リーダーシップを発揮する光
光がうろたえていると、春奈に続くのは涙目の華奈。
「由香利さん、私だってね、フツツカだけど、伊勢の巫女なの」
「それを全くナイガシロにして、光さん独占計画って何事?」
「どうして自分だけ、いい思いをしようと思うの?」
ただ、華奈の抗議は、由香利に簡単に切り返された。
「あのね、華奈ちゃん、今回のバトルは住吉様の御意向とご心配が強いの」
「それに華奈ちゃんね、あなた伊勢様の呪文も間違える、しっかり覚えていないでしょ?それって危険なの、マジで」
「そのうえ、住吉様の海の祝詞できるの?勉強したことあるの?」
「そもそも、その本が華奈ちゃんのお部屋にあるの?」
由香利の切り返しは、実に厳しい。
華奈は、また涙目。
「だって・・・少女漫画とお人形を置く場所が多くて・・・」
ほぼ、理由になっていないけれど、必死に答えている。
ルシェール、由紀、キャサリンも文句を言いたい雰囲気のようだったけれど、珍しく、光がそれを制した。
「あのね、御不満はごもっとも」
「ただ、これは様々な要因とか状況を配慮しての計画」
「阿修羅君は当然で、住吉大神様、伊勢大神様、媽祖様、関羽将軍、それからポセイドンも参加する計画になるの」
ルシェールが、さっと光の前に立った。
「ねえ、光君、具体的にはどうなるの?」
「私たちの役割は?」
光は、おもむろに答えた。
「まず、今は阿修羅君が示して来た化学式と方程式を使う浄水薬を、ソフィーが作って来る」
「それを一応、実験して、おそらく大丈夫」
「その後は、佃の住吉様に献じる」
「住吉様の御霊力で、佃の住吉様から一斉に浄化薬を流す」
「媽祖様とポセイドンは、その監視役と邪魔する悪霊の退治を行う」
光は、そこまで言って、巫女全員の顔を見た。
「巫女様方は、癒し系と戦闘系に分かれてもらう」
「まず、癒し系の呪法は春奈さん、ルシェール、由紀さん、華奈ちゃん」
「戦闘系は、サラ、春麗、それから僕と金剛力士、八部衆」
「横浜から華国祥さん、つまり関羽将軍とその軍も、協力したいとの申し出がある」
その次に光はキャサリンにやさしい顔。
「キャサリンは、ソフィーと上空にいて欲しい」
「そして、戦況を連絡して欲しい」
キャサリンは、深く光に頭を下げている。
光の話がそこまで進んだ時点で、由香利が口を開いた。
「本当に抜け駆けみたいでごめんなさい」
「この悪霊退治が成功した時点で、しっかりとお礼をさせていただきます」
「うちの親父も是非にと」
由香利は、しっかりと頭を下げた。
その由香利に華奈が、早速反応する。
「わ!もしかして江戸の大親分?」
春奈も、超ニッコリ。
「え?海がきれいになったら、舟遊び?」
ルシェールは、お腹が鳴った。
「お刺身船盛かなあ、鍋もいい」
キャサリンは目を輝かせた。
「私ね、芸者さんって見て見たいんです」
サラも同調。
「着物姿って、外国人子女の憧れですよ、着てみたいし」
春麗もうれしそうな顔。
「お刺身もいいけれど、佃島だから、もんじゃ焼きもいいなあ」
様々、戦闘後のごほうびを期待する巫女たちの中で、由紀は光の顔をじっと見ている。
「光君、だんだん、上手にリーダーシップを取るようになってきた」
「ますます、好きになった」
光も、そんな由紀の顔に気が付いた。
光は、恥ずかしそうな顔で、由紀を見ている。