声が低くなった。
「きっと・・・真言宗の立川流」
ソフィーはうなった。
「う・・・あれか・・・」
真言宗立川流は、鎌倉時代に仁寛によって開かれ、南北朝時代に文観によって大成されたとされる密教の一派。
邪神とされる荼枳尼天を拝し、本来仏教では不邪淫戒で禁止されているはずの性交を奨励し、人間の髑髏を本尊とする。
「淫祠邪教」いかがわしい神を奉じ、人心を惑わす教えと評されてきた歴史を持つ。
光の声は低い。
「今回の戦い、キャサリン、サラ、春麗が加わって来たのも、この真言立川流の強力な呪力と戦闘力を持つ術者に対抗するため」
「そして、彼女たちが加わってきてからの、戦闘行為は、全て、その術者の起こしたもの」
「かなり忌まわしく、かなり強い念を持つ」
「立川流の彼女が最も得意とするのは、生殖行為に絡む呪術で、それも悪意、滅ぼしの術」
「全ての生物の生殖行為に悪い影響をもたらす力を持つ」
「新しい命、そのものが全て、生まれない可能性までが出て来る」
ソフィーは、光の言葉で、震えた。
これは光ではなく、阿修羅が語っていると理解した。
「運命と合唱のコンサートを、裸の女、それを増殖させる?」
「それで、男に取りつき、大混乱?」
光(阿修羅)の低い声が続く。
「その裸の女たちの唾液は、抱き付いた全ての男の生殖機能を殺す」
「つまり、新しい命は生まれてこない」
「コンサート会場周辺だけではない、そこで止めなければならない」
「光君を倒したなら、裸の毒女はすさまじい勢いで増殖し始める」
ソフィーは、震えた。
「人類は、滅亡?」
光(阿修羅)は、低い声で答えた。
「そうさせないように、善の格闘力を持つ女神を光君の警護につけた」
そして、付け加えた。
「その呪術者は、若く美しい女性」
「着実に、光君に近づいている」