それぞれの巫女と由香利のお礼の挨拶
佃住吉神社の上空に、鳥神カルラがさしかかった。
由香利が、光に声をかけた。
「光君、全ての戦闘も、癒しも終わったみたい」
「本当はもっとムギュってしていたいけれど」
「この続きは、また夜にでも」
由香利は、光の顔をもう一度、その胸に埋没させてから、解放する。
光は、ゆっくりと目をあけた。
「ありがとう、由香利さん、これで一旦の解決だね」
「住吉様と伊勢様にもお礼を言わないと」
光は、由香利から身体を離し、再び鏡の前で、何かの呪文を唱える。
その光の隣に、由香利も立ち、鏡に向かって頭を下げる。
光と由香利は、しばらくその状態であったけれど、さすがにそのままではいられない。
光は苦笑。
「鳥神カルラの上で、大騒ぎになっているみたい」
由香利は、クスクスと笑う。
「そうね、巫女さんたちが妬いているの」
光は、肩をすくめた。
「とりあえず、降りて来てもらおう」
由香利も、仕方ないといった顔。
「そうね、舟遊びにしよう、親父が手配済みだから」
そんなことを言って。光と由香利が本殿を出ると、巫女たちが、少しキツメの表情で、境内に立っている。
まず春奈は嫌みタラタラ。
「ほほーーー・・・いい雰囲気ねえ・・・まったく・・・何をしていたのやら」
華奈は怒っている。
「由香利さん、あまりにもムギュってし過ぎです!光さんも光さんです!ベタベタし過ぎ!」
ルシェールは口をへの字にして泣いている。
「私がおっとりとしているばかりに・・・先を越されてしまった・・・これでは聖母マリア様も嘆かれているに違いない」
由紀は、冷静にして、また気合が入ったようだ。
「それでも、全てが解決したんだから、許します」
「光君も途中でフラフラで既成事実までには至らなかった」
「次は、私が既成事実を成し遂げるのみ」
キャサリンは複雑な表情。
「今回の戦いは、立場が難しかった」
「思う存分、闘うことができなかった」
サラは、由香利を見て、感心しきり。
「伊勢様と住吉の巫女、ここまでの御力とは知りませんでした」
「今は、ルシェールを抜いて、最短距離のようです」
「かといって、負けはしませんが」
春麗も、由香利に目を細めている。
「とにかく由香利さんが、その気になった時の御力は半端なものではない」
「容姿を含めて、完璧だもの」
さて、ソフィーはまた別の考えというか、一番冷静に分析をしている。
「まあ、あくまでも呪法の一環、次の闘いには、また別の展開、組み合わせがあるのだと思う」
「今回は、東京湾、隅田川エリアの闘いであったので、どうしても由香利さんとの接触度が強まる」
「だから、接吻とか霊薬温泉の呪法に関しても、そこまで気にする必要はない」
由香利が、そんな巫女たちの前に進み出た。
そして、深くお辞儀をしてから、話し出す。
「巫女様方、ご助勢、本当にありがとうございました」
「おかげ様をもちまして、無事、悪霊を退治することができました」
「住吉大神様、伊勢大神様も、本当にお喜びでございます」
「つきましては、ささやかではございますが、舟遊びを用意してございます」
「この舟遊びにて、闘いの疲れを十分に癒されていただきたく存じます」
「尚、船着き場には、わが一家の者が、ご案内いたします」
由香利がそこまで話すと、大きなキャデラックがその姿を現した。