サラの超高速スープレックス
ソフィーの手に渡ったカプセルは早速駆けつけた警察当局に渡されてしまった。
坂口が、ブラジリアン柔術の総監督に、全てのブラジリアン柔術の選手の帯を点検したい旨、申し出る。
ブラジリアン柔術の総監督は、血相を変えて拒否するけれど、それは叶わなかった。
警察当局の分析結果提示が、非常に速かった。
ほぼ、30分でカプセルが高性能の小型爆弾と認定され、警察当局の指示により、全てのブラジリアン柔術の選手の帯が警察当局に渡されることになったのである。
しかし、ブラジリアン柔術の総監督や選手たちは、自分たちの非を認めない。
あくまでも、「他人により仕組まれた」と言い続け、立ち合いの続行を主張する。
「いいでしょう」
今度はサラが立ち合い試合場の中央に立った。
サラは、伝統のグレコローマンスタイルで闘う。
ブラジリアン柔術の選手は、帯がないため、サラと同じようなレスリングスーツに着替えて来た。
「はじめ!」
審判が試合開始の号令をかけると、ブラジリアン柔術の選手がサラに低く速いタックルをかける。
「ふん!」
しかし、サラは、軽く身体を動かし、そのタックルを外す。
そして、上からブラジリアン柔術選手の下げた首の後を上から、グッと押さえつけた。
斎藤がそれを見てうなった。
「あれは・・・下になったら動けない」
「苦しいだけだ」
光も目を輝かせた。
「半歩、身体を回転させて、タックルをかわして、上から首を抑えて地面に押し付けた」
「押さえつける力が強いのではなく、ツボを押さえているから首が動かせない、そのまま顔全体が畳にめり込んでいる」
「呼吸も苦しいはず」
サラは、上から押さえつける力を少し弱めた。
抑えつけられていたブラジリアン柔術の選手も、ようやくフラフラになりながら首と胴を起こす。
その瞬間だった。
サラは、ブラジリアン柔術の選手をさっと抱え込み、後方に高く投げ捨ててしまった。
坂口が目を丸くした。
「あれは、レスリングの基本、フロントスープレックス、それにしても速い」
「反り投げか・・・ブラジリアン柔術の選手の脳天が、畳に直撃だ」
二番手のブラジリアン柔術の選手は、口から泡を吹いて立ち上がれない。
再び「一本」の判定がなされ、サラの手が上げられるけれど、ブラジリアン柔術の総監督は、また抗議。
投げのポーズをさかんにしていることから、投げの危険性に抗議しているのだろうか。
それを見ている春奈が呆れた。
「ルールを守って戦っているのにね」
華奈は怒っている。
「自分たちの負けを認めない、何があっても」
ソフィーがクスッと笑う。
「残りの選手に、偶然に過ぎないって言っているし」
「道着を付けていれば負けなかったとも言っている」
光が次に戦うキャサリンの顔を見た。
キャサリンは、今までのブラジリアン柔術サイドの対応に、相当怒っている。
「許せません、フェアでない」
キャサリンのキチンとした性格には、やはり許せない対応らしい。
「とてもお手柔らかには、できません」
キャサリンの青い目に、恐ろしいほどの闘志の炎が光っている。