特製滋養強壮スープは光のため?
白い霧が消え始め、最初に聞こえてきたのは光の声だった。
「あれ?ねえ、何かいい匂いがするんだけど」
「中華っぽいなあ」
いつもの、ハンナリ声が聞こえてくる。
華国祥の声も聞こえてきた。
「はい、仙界に飛ばれている間に準備をさせていただきました」
「確かに肉もありますが、滋養強壮を目的とした料理となります」
次に聞こえてきたのは、楓の声。
「ねえ!光君!このスープ美味しいって!」
「すっごく濃いんだけど、澄んでいるし、そのわりに飲み込むのが楽!」
圭子の声も聞こえてきた。
「楓!せめて、いただきますくらいは言うの!みんなの前で!お客様もいるんだよ!」
圭子は、楓を叱っているらしい。
次には華奈の声。
「うわーーー!すっごい大きな瓶が部屋の真ん中にある」
「でも、そこから、いい匂いがするの!」
「何かのスープなの?」
美紀も華奈の声に反応。
「華奈、うるさい!きっとあれは、中華の最高クラスのスープ」
「前に中国に研究旅行した時に飲んだよ」
「ねえ、春麗、あれだよね」
美紀は、何故か春麗に声をかける。
春麗も美紀に答えた。
「はい、10年くらい前ですね、美紀先生が上海にいらした時に」
「フォーティァオチャン、修行中の仏教僧が寺の塀を飛び越えて食べに来るというスープ」
「かつて日本の人気漫画でも取り上げられたこともありますね」
「簡単に言えば、中華の様々な乾物の煮込みスープ」
周美鈴の声も聞こえてきた。
「はい、今回は光君と皆さまの健康のためといたしまして」
「ナマコ、里芋、栗、タケノコ、キクラゲ、白菜」
「豚足、豚ばら肉、干しシイタケ、鶏もも肉、干しアワビ、フカヒレ」
「それを、五香粉、醤油、サツマイモ澱粉、紹興酒、オイスターソース」
「後は、塩と胡椒と氷砂糖くらいで、煮込むだけになります」
その説明だけでは、それほどの手間暇はかからないけれど、口にした巫女たちからは感嘆の声が続く。
美智子
「まあ、医食同源って言うけれど、まさにその通り、身体に素直に沁みて来る」
ニケ
「このスープだけは、太刀打ちできないなあ、絶妙の味」
ナタリー
「あれだけの素材を使って、全く濁りの無いスープってねえ・・・技術が高い」
春奈
「うん、これでまた若返る、光君に若さを見せつける」
ソフィー
「その発想って、華奈ちゃんと同じ、感化されたの?」
春奈とソフィーの攻防戦が続いているけれど、由香利、ルシェール、由紀、楓、華奈は、とにかく美味しいのか、全く声を出せない、ただ出されたスープを飲むばかりの状態。
また、光も、美味しいらしい。
全く素直に飲み干している。
しかし、途中から眠そうな顔。
そして、全部飲み終えた時点で、再び眠ってしまった。
その光の状態を見た華国祥がにっこり。
「光君には、特別の薬効があると思います」
「おそらく朝までは起きませんが、起きれば元気ハツラツです」
「そうなれば、阿修羅様から戻った時にも、それほど体力が落ちません」
華国祥は、そこまで言って、春麗と周美鈴の顔を見た。
「何しろ仙界からの薬を練り込んであるのですから」
その言葉で、春麗と周美鈴は、顔を赤らめている。