温泉の呪法にて仕上げ(1)
さて、他の巫女から、とかく不安視されている佃住吉神社の本殿の鏡は、ようやく、その輝きは平常のものとなった。
そして由香利も、その唇を光の唇から離した。
由香利の顔が赤い。
「光君、一応、終わったよ」
光も、顔が赤い。
「はい、由香利さん、あの・・・」
自分でも何を言っていいのか、わからない様子。
由香利はそんな光が面白い。
「光君を食べちゃったみたい、美味しかった」
「舌を動かすたびに、硬直するから」
「呪法だもの、離しはしないよ、光君を制圧したって感じ」
光は、そんなことを言われて、また硬直。
「・・・あの・・・呪法ですよね・・・さっきのは・・・」
由香利は、フフンと笑う。
「えへへ、呪法は当然、外の悪霊は完全制圧したもの」
「呪法以外には・・・何かあるかな?光君」
光はまたしても答えられない。
「えーっと・・・」
硬直も変わらない。
由香利は、そんな光に、またフフンと笑う。
「それでね、光君、最初に言ったけれど、私たちはもう一度、水に関係する呪法をしなければならないの、それが仕上げになる」
「でも、寒い時期だから、お互い風邪を引いてはならない」
「それでね・・・」
由香利は光の腕をグイッと組んだ。
そして、また硬直する光の耳元で、ささやいた。
「一緒に、お風呂に入らなければならないの」
光は、ブルブルと震えてしまって声も出ない。
由香利は、ますます腕の力を強くする。
「すでに準備OK」
そして由香利の目が輝いた。
「光君!飛ぶよ!」
その言葉と同時に、由香利と光の身体は、佃住吉神社の本殿から、消え去ってしまった。
「うん?・・・湯煙?」
「ここ・・・どこ?」
光の目の前には、ものすごい煙。
それも湯煙。
「お湯につかっている?」
「濁り湯かなあ、いい温泉って感じ」
光が、ブツブツとつぶやいていると、
「光君、温泉の呪法で仕上げだよ」
由香利の声が聞こえてきた。
光は、由香利に答えた。
「え?由香利さん、これが仕上げ?」
由香利の声が近づいて来た。
「そうだよ、これで完璧と、それ以上の効果」
光
「それ以外の効果って?」
光が、その疑問を発した時だった。
光の前の湯煙が薄くなった。
「わ!」
光は、両手で、その顔を覆った。
何しろ、全裸の由香利が、目の前に立っている。