後悔しきりの春奈は、光に抱きしめられて・・・
「はぁ・・・どうしよう・・・」
長く厳しい母との電話を終え、春奈は自分の部屋に戻った。
「やばいなあ・・・」
「光君・・・泣いてたもの」
「傷つけちゃったかなあ」
「リビングで、ピアノの前で、押し倒しちゃった」
とにかく、心がドキドキして、落ちつかない。
「一番年長で・・・嫉妬にかられて、襲おうとしたなんて・・・」
「それも、一番やってはいけない場所で」
「・・・泣かせちゃった・・・」
「いじめて、泣かせちゃった」
「心の傷になったら、どうしよう・・・」
春奈は涙も出ない。
怖くなってきた。
「もう、春奈さん、嫌い・・・とか・・・」
「出ていってとか・・・」
「他にも巫女さんがいるからいいよとか」
春奈のマイナス思考は、どんどん加速する。
「学園休むかなあ・・・風邪とか言って」
「でも、保健教師が健康管理できないって、それも文句言われるし」
春奈は、また気がついた。
巫女たちを、次に警戒する。
「ソフィーとか、他の巫女たちが、感じ取っていたら・・・」
「すごく文句が言われそう・・・何てことしたの?とか」
「私が変わりますとか、ルシェールが言いそう」
「由香利さんは、呆れて、はぁ?先生が生徒を襲ったの?とか」
「由紀さんだって、泣いて怒る、春奈先生、やはり信頼できないって」
「華奈ちゃんは、だから任せられないって、大騒ぎ」
「キャサリン、サラ、春麗は、武闘派巫女だから、無理やり光君を奪い取って、そこで戦闘になるかも・・・内部抗争?あーーーまずい・・・」
春奈が、そんなグルグルとマイナス思考に陥っていると、コンコンとノックの音がする。
「はい・・・」
光だったら、全く合わせる顔がない。
他の巫女も同じ、春奈は怖くて、身体も声も震える。
「光です」
春奈にとって、「どうしよう・・・」という相手の声が聞こえてきた。
春奈
「うん・・・」
春奈は、目を閉じて、恐る恐るドアを開けた。
「入ってもいいですか?」
光のやさしい声が聞こえてきた。
「うん」
春奈は、拒めない。
というか、光の本意が読めない。
もし、「さようなら」の本意なら・・・不安で身体も固くなる。
「春奈さん」
光のやさしい声が、また聞こえた。
「なあに?」
春奈が言葉を返した瞬間だった。
「あっ!」
春奈の身体全体に、電流が走った。
光が春奈を、ふんわりと抱きしめている。
光は、春奈の耳元で、ささやいた。
「春奈さん、ごめんなさい」
「さっきはびっくりして・・・」
その光の唇が、春奈の耳たぶに、触れた。
「うっ・・・はぁ・・・」
春奈は、全身の力が抜けてしまった。