光vsメデューサの手先(1)
光はゆっくりと立ち上がった。
坂口は、その光を見て、驚き、震えた。
「・・・あのオーラはなんだ?赤い炎のようなオーラ・・・」
「光君の目の輝きが、いつもと全然、違う・・・」
「もしかして・・・阿修羅?」
「阿修羅の技を出すのか?」
春奈も震えた。
「下手をすると、殺しかねない・・・光君も阿修羅も本気モードだ」
華奈は、怖くなって春奈にしがみつく。
「ねえ・・・一番ヤバイかも・・・」
「光さんが一番嫌うタイプだもの、ゴーマン、卑怯な人って」
由香利も、震えるけれど、必死に光の心の奥を探る。
「殺すまではしないと思う・・・でも、それに近いことは・・・」
由紀は、胸に手をあてた。
「どこかで、セーブするとは思うけれど」
キャサリンは光の立ち合い試合場の中央に進む足を見た。
そして、また震えた。
「足が地についていない、つまり、すでに阿修羅になっている」
サラが、真っ青な顔になった。
「おそらく・・・あのブラジリアン柔術の総監督は・・・」
「あそこまで、阿修羅が出るということは・・・メデューサの意を汲んだというか、手先だったのか・・・操られているのか・・・」
春麗は、少し身体を浮かした。
「勝負は一瞬、光君いや、阿修羅が勝つ」
「でも、その瞬間、何かが・・・」
ソフィーも事態の深刻さを読んだらしい。
いきなり背中に羽を生やし、立ち合い試合場の天井付近に浮かんだ。
しかし、その姿は、常人には見えない。
様々、動揺する巫女たちの中で、楓だけが冷静。
「慌てることはない、これも、予定通り、光君の作戦通り」
「誰も知らない、春日様の秘法がここで見られる」
光は、立ち合い試合場の中央に立った。
対するブラジリアン柔術の総監督は身長が2メートルを超える大男。
やせ型で、とにかく手足が長い。
対する光とは身長にして、数十センチの差。
大人と子供の違いがある。
ブラジリアン柔術の総監督が光に声をかけた。
「ココマデヒドイメニアワシテクレタ」
「イキテハカエシマセン」
「ドウシテベビーガココニ」
せせら笑い、小柄な光を嘲る。
呆れた坂口が、ブラジリアン柔術の総監督に声をかける。
「この光君は、さっき君たちをコテンパンにしたどの選手よりも強い」
「どうなっても不思議ではないのは、お前のほうだ」
そう言われても、ブラジリアン柔術の総監督はせせら笑うだけ。
光が審判に、いつものハンナリ声で声をかけた。
「はじめてください」
と、同時にブラジリアン柔術の総監督は低いタックルの構えを取る。
光は、何の構えも取らない。
「はじめ!」
審判の試合開始の号令がかかった。
次の瞬間・・・光は合掌、そして阿修羅に変化した。