光が語る「憧れの女性のタイプ」
光は、首をかしげて話し出した。
「うーん・・・憧れの女性のタイプねえ・・・」
「あまり考えたことはないけれど・・・」
とにかく話がモタモタするので、「候補者世代巫女」は、ハラハラとイライラが募る。
春奈
「まったく気に入らない、どうせ考えていないくせに、待つのが面倒・・・春奈さんって言えばいいのに、それで済むのに」
ソフィー
「どうして、ああ、ノロマなんだろう、竹刀で思いっきり頭をパシンしないと言わないのかな・・・竹刀がないから張り手でいいかな」
由香利
「きっと私さ、光君が手を握って一番顔が赤くなるのは私だもの、光君には二つ上くらいがいい」
由紀
「もーーー!またボンヤリ?唯一裸で抱き合った仲なんだよ?忘れたの?乙女が素肌さらしたんだよ・・・この無粋男!」
華奈にいたっては泣いてしまってどうにもならない・
「どうせ・・・私なんか・・・・未熟だもの・・・他のお姉さん方がすごすぎるしさ・・・」
ルシェールは腕を組んで、光の考えている顔を見る。
「うーん・・・憧れと妻は違うかもしれないなあ・・・光君は浮気者かなあ・・・でも、そんな使い分けるほど器用ではないしなあ」
また、キャサリン、サラ、春麗、周美鈴は、その祈りのスタイルを変えない。
キャサリン「アーサー王様、是非に・・・」
サラ「アルテミス様・・・お願いです」
春麗「九天玄女様、この私の想いを」
周美鈴「媽祖様・・・涙が止まりません」
とにかく、四人は必死に祈るのみ。
光は、それでも話すようだ。
「・・・えっとね・・・」
何とも間延びした声だけれど、特に「候補者世代巫女」は必死に聞きとろうとする。
「僕は・・・よくね、御茶ノ水とか、神保町に行くんだ」
光が次に発した言葉は、まず意味不明なこと。
御茶ノ水と神保町が、憧れの女性のタイプに何故、関係するのだろうか。
光は言葉を続けた。
「知っての通り、御茶ノ水とか神保町は本の聖地」
「実に様々な新刊と古本が数えきれないほどある」
「僕は、そこを歩いて、たまたま見つけた面白そうな本とか」
「文学全集とか、そういうのを見るのが好き」
楓が、苦笑して、光を補足する。
「あの・・・本が彼女じゃないから、ただ、光君の説明が下手なだけ」
光は、恥ずかしそうに、また言葉を続けた。
「音楽も好きだけど、そういう書物の世界も好き」
「実は音楽より、書物のほうが好きかもしれない」
「音楽をやっている人ってね、どうしてもステージに立って目立ちたがるの」
「自己顕示欲が強い人が多い」
ここでも楓が補足する。
「たとえば晃子さんみたいな、派手な感じの人」
「近所のピアノの先生もいたよね」
光は頷いて、話を続けた。
「僕は、たとえば源氏物語を全部読んでいたり、万葉集から新古今まで読んだことがあるとか、そういう女性には興味がある」
「もちろん、他の文学でも、様々な歴史の知識でも、たくさん本を読んでいる人」
「本をたくさん読むってことはね・・・」
光が真顔になった。
「自らの知識を深めることになるんだけど、大切なことは・・・」
光は、一呼吸した。
「ゴウマンにならないんだ」
「旅と本は人を謙虚にする・・・フランスのことわざにも、そんなのがあった」
「謙虚に学ぶ姿勢がある女性は、いいなあと思うよ」
「もちろん、男性でも同じだけれど」
光の言葉は、そこで一旦終わった。
母親世代巫女と華国祥は、ウンウンと頷き、候補者世代巫女はポカンとなっている。