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東京大空襲の哀念

由香利は、光の手を強く握る。

「それから、他の巫女さんたちが、あれこれ言ってくると思うけれど・・・」

「光君って、やさしいからキッパリ言えないでしょ?」


光が頷くと、由香利。

「それは私が、まずソフィーに言うからいいよ」

「警護は、いらない、結界も張った」


光の目が輝きだしたことを確認して、由香利は声をひそめた。

「キャサリン、サラ、春麗も来たいんだろうけれど、多くなり過ぎてもよくない」

「それと隅田川を超えるので、キャサリンには厳しい問題が発生する」


光は、由香利の顔を見た。

「それは、東京大空襲のこと?」


由香利は、深く頷いた。

「今度の邪霊は、その時に隅田川に沈んだ哀しい霊を利用するらしい」

「・・・まだまだ・・・何の救いも得られていない哀しい霊をね」


光は、厳しい顔になった。

「そんな・・・うーん・・・哀しすぎるけれどねえ」

「何のために、このような恐ろしく、哀しい目にあうのか」

「そして何の救いもなく、尊い命をか・・・」

「本当に、悪辣非道としかいいようがない所業」


由香利も厳しい顔。

「戦争に負けて、仕方ない部分もあるけれど」

「まるで手の平を返したかのように」

「鬼畜米英と、昨日まであれほど国民に強制しておいて」

「まあ、ペコペコとすり寄り、まずは自らの保身を優先する政治家、学者、マスコミ・・・」

「私たちの惨たらしい死は、何のため?」

「そんなことを私たちに強いておきながら、それもひどく、棒で叩いてまで強制しておきながら・・・」

由香利の心には、心ならずも東京大空襲で命を落とした人々の哀念がやどっているようだ。

これには、光も何ら言いようがない。

光も目を閉じて考え込んでしまう。



さて、その東京大空襲とは、第2次世界大戦中の1945年3月10日のアメリカ軍による東京の下町を中心とした地域に対する大規模な空襲を言う。

アメリカ陸軍航空隊の爆撃機ボーイングB-29を主力とする日本本土空襲は,マリアナ諸島に基地を完成させた1944年11月から本格化となった。


東京には、1945年3月10日,4月13日,5月25日の 3回にわたる大空襲を中心に合計102回の空襲。

その中でも、特に3月10日午前0時8分から始まった空襲は,従来の軍事施設に対する昼間精密爆撃とは異なっていた。

アメリカ軍は、戦闘員・非戦闘員など、全く無差別に木造家屋が密集している地域へ夜間に焼夷弾爆撃を行った。


その来襲した爆撃機は約 300機。

投下した焼夷弾は、約1700トン。。

10日の早朝には、大規模な火災による旋風が発生。

東京の全建物の 4分の1が破壊され、8万人以上が一夜にして焼き殺された。

そして、約100万人が家を失った。


また、そもそも、非戦闘員の一般市民を標的に大量殺傷を行う行為は戦争法規違反であるにもかかわらず、その空襲から19年後の1964年、日本政府は、爆撃計画を立案・指揮したアメリカ軍の司令官に航空自衛隊育成の功で勲一等旭日大綬章を授与している。


毎年3月10日には東京都主催の追悼行事が東京都慰霊堂で行われているけれど、東京大空襲の記録を残すための施設は、国立にも都立にもない。

民間の「東京大空襲・戦災資料センター」がそれを残している。


光がポツンとつぶやいた。

「キャサリンはアメリカ人、難しいかな」

「そうなると、サラちゃんと春麗との警護の配置バランスが崩れるのか」

由香利は、光の言葉に頷いている。


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