キャサリンの拷問技は相手を失神させるけれど・・・
審判の「はじめ!」の号令とともに、ブラジリアン柔術の選手がキャサリンに突進、タックルをしかけた。
キャサリンは、宙を飛ぶこともなく、身体を開いてかわすこともない。
「パシン!」
キャサリンの右手が、ブラジリアン柔術の選手の左ほほを襲った。
乾いた張り手の音が、試合会場に響く。
その一発で、ブラジリアン柔術の選手の腰が抜けた。
ヘナヘナと崩れ落ちようとする。
しかし、キャサリンは、それを許さなかった。
さっとブラジリアン柔術の選手の、頭を抱え締め上げる。
坂口がうなった。
「しっかり頬骨のツボに入っているから、相手は痛みで何もできない」
「首を絞めているわけではないので、反則には取られない」
「ブラジリアン柔術は、平気で反則をしかけてくるけれど・・・」
斎藤が不安そうな顔。
「絶対に、ギブアップをしないのが、ブラジリアン柔術の伝統と聞いたんですが」
光は、首を横に振る。
「でも、決着ついたよ、ああなれば伝統も何もない」
光の言葉通り、キャサリンが腕の力を弱めると同時に、ブラジリアン柔術の選手は、口から泡を吹いて失神、崩れ落ちた。
審判が「一本」を宣告するけれど、またブラジリアン柔術の総監督が抗議。
ソフィーがその抗議の言葉を翻訳。
「ギブアップをしていないから、負けではないって言い張っている」
そして笑った。
「まあ、すごいプライドというか、負け惜しみも、ここまで来ると」
キャサリンが戻って来た。
「痛みは与えたけれど、わかるかなあ」
サラも呆れている。
「どうしてかなあ、明らかに負けなのにね」
春麗は、怒っている。
「あんなネチネチとした格闘技って、道場だけでしか使えないの」
「実際の戦場では役に立たない、戦場で役に立たない格闘技って何の意味があるの?」
そんな状態で、女子選手の戦いは、終わった。
次から、男子選手の対戦となる。
一番手は、金剛力士の阿形。
阿形の巨体が、立ち合い試合場の中央に立った。
ブラジリアン柔術の選手も、かなりな巨体。
しかし、阿形のゴツイ身体と異なり、相当柔軟なようだ。
斎藤がつぶやいた。
「とにかく速くて柔らかいタイプ」
「関節を極めるのも速いし、力も強い」
「光君が連れて来た選手はよく知らないけれど・・・大丈夫かなあ」
「身体が固そうだし、タックルされて、そのまま関節を極められそう」
斎藤の少し心配な顔を見て、坂口が笑った。
「斎藤、心配はいらない」
「あの巨体二人にかなう人間はいない」
「まあ、光君でも、苦労するかなあ」
斎藤は驚いた。
「坂口先生・・・何を言っているんですか?」
「全く意味がわかりません」
華奈は阿形の表情に注目。
「阿形さん、怒っている」
「なんか、ヤバそう・・・」
華奈の身体が震えだしている。