表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
310/371

春奈の母美智子の厳しい言葉

母美智子の春奈への厳しい言葉は続く。

「そういうことをする場所もね、絶対リビングはだめだよ」

「ピアノのある場所とか」


春奈は、言葉に詰まる。

「マジ・・・リビングで、ピアノの前・・・」

しかし、そんなことを、母美智子に白状してしまえば、どれほと叱られるかわからない。


美智子

「あのリビングのピアノで、光君のお母さんが倒れて、そして亡くなったの」

「光君は、普通の顔をしていても、思い入れが深いというか、そこで心を閉ざした場所なの」

「その場所では、本当に慎重に行動しなければならないの」


美智子の言葉は、針で刺すように、春奈の心を突き刺していく。

春奈は、この時点で、もはや何も言えない。


美智子は、さらに厳しい言葉を続ける。

そして、その言葉に哀感がこもり始める。


「光君、阿修羅が、乗り移ってから、特に本当に大変だと思うよ」

「それでなくても、お母さんが、あんな亡くなり方をして、しかも自分に責任のほとんどがあると、思い込んでいる」

「それで、心を閉ざして、自分を責め続けて、自分の心に自分で切り付けて、血を流し続けて」

「食欲が無くなる、身体が華奢になる、そんなのは当たり前のことだよ」

「そんなに自分を責め続けて、しかもお父さんの史さんがいないから、相談も何も、話をする人がいない」

「春奈に住んでもらったのは、少なくとも栄養だけでもと思ったから、圭子さんたちと相談してね」


美智子の声が、湿って来た。

「あなただって、巫女だからわかるでしょう」

「呪力を使うことの、その後の疲れ」

「それを光君は、乗り移って以来、ずっとなの」

「おそらく気力のほとんどを、あの阿修羅に使われているはず」

「だからと言って、出ていってもらうなんて、無理」

「そんなことをしたら世界も、どうなってしまうのか、わからない」


「一緒に住む巫女たちが増えたのも、阿修羅としての戦略だけどね」

「光君にとっては、辛いと思うよ」

「みんなのご機嫌を取らなければならない」

「気を使っていないとか、無神経とか、無粋とか、そんなことを言ってはいけないの」

「一人二人の異性だけでも大変なのに、すごく増えたでしょ?」


「その上、学校があって、音楽があって、そっちにも気を配る」

「悪魔が出てくれば、いろいろ戦略を考えて、なるべく被害が少ないように」

「一緒に戦う御神霊の面子まで考えて、阿修羅と一緒に戦っているの」


美智子は、泣き出した。


「・・・光君・・・可哀そうだよ・・・」

「あんな・・・やさしい子に・・・すっごい重しをかけて・・・」

「必死に戦って・・・文句を言われ・・・」


「みんな、欲しがるのは、自分への愛情ばかり・・・」


「光君の心と身体まで、欲しがって・・・」


「光君の、心の闇を・・・苦しさ・・・辛さなんて・・・」


「本当に考えている?」


「心はボロボロ、傷だらけ、出血しながら、闘っているの、闘い続けているの」


春奈も泣き出してしまった。


リビングの光を見ようと思った。

しかし、いつの間にか、光の姿はない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ