険悪と混乱の巫女たちと楓の猛言
さて、気が重いけれど、ソフィーは巫女たちに、「由香利と光だけの佃島住吉行き」を納得させなければならない。
のん気な顔をして、由香利と自分の部屋に入ってしまった光はともかく、ソフィーを取り巻く巫女たちは、険悪そのもの。
華奈がまず、噛み付いた。
「何事です?そういう抜け駆けって、ケンポウイハン、ジンケンシンガイなのでは?」
ソフィーが呆れて、「漢字も書けないくせに意味わかって言っているの?」と反論しようとすると、今度は春奈
「ふーん・・・それって、公認の由香利さんによる光君独占なの?学園教師の私の許可を得たの?」
時々、「学園の教師の許可」をちらつかせる春奈になるけれど、ソフィーは一蹴。
「あのね、男女の関係にならないって!全く年甲斐もなく!私だって悔しいの、全く!」
次にルシェールも半端なく怒っている。
「それはね、華奈ちゃんは誰もが認める力不足、春奈さんとソフィーは大年増、でもね、由香利さんは日本人の中では超強敵なの、何と言っても伊勢の大神様に住吉大神様までバックにいるの、それに超スタイルいいしさ、超美人だしさ、ああーーーーアブナイ!夜眠れない!今、部屋で何やっているか・・・あーーーー!」
由紀は、懸命に冷静を保とうとするけれど、難しい。
「巫女の研修会では常にトップクラスの由香利さん、それは本気になったら大変な相手、でもね、きれい過ぎて光君はいつも引いている。一番光君に合うのは私なんだけどなあ・・・うー・・・マジで心配になって来た」
ただ、キャサリンは反応が難しい。
「あの無差別大空襲を言われると・・・うーん・・・それは由香利さんとソフィーの判断は妥当、いたずらに戦局を混乱すべきではないし。かといって何もしないのは屈辱的だなあ」
サラは、目を閉じて何かを探っている様子。
「ポセイドンもこっちに向けて動き出した、大きな網を手に携えてか・・・」
「海を汚すことは、許されないって言っている」
春麗は残念そう。
「同じ中華の神々でも、今回は媽祖様か・・・海の神だからだね」
「阿修羅の戦略だからなあ、それに混乱を生じさせると、また光君の負担が増えるから、それに沿ったほうがいいかも」
ソフィーの説得も空しく、「怒りと混乱」に包まれる候補者世代巫女になるけれど、それを見透かしたかのように、リビングの大画面のモニターに、奈良の楓の顔が大写しになった。
そして、その楓の顔は、巫女たちが「ギョッと」なるほどの怒り顔。
ソフィーがつぶやいた。
「あ・・・マズイ・・・あの顔」
春奈は、リビングの後方に下がった。
華奈はその耳を抑えた。
他の巫女たちも、耳を抑えようとした瞬間。
楓の大声が、リビング全体に響き渡る。
「あ・の・さ!」
「相当期間、一緒に光君と一緒に住んで、なーーーーーんにも恋愛成就のカケラもない候補者巫女諸君!」
「まーったく、ノロマだなあ!」
「そんなんだから、由香利さんが、さっと動いて光君をゲット寸前なの!」
「まあねえ、由香利さんなら、安心して、アホの光君を任せられるけどねえ」
「でもね、そーーーんなことになる余裕ってないの」
「今、由香利さんと光君は、大忙しなの!」
「あなたたち、ゴチャゴチャ言って邪魔しないで!」
「それとね、きっとね、あなたたちみたいな、出遅れちゃった人にも、出番あるし役割あるから!」
「いい?わかった?じゃあ、落ちついて由香利さんと光君の指示を待ちなさい!」
「ねえ、本当にいいカップルだよねーーー!」
「それにしても、突然、おなか減った、あーーーー赤福食べたい!」
楓は、最後に「赤福食べたい」で、ニンマリと話を終えた、
そして、モニター画面から、その大きな顔も消えている。
華奈がポツリ。
「楓ちゃんって、何で最後はいつも食べるもの?だから太る」
他の巫女たちは、まだ耳を抑えている。