史上最強?の空手着集団
さて、光たち一行は、外国人転入巫女、そして光家隣接アパートに入居するキャサリン、サラ、春麗の細々とした生活用品買い出しと近所の散歩を目的として、歩き出した。
キャサリンが光に
「本当に日本の春ですねえ、あちらこちらに桜の大木があってきれいです」
と言いながら、さっと右隣に立つと
サラも
「本当ですねえ、これはギリシャでは見たことがありません」
と、同じようにさっと左隣に立つ。
春麗は、一瞬出遅れたけれど
「桜もきれい、でも、この小さな商店街も面白そう」
と、いつの間にか、光の前を先導するように歩く。
これには、春奈も驚く。
「とにかく警護の姿勢が徹底している、入り込めないほど」
華奈も、うなった。
「安心感抜群と言えば、そうなるけれど、少し悔しいなあ」
しかし、春奈も感じた通り、キャサリン、サラ、春麗の光警護は万全、全く入り込めない。
ただ、呪力も強く、戦闘力の強い巫女なので、ある意味、安心感があるのか、少しずつ春奈と華奈の表情も和らいできている。
春奈
「お嫁さん候補は、どうせまだまだ先だよね」
華奈
「うん、いつかは華奈になるけれど、まだまだ先だ」
春奈
「華奈ちゃんは、来来世かなあ、ギリギリで」
華奈
「いや、そんなことはないけれど」
春奈と華奈の会話も、安心感そのもの、結果として歩みものんびりとしたものになる。
一行が、そんな道中を数分続けた時点で、いきなり春麗が光に振り向いた。
そして、光に声をかけた。
「ねえ、光さん、彼らを知っている?」
光が春麗の顔を見て、そして前方を見ると、空手着を来た集団、五、六人程度だろうか、一斉に列を作って走ってくる。
光は目をこらした。
そして
「ああ、知っている、近所の空手道場に通う学生たち」
「自分たちでは、史上最強の空手って言っているよ」
「僕は、全く興味なし」
と、すぐに目をそらしてしまう。
するとキャサリンが反応した。
「へえ、史上最強なんですか・・・空手が?見てみたいですねえ」
サラも、すぐに反応
「私も、飛行機にずっと乗ってきたので、身体がなまってしまって」
と、身体を動かしはじめた。
しかし、光は乗り気ではない。
「だってさ、彼らの史上最強って、あくまでも自称だよ」
「そもそも、弱いよ、見る価値もないって」
とにかく面倒な顔。
春奈も、光に同調した。
「とにかくさ、相手から仕掛けられたら、仕方ないけどさ」
「実力差もあるんだから、こっちから出向くことないでしょう」
と、キャサリン、サラ、春麗に自制を求める。
ただ、華奈だけは、その空手集団を見て、顔をしかめた。
「でもね、光さん、あの集団って、少し危ない」
「空手の実力は、たいしたことないけど、時々武器みたいなのを使って、弱気な男の子とか、下級生にカツアゲしているって聞いたことある」
「なんでも、親が地域の暴力団員もいるみたいだよ」
「でも母さんが言うには、そういうのを隠して、地域の清掃とかは熱心みたい」
光は、その言葉を聞いて、目を輝かせ始めている。