立ち合い開始 春麗の華麗な勝利と黒光りするカプセル
光たちとブラジリアン柔術の選手の立ち合いが始まった。
光たちの一番手は、春麗、中国拳法にて立ち会う。
「はじめ!」
審判をつとめる柔道選手の号令とともに、ブラジリアン柔術の選手は、腰をかがめ、春麗に絡みつこうとする態勢となる。
しかし、春麗は構えを取らない。
笑みを浮かべながら、軽く跳躍を繰り返すのみ。
それに焦れたのか、ブラジリアン柔術の女子選手が、春麗に突進。
まさに春麗の下半身にタックルをしようとする瞬間だった。
「ハッ!」
春麗の身体が立ち合い試合場の天井向けて、高く舞う。
そして、空中でくるっと回転、そのまま踵がブラジリアン柔術の選手の脳天に落ちた。
ブラジリアン柔術の選手は、その一撃で昏倒。
ほぼ意識がない。
春奈は目をパチクリ。
「すごい!かっこいい!」
華奈
「きれい!何か空中の舞を見ているみたいだった」
由香利
「まさに一撃!スッとした」
由紀は、春麗の次の動きに注目。
「あれ?春麗、ブラジリアン柔術の選手の帯を抜いちゃった」
ルシェールは目を凝らした。
「さっき、光君が読んでいたことかな、きっと春麗も感じたんだ」
審判の選手が「一本!」と、春麗に勝利を宣告した時だった。
ブラジリアン柔術の総監督と選手たちが一斉に抗議で、審判に詰め寄る。
しきりに蹴りのポーズと、帯を指さしているから、春麗の蹴りと帯を取ったことに対する抗議なのだろうか。
光の隣に斎藤が座った。
「ブラジリアン柔術の人たちは、簡単なことでは負けを認めないのさ」
「自分たちが蹴りを入れても、相手の蹴りを認めない場合がある」
「春麗の場合は、頭部への蹴りは認めていないとかね」
光は斎藤に尋ねた。
「そんな取り決めをしたの?」
斎藤は首を横に振る。
「全然してないよ、何でもありのルールのはず」
光の前に、春麗がブラジリアン柔術の選手の帯を持って歩いて来た。
光は、その帯を受け取り、立ち上がった。
そして、試合場の中央に進み、一気に帯を引き破ると、その中から黒光りのする小さなカプセルが出て来た。
途端に審判の周りで、抗議していたブラジリアン柔術の選手や総監督の表情が変わった。
今度は、光のほうに詰め寄って来る。
光は、坂口を呼び、そのカプセルを示す。
「これは、小さな爆弾なのでは?」
坂口も緊張気味にそのカプセルを受け取ると、ソフィーが試合場に入って来た。
ソフィーも、坂口の手の中のカプセルを確認。
そして、総監督に近寄った。
「これは爆弾ですよね、何故、帯の中に?」
しかし、総監督は何も知らないというように、首を横に振る。
それどころか、光が帯を引きちぎったことを非難するかのように、光に指をさして、威嚇のような言葉を続けている。